卓話


アミノ酸の話

2014年3月5日(水)

味の素
代表取締役会長 山口範雄君


1、食品とアミノ酸
 甘味はエネルギー源、塩味はミネラル、酸味は腐敗・未熟、苦みは毒、そしてうま味はタンパク質と、我々人間は基本五味とその栄養生理学的な意味を知っています。昆布からうま味成分を抽出し、グルタミン酸であることを突き止めた東京帝国大学の池田菊苗博士はじめ、他のうま味物質――例えば、カツオのうま味成分・イノシン酸、シイタケのうま味成分・グアニル酸等、いずれも日本人が発見しました。「うま味」は「UMAMI」として日本語がそのまま世界の有力辞典に掲載されています。トマトが赤く熟す過程で最も増える成分も、ヒトの母乳の中に最も多く含まれているアミノ酸もグルタミン酸です。基本五味と赤ん坊の表情の関係を研究した学者がいますが、スマイルのような良い表情をするのは五味のうち、甘味とうま味を与えたときです。人生で最初に出会う美味はグルタミン酸なのです。

2、スポーツとアミノ酸
 人間の体は60%が水分、20%を20種類のアミノ酸で構成されるタンパク質が占めており、アミノ酸から成っていると言っても過言ではありません。中でもバリン、ロイシン、イソロイシンを分岐鎖アミノ酸(BCAA)といい、筋肉形成や疲労回復に大きく関与しています。例えば、BCAAを摂取すると運動中の筋タンパク質の分解が抑えられ、筋肉痛が軽減されることも実証されています。薬剤ではないため、ドーピング検査の問題も全くありません。アミノ酸で育った地味な血統の競走馬“セイウンスカイ”は、1998年、皐月賞、菊花賞の二冠達成をしました。

3、アルコールとアミノ酸
 アルコールは分解されてアセトアルデヒドになり、最終的には水と二酸化炭素に分解されます。アラニンはしじみ等の魚介類に多く含まれる非必須アミノ酸の一種ですが、グルタミン酸と共にアルコール分解を早める機能があることが分かっています。お酒を飲む前、途中、就寝前に一服、この二種類のアミノ酸を摂取すると、飲み過ぎても二日酔いにならずに済みます。

4、睡眠とアミノ酸
 睡眠には身体も脳も休息状態にあるノンレム睡眠と、身体だけが休息状態で脳は活動状態にあるレム睡眠の二種類があり、ヒトは一晩にノンレムとレム睡眠を繰り返し、その深さが次第に浅くなって目覚めます。各睡眠状態への到達時間を脳波測定により調べると眠りつく時、徐波睡眠に至る時間、レム睡眠においても、グリシンというアミノ酸を飲んだ時のほうが、飲まない時より短縮されることが分かっています。グリシン摂取により自然に深い眠りに到達しているわけです。私自身長時間フライトの出張時には、搭乗直後、乗り換え直後に一服し、機内で熟睡することで、帰国後の時差ボケが軽くて済んでいます。また、睡眠時無呼吸症候群にも効果を発揮します。

5、医療分野とアミノ酸
 ヒトの血中のアミノ酸パターンは、健康時と健康を損なう時とでは、そのパターンが変わることがあります。その変化により、特定の疾病リスクが生起していることを判別する技術が開発され、一滴の血液検査により胃がん、乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん等について、既存のマーカー検査以上の精度で短時間のうちにリスクが判別でき、精密検査による早期発見に繋げることが可能になりました。生活習慣病領域についても潜在患者の早期発見が可能であることに加え、疾病状態には至っていない予備軍には、食生活やライフスタイルの改善により、疾病状態への進行を抑えることが期待できます。 この診断技術は人種横断的に適用できるものであり、日本でこの診断技術の実績が上がれば米国、アジアをはじめ世界の人々の健康、長寿に貢献する可能性を秘めています。 食べる時、飲む時、ゴルフをする時、寝る時、アミノ酸のことをチラッと思い浮かべてください。21世紀は、「アミノ酸の世紀」です。


水族館のはなし

2014年3月5日(水)

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代表取締役社長 堀 一久君


 現在、世界のアメリカ・ヨーロッパ・アジア諸国には約560館ほどの水族館が点在しています。14年前の2000年当時は約450館でしたので、この14年で100館以上も増えました。

 その大きな理由は、お隣の中国で爆発的に増えているからです。
 2000年当時は、中国でわずか10館であったのが、今では100館と驚異的に増えました。つまり、経済発展とともに増加傾向にあると言えます。

 日本では、日本動物園水族館協会に加盟している水族館だけで、全国におよそ70館が点在しており、最も大きい水族館は、巨大水槽を有する「沖縄美ら海水族館」になります。

 東西の分布で見ますと、関東に24、関西にも24施設あり、数の上では東と西の都市圏に集中しています。これ以外に、類似施設なども全て含めますと、約130館になります 特に、日本の場合は、国土面積に占める水族館の数の割合が世界各国に比べて圧倒的に高く、各都道府県に必ず1つは存在しています。。

すなわち、日本はアメリカやヨーロッパを抜いて、数の上では世界一の水族館王国となります。

 日本の水族館の歴史は、今から約130年前に始まりました。

 先ず、明治15年(1882年)に、東京・上野動物園の一角に、魚を鑑賞する「観魚室(うおのぞき)」という小さな部屋ができました。これが我が国初の水族館となります。

 さて、この「水族館」という名称が使われるようになったのは、明治18年(1885年)の「浅草水族館」が最初になります。これ以降、○○水族館と名乗るのが常となりましたが、昭和32年(1957年)に江ノ島水族館が江ノ島マリンランドを併設することになり、ここで初めてカタカナの館名がつけられました。

 戦後、経済復興が進みますと、レジャーへの関心の高まりから水族館の建設が相次ぎ、水族館ブームが到来しました。特に、昭和26年(1951年)に博物館法が成立されたことが拍車となり、昭和30年代(1950年)から40年代(1970年代)にかけては、約150もの水族館が作られました。

 水族館の発生には、大きく分けて4つの流れがあります。1つはホーム・アクアリウムというものです。19世紀の科学者・博物学者が、自分の趣味で水槽を置いたというものです。特にヨーロッパ・フランスではガラス・工芸技術が盛んであったことも手伝っています。

 2番目が、「動物園発生型」です。動物園の一角に水族館があるものですが、例えば「上野動物園」の水族館が発展して「葛西臨海水族園」になったのが一例です。

 3番目は、博覧会発生型です。沖縄で日本海洋博覧会が開かれたのちに、「沖縄美ら海水族館」ができました。

 4番目は大学の実験所としての水族館です。油壺に東京大学の臨海実験所があり、ここでは明治初期に水族館が作られました。海外でもアメリカやヨーロッパに臨海研究所と併設された水族館がいくつも存在しています。

 さて、21世紀は環境の世紀と言われております。自然との共生や、地球規模での環境異変や大規模災害が報道される中、改めて自然との関わり方や関心が極めて高くなって来ています。

 また、海への関心については、我が国では平成19年4月に、海洋基本法が制定され、海を知り、守り、利用するための、海に関する国民への啓蒙普及が大きな課題となり、水族館もその一翼を担わなければなりません。

 とりわけ、日本は世界第6位の排他的経済水域を有する海洋立国です。それは、海洋沖地震や津波のような脅威ばかりでなく、海は眠れる宝庫のごとく、フロンティアとして大いに期待される領域の表れとなります。

 日本の未来を担う子供たちに向けて、我々は水族館という立場で、エデュケーション(教育)的な要素とエンターテインメント(娯楽)的要素を掛け合わせた「エデュテインメント」性をさらに追求し、面白さや楽しさを併せ持った学習機能をより一層提供して参りたい。そんな思いを強く抱き、更なる業界発展に向け、努めて参る所存でおります。