卓話


ロータリーの友月間例会
夢の力

2022年10月12日(水)

(公財)メイク・ア・ウィッシュオブジャパン
事務局長 鈴木朋子氏


 「メイク・ア・ウィッシュ、願い事をする」。私はこの言葉が大好きです。このプロジェクトがうまくいったらいいな、今度のお休みに旅行に行きたい、美味しいワインが飲みたい、映画に行きたい――誰かの幸せを願ったり、あるいは家族の健康を願ったり、私達の日常はたくさんの願い事であふれています。メイク・ア・ウィッシュは重い病気と闘う子ども達一人ひとりの大切な夢、願い事を叶えるお手伝いをしているボランティア団体です。

 1980年にアメリカで生まれ、世界50カ国で活動し50万人以上の子ども達の夢を叶えることができました。2018年には世界最大級の「願いをかなえる(wish granting)」団体としてギネスブックにも登録されています。

 もっと多くの皆様に活動を知っていただきたい、その思いで21年間この仕事に関わらせていただいています。願う気持ちは、大人も子供も、健康であっても病気であっても皆同じはずです。けれども、重い病気と闘う子ども達は何かしたいことがあっても、「良くなったらね。この治療が終わったらね。退院したらね」と先延ばしにされてしまうことがたくさんあります。お見舞いに来てくれる人は決まってこう言います。「頑張ってね」。でも、重い病気の子ども達は既に頑張りすぎるほど頑張っており、この言葉は、頑張っても良くならない、家に帰ることができない子ども達の心を押しつぶしてしまうことがあります。

 「君にはどんな願い事があるの?大丈夫、君の夢を応援してくれている人がたくさんいるよ。みんなで力を合わせて君の夢、願いをかなえるから、一緒にその夢に向かって頑張ろう」。私達は、夢をかなえるために頑張ろうというポジティブな言葉を届けます。

 そうすると、子ども達の日常は一変します。行きたいところ、会いたい人、食べたいものなど自分のしたいことが見つかると、今まで嫌々飲んでいた薬を一生懸命飲むようになったり、リハビリを頑張るようになったり、不思議な力が生まれます。それを私達は「夢の力」と呼んでいます。

 私達の日本での活動は1992年からスタートしました。今日までに夢を叶えた子ども達は3782人です。去年1年間で118人、今年に入ってから111人の夢がかなっています。2日に1人、日本のどこかで子ども達の夢がかなっていると思うだけでとても嬉しい気持ちになります。

 子ども達にどうしたら願う気持ちを持ってもらえるか、どうしたら明るい毎日を過ごしてもらえるかを考えながら、子ども達に夢の力を、そしてご家族にとってかけがえのない時間を届ける気持ちで日々関わっています。子ども達とご両親に会う中で衝撃的だったのは、子ども達が治りたいという気持ちすら忘れてしまっていることでした。だからこそ願う気持ちを届けたいと、活動を続けています。

 ボランティアを始めることはとてもシンプルで、困っている方が目の前にいたら、何かできることはないかと思うことが第一歩です。ボランティアの三原則として、継続性があること、見返りを求めないこと、社会性があることが挙げられますが、メイク・ア・ウィッシュでは、そこにプラスして、「できるときに、できることを、できる範囲で」お力添えをお願いしたいと思っています。

 私達の活動はたくさんの温かな力に支えられています。例えば寄付です。お金がなければどんなに熱い思いがあっても夢をかなえることはできません。お陰様で2017年に公益財団法人に認定されましたので、寄付をいただけると控除の対象にもなります。

 それ以外にも、マンパワーとして力を貸していただくこと、古切手や書き損じはがきを集めていただいたり、私達のオリジナルグッズを購入していただいたり、あるいは主催イベントに参加していただくこともできます。

 皆様へのお願いです。メイク・ア・ウィッシュは今年、30周年を迎えることができました。記念イベントの一つとして、霞ヶ関カンツリー倶楽部を貸し切ってのチャリティーゴルフ大会を11月7日に予定しています。東コースは既に申し込みをたくさん頂戴しクローズさせていただいていますが、もしよろしければ西コースでぜひご参加いただけたら嬉しく思います。

 このゴルフ大会も素敵な仕掛けがあります。実行委員に名前を連ねているゴルフ界のレジェンドをはじめとする方々は無償によるお力添えですし、運営を支えるのは大学ゴルフ部の大学生たちで、当日はキャディや受付をしてくださいます。そして、このゴルフ大会で得られたファンドは子ども達の夢の実現のために使われます。この他にも30周年パーティやラグビーの企画なども予定しておりますので、ホームページやフェイスブックをチェックしていただけたら幸いです。

 実際に夢がかなった子ども達のエピソードを紹介します。寄付やイベントに参加していただくと、こんなに素敵な夢の実現に繋がります。

 初めに紹介するのは松尾夢華さん、赤いドレスを着てミッキーマウスと写真を撮りたいという夢を叶えた女の子の話です。

 夢華さんは申し込んでいただいた時は17歳で、夢をかなえたのが18歳。最後まで病気と闘い抜き、19歳で空へと旅立ちました。夢華さんは15歳で骨肉腫になり、左膝下の切断を余儀なくされました。医師から病気のことを聞かされた時、お母様はその場で泣き崩れたそうです。でも、夢華さんは、「泣いては駄目ね。前向きにポジティブにいかんばね」。長崎の方言でそうおっしゃったそうです。そして、この言葉を亡くなるまでずっと自分自身に、お父様、お母様、お姉様や弟さんたちに対しても言い続けたそうです。夢華さんの夢には理由がありました。「私は多分、成人式を迎えられないと思う。だから、お父さんとお母さんに私のドレス姿を見てほしい。お姉ちゃんや弟たち、ずっとディズニーランドに行きたいって言っていた。だから、ディズニーランドに行って私がドレスを着たらみんなの夢がかなうよね」。そんな夢を託してくださいました。

 ディズニーランドで過ごす間、夢華さんは素敵な笑顔をたくさん見せてくれました。「信じる力の小さな積み重ねが、やがて大きな力になる。当たり前のことが当たり前じゃなくなったとき、ものすごく苦しくって、ものすごく悔しかった。でも大丈夫。前を向こうと信じる力が、やがて夢に繋がっていく」。夢華さんの言葉です。

 そしてもう一つ、フェイスブックにこんな素敵なメッセージを残していたことが亡くなった後にわかりました。「家族と旅行ができたということ。夢をかなえるときに家族がいるということはとっても心強かったし、本当に幸せでした。メイク・ア・ウィッシュのお陰で夢をかなえられた上に家族との絆ができたこと。お兄ちゃんやお姉ちゃんとの絆が強くなったこと。改めて感謝の意を示すことができたこと。周りの優しさや温かさを感じることができたこと。何よりも1人じゃない。お兄ちゃん、お姉ちゃん、弟たちがいる。お父さんがいる、お母さんがいる。改めて家族の愛を感じることができました。」

   夢華さんがご家族に宛てたラブレターだと感じました。私は、家族で過ごすことは当たり前じゃない、朝起きて、家族と一緒にご飯を食べたり、テレビを見て笑ったりすることはなんて尊くて素敵なことなのだろう。改めて夢華さんから教えられたような気がして、私達は日常をもっと大切に生きていかなくてはいけないと思いました。子ども達の夢をかなえるお手伝いをさせていただくことで、私達のほうがお子さんやご家族からたくさんの素敵なプレゼントをいただいています。

 続いて、「パパと結婚式をしたい」という夢をかなえた萌ちゃんの話です。7歳、白血病と戦う女の子でした。病状がとても重く、主治医の先生からは1週間以内に萌ちゃんの夢をかなえてあげてほしいという言葉をもらいました。

 大切な1週間でした。舞浜にあるシェラトンホテルがとても素敵なチャペルを持っており、無償で提供してくださいました。ドレス、ヴェール、ブーケ作りは、ボランティアの皆さんがそれぞれできることに手を挙げてくださいました。写真や映像もプロの方がボランティアで撮影、編集してくださいました。フラワーシャワーに使われる2000個以上の小さな紙の花もボランティアの皆さんが折ってくださいました。準備の間、みんな幸せでした。誰かの幸せを願うだけでこんなにも心豊かに、幸せな気持ちになれる。そんな経験をした1週間でした。

 バージンロードに立った萌ちゃんはちょっとつらそうな表情でした。実は萌ちゃんはつらい治療が続き笑わなくなっていたそうです。でも、式が進むにつれて少しずつ頬が緩み、パパに抱っこしてもらいフラワーシャワーを浴びた時には笑顔になりました。そして、式の後、ホテルの部屋でお父様に無理やりケーキを食べさせようとしました。お父様とお母様が一番会いたかった、いたずらっ子のような表情を浮かべた萌ちゃんだったそうです。お父様とお母様からいただいた言葉です。「元気な頃の萌実と同じようにパパとじゃれ合ってふざけている萌実の姿を見ることができたことが一番嬉しかったです。」 決して良い思い出作りではなく、命が続く限り、明日が来たらいいな、今度はこんなことがしたいな、と家族みんなが未来に向かって笑って過ごせるような、そんなお手伝いがしたいと改めて感じました。

 こんなふうに、私達は子ども達1人1人に向き合い、どんな願い事があるのかな、といつもワクワクしながら子ども達に出会い、多くの皆様のお力添えをいただきながら、これからもたくさんの子ども達の夢を考えていきたいと思います。そのためには、どうか皆様のできることをできる範囲でお力添えいただけたら幸いに存じます。


   ※2022年10月12日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。