卓話


電線業界の状況

2023年3月15日(水)

古河電気工業(株)
取締役会長 柴田光義君


 電線は、皆さんの生活や経済、産業に欠くことができない社会インフラを支える製品です。動力の源となる電気エネルギーやコミュニケーション情報を伝達する役割を果たしています。人間の体にたとえると、血管や神経に相当し、社会生活の向上、ひいては人類の発展に大きく貢献しています。

 電線の種類は多岐にわたっています。大きく分けると、電力を送るための架空線、地中線、鉄道トロリー線、通信に使う電話線、LANケーブル、光ファイバケーブル、モーターに使う巻線、自動車用ハーネス電線などがあり、電圧も数ボルトから数十万ボルトまであります。日本での市場規模は2兆円弱、世界ではその10倍以上あると言われています。

 日本での電線の歴史できっかけとなったのは、あの黒船のペリーが来航した1853年、電信機と電線を持参し、電報のやりとりが実演されました。1kmの間に電線を張り、EDO、YOKOHAMAの文字が送信され人々を驚かせたようです。

 日本初の電線は実はその5年前、佐久間象山がオランダの書物をもとに絹巻線という電線の自作に成功しておりました。世界の進歩は、ペリーが日本に電線を持ってきた4年後には早くもイギリスとアメリカの間が大西洋横断の通信海底ケーブルでつながりました。世界を一つにした電線という事で人々を歓喜させました。

 電線は生活や産業に必要な社会インフラ資材であることから、地球温暖化対策としてCO2削減に寄与することを期待されています。当然ながら電線を製造する工程での省エネやCO2排出削減努力がなされています。電線使用においては電力用ケーブルの設計を変え導体をサイズアップすることで通電時の電力ロスを抑える検討がなされています。将来的には、送電ロス低減や大容量送電を可能にする高温超電導ケーブル技術も期待されています。

 また、電線の導体そのものを現在の銅やアルミからカーボンナノチューブに変え、超軽量、高強度化を目指す研究も進んでいます。情報化社会の進展でデータセンターの躍進が凄まじいですが、消費電力の増大が大きな課題となっています。いろいろな対策がありますが、例えば電気の代わりに光ファイバ技術を使用することでCO2排出量を削減出来る可能性があります。自動車ではものによって3000本ものハーネス電線が使われています。軽量化のため一部を銅電線からアルミ電線に切り替えることも進んでいます。今後ますますEV化が進みそれに適したハーネスの開発も期待されています。

 電線業界が対応すべき重要な課題にカーボンニュートラル実現に向けた次世代電力ネットワーク構築への貢献があります。現在の電力ネットワークは一部で老朽化が進み、事故や自然災害による発電所や電力網のダメージにより、大規模停電を引き起こすリスクがあります。また、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは風量や日射量の自然条件で最適地が左右され、電力需要地と立地場所が一致しない場合があり、バランスをとるために出力制御が必要になります。

 日本全体で基幹系統を増強すれば再生可能エネルギーと大消費地を結び、エネルギーを効率的に使えます。今後、再生エネルギーの大量導入と電力ネットワークのレジリエンスの強化のため、長期的展望に基づき広域連携系統を構築する必要があります。電線業界としても従来以上の高性能な高圧地中ケーブル、高圧海底ケーブルなどを大量かつ安定的に供給するという使命があります。

 2018年に日本電線工業会が毎年11月18日を「電線の日」と制定しております。様々な電線を表す「111」とあらゆるものにつながる無限大「8」を意味しています。1年に1度はしみじみと家の中や外の電線を観察してみてください。地味ではありますが皆さんの周りにはたくさんの電線が使われ生活を支えていることがわかると思います。電線は社会の発展の為、更なる努力を続けてまいります。