卓話


大学改革と地方国立大学の地域共創

2024年9月18日(水)

(学)新潟大学
理事 塚本 恵君


 還暦を契機に、興味のあった次世代育成、地域創生に注力をするために、産業界からアカデミアに転身をし、現在国立大学法人 新潟大学(理事)として活動をしています。本日は、現在の日本の大学の状況と地方国立大学の取り組みなどについて、個人の経験を元に限られた範囲ではありますが、お話をさせていただきます。

 2024年度の「学校基本統計」によれば、日本の大学の総数は、807校(私立620、公立101、国立86)となっています。大学教育についての直近の提言は、先月8月8日に中間まとめが出されています。

 今年の春に、伊藤慶応義塾大学塾長よりの「国立大学の学費を150万円に値上げを!」という発言を覚えておられる方も多いかと拝察いたします。現在の国立大の標準の授業料は53万5800円ですが、全て据え置きだったわけではなく、東工大、東京芸術大学、千葉大学、一橋大学、東京医科歯科大学、東京農工大学等は値上げをしており、東京大学においても11万円値上げをするという報道が先週ございました。地方の国立大学においては、値上げをする方向にはならないのではないかと考えます。

 86の国立大学は主に3つのグループに分類され、世界レベルの教育研究を目指すグループ、専門的な大学グループ、そして新潟大学もそうですが、地域に根差した地域創生を目的とするものがあります。

 地方の国立大学と企業(外資系)の違いについての個人的な印象を挙げると、経営の難しさと意思決定プロセスになります。民間企業の経営は、利益を上げて雇用を継続的に提供し然るべき納税をすることが第一義となると思います。サステナブルの成長のためにSDGsへの取り組みなども欠かせないことであリますが、稼ぐ力があってこそという意識は、社員にも浸透しているように思います。

 他方、大学は、教育、研究、社会貢献の3本柱があり、その優先順位はそれぞれで違うように感じています。意思決定プロセスについては、大学法人化により学長裁量が高まったとはいえ、トップダウンな意思決定ではなく階層型でもなく、個人事業主の集まりのような印象も受けています。

 もちろん組織体の特徴でどちらが良い悪いではありません。産学の違いを超えて連携を深めていくことは、大学側にとっては外部資金の獲得や学生や大学院生の進路の選択肢の拡大、民間側にとっては新たな課題への対処、リスキリング・リカレント等において有益であり、日本の競争力の基盤となると考えております。

 地方国立大学は、産学の立場を超えた地域の発展のための協業の取組に注力をしており、新潟大学の例を取りますと、「アカデミアの中の大学」から地域の発展に貢献する「社会の中の大学」へと改革を進めております。

 一昨年、社会連携推進機構を創設し、民間からのエキスパート人材を13名採用しています。新潟県が国際的優位性を有する6つの重点産業領域、コメ、おいしさDX、モノづくり、防災街作り、地域医療DX、佐渡共創を設定して取り組んでいます。

 進捗のあった例として、“コメ”の国際展開と“おいしさDX”をご紹介します。

 温暖化により近年コメ作に支障をきたすベトナムで、新潟大学が開発した高温耐性コメ品種を元に、現地農業最大手企業であるロックチョイ社と共同で、種苗の開発並びに安定したコメ生産を可能とする技術開発・実証実験を推進しています。

 また、後者においては、新潟地域が育んできた“おいしさ”の科学的根拠をデータ集積・分析・活用により明らかにし、食・農に関する産業の経済的価値を高めることに取り組んでいます。持続可能な地域をつくることを目的に、新潟市、地域企業、大学等の産官学連携による「食のみなとまち“にいがた2km”創生プロジェクト」を創設し、地域の“おいしさ”を起点とした産業創生の取組を推進しています。

 特徴を活かすという観点で、今後取り組みたいと考えていることの一つとして、新潟大学の脳研究所の共同研究のさらなるグローバル化があります。昭和42年に日本で最初の“ヒトの脳と脳疾患”に関する国立大学附置研究所として設置され、世界最大規模のヒト脳神経疾患ブレインバンクを有し、世界トップレベルの脳機能画像解析基盤、そして新潟県全域の240万人を背景とした巨大コホートからの脳神経疾患の臨床、病理情報を集積しています。

 デンマークのオーフス大学やアメリカのメイヨー・クリニックを始め、多くの国内外の大学、国内の企業、研究所等との共同研究の実績を持ち脳病態学の融合研究拠点となっています。高齢化の進展に伴い世界中でさらに注目を集めている脳についての取組を広げて、新潟および日本と世界の最先端の協業を実現し、地球規模で人々のウェルビーイングに貢献ができたら素晴らしいと考えています。


コメンテーターの裏側で

2024年9月18日(水)

デロイトトーマツ(同)
執行役 松江英夫君


 私はフジテレビの深夜の報道番組『Live News α』の金曜日、2分半の枠でコメンテーターという仕事もしています。素人ながら必死の思いでやってきた結果、この9月で丸7年になり回数も600回を超えました。長く続けるためには、心・技・体が揃うこと、そのための努力が必要だと実感しています。

 まず、「技」です。報道番組というメディアの最先端にいて感じるのは、秒単位の厳しさです。通常のビジネスでは分単位で区切られることはあっても秒単位はほとんどありません。報道番組では5秒でもオーバーすると他のニュースに迷惑をかけるというプレッシャーの中で行うため非常に鍛えられます。

 また、毎週テーマが違い、同じテーマでも異なる内容にしなければ視聴者の方々に見ていただけないため切り口が大事になり、かつ短時間でまとめるためにキーワード作りが求められます。

 7年のうち3年半はコロナ禍でしたから毎週コロナの話題を取り上げました。国の政策のあり方に始まり、国民が緊急事態宣言をどう受けとめどう動くのか、あるいは3密回避のためのビジネスチャンスや新しい市場についてなど、コロナ禍という事象を毎週、様々な切り口で見る力が鍛錬されました。

 毎回変わるテーマや事象を自分なりに捉えるためには、必要な情報を短期間でキャッチアップしアウトプットするというサイクルを回すことが重要になります。動くものに対する知的な反応力ということで、私はこれを「動態知力」と呼び、この力はビジネスの世界や大学で教える際にとても役立っています。

 そして、次は「体」です。金曜日深夜という時間は日頃の仕事で最も疲れが貯まっている時で、体のコンディションを良くすることが大切になります。特に睡眠のタイムパフォーマンス、短い時間で深く寝ることが重要です。

 金曜日の勤務後、トレーナーをつけてストレッチやマッサージを受け、そこで30分でも深く眠れるようにします。ポイントは副交感神経を高めることです。寝落ちするほどリラックスな状態を作るために試行錯誤し、自分の副交感神経のツボを見つけ、眠れないときは必ず自分でマッサージをします。私は頭頂部がかなり硬いためマッサージをして緩ませることと、側頭部を両手で押さえてぐるぐる回していくと、だんだん楽になってきます。ふくらはぎや足のマッサージも繰り返すと体がリラックスし、寝るための一つの入口になっています。

 さらに、ダイエットをしており、週に3日間、夕食を抜いています。少しでも痩せて見えるようにしたいという思いもありますが、睡眠にも良いためです。空腹で寝たほうが消化にエネルギーを使わない分だけ、身体の回復にエネルギーが行き免疫力が高まると聞いて習慣化しています。反動で土曜や日曜に食べたり飲んだりして体重が増えるため、日曜日の夜から切り替えます。

 最後に最も大事なものが「心」です。ある時、生放送の2分半のうちの1分半頃から緊張し頭が真っ白になり過呼吸のようになり、「ここでやめてしまうと放送事故になる」という恐怖に遭遇しました。息も絶え絶えで残りの1分を終えましたが、これがトラウマとなり、毎週放送の前になると心臓がバクバクし、話す直前に呼吸が苦しくなることが半年間、続きました。

 これを治そうと体得したのが呼吸法です。まず、話をする前に脱力します。息を吐き、その後、息を吸おうと思うと体が力んでしまいますが、息を吐いた状態でお腹を緩めると自然と空気が入ります。その状態から話し始めると、過呼吸の一歩目のリスクをヘッジすることができます。さらに、緊張したタイミングで口呼吸をすると呼吸が浅くなりがちですから、「緊張してきたな」と思ったら、一瞬こらえて口を閉じ鼻から吸います。そうすると、空気が多く入ります。生放送でそうしてみると落ち着くという成功体験をしました。繰り返すことで緩和しています。

 そして、前向きな気持ちで臨むことが何よりも重要です。私はコメンテーターとして、批判ではなく提言することが責務だと考えています。前向きになれば心も落ち着きます。私の心・技・体を支える根っこには「日本を前向きに」という志があり、そのために自分はいろいろな仕事をやっている、報道番組のコメンテーターもまさにその気持ちでやらせていただいているのだと自らに言い聞かせ、日々仕事をしています。