READYFORが描く『新しいお金の流れ』と寄付の可能性
2026年5月27日(水)
READYFOR(株)代表取締役CEO 米良はるか氏
私は慶應義塾大学大学院在学中に、日本で初のクラウドファンディングのサービスを作りました。ダボス会議へ参加し、岸田政権の新しい資本主義実現会議や高市政権のスタートアップ推進分科会の有識者構成員を務めるなど、社会を良くするために自分の時間を注ぎたいとの思いで生きています。
READYFORの原点は、大学3年生の時の荒井秀樹さんというパラリンピックのスキーチーム監督との出会いです。何度も優勝するほどの強豪チームにも関わらず、スキーのワックス代が足りないという話をされ、私はその月のワックス代くらいであれば、みんなの思いを集めて届けられるのではと思いつきました。
そして、インターネットを使った投げ銭の仕組みを作り、日本中1人1円ずつ出したら1億2000万円集まるかもしれないとサイトを作りました。この活動で約120万円を集め、見ず知らずの方がインターネット上で少額を出してくださったことにとても感動しました。
そして、思いのある人たちが共感によってお金を集める仕組みを作り、支援が不足している領域に対するお金の流れを作りたいと考え、20代はクラウドファンディング事業を作り、日本全国の様々な活動にお金の流れを作ってきました。
それを加速させなければと思ったのは9年前、29歳の時に悪性リンパ腫という血液がんを患ったことがきっかけです。それまで病気に一切関係のない人生でしたが、突然、がんであることと希少疾患の可能性があり、その場合どうなるかわからないと医師から告げられました。その後、悪性リンパ腫の中でも日本人が罹患しやすい病気だとわかりました。14年前にできた「リツキサン」という薬によって、それまでの5年生存率が約20%から約90%となり、私には一回目の投与で効いていることがわかりました。
そこで、自分は残された人生について考えました。私自身が病気にかかったことで、マーケットニーズが少ない治療薬開発にお金が投じられないことも知りました。経済合理性を超えて流れるお金をもっともっと増やすことが必要だと改めて思いました。そして、より一層、お金が届くべきところに流れていない社会構造を解くことに自分の人生をかけたいと思いました。
READYFORのパーパスは、「みんなの想いを集め、社会を良くするお金の流れをつくる」です。
社会課題として普遍性が高くても低くても経済で成り立つ領域は、ビジネスセクターが解決の担い手となります。一方で、経済的なリターンは望みづらいが普遍性が高い課題、つまり公共性の高い課題は政府や自治体が税金をかけて解決を担っていきます。
昨今は人口減少、マクロ環境の変化、地政学リスクなども高くなるなかで、政府の財源だけに頼って社会課題を解決することはどんどん困難になっていきます。その中で取り残されてしまう様々な社会課題に対して、市場原理のなかで形成された資本を適切に再分配される仕組みを実装し、社会がより良く変化していくことに貢献することを目指しています。ビジネスリターンが返せない領域に関しては、フィランソロピー、寄付のお金の流れがもっと活躍していく必要があります。
READYFORでは3つの事業を推進しています。
一つめの事業が、ファンドレイジングです。社会課題解決、あるいは文化活動、様々な社会を良くする活動をしている皆さんの財政基盤を強化するために資金調達のお手伝いをしています。
我々のクラウドファンディングは、準公共セクターに向けた資金集めのお手伝いです。美術館や博物館、NPO、ソーシャルセクター、大学の研究、医療関係、動物愛護、動物園や水族館、地域活性など、今まで補助金などによって支えられてきた分野が財源の問題で厳しくなってきています。一方で、社会を平和に保つためには、こうしたものこそ、しっかりとお金が巡り維持される必要があります。そうした活動を、新聞社、銀行など全国500近くの様々なパートナーと共に広げています。国立科学博物館のクラウドファンディングは3ヶ月で約10億円を集め、2023年当時、日本で最大級の支援額・支援者数になりました。こうした活動が3万件あるプラットフォームになっています。
二つめが休眠預金を活用して様々な社会課題解決のプログラムを作る活動です。
休眠預金とは10年間以上取引のない預金口座にあるお金で、年間約1,400億円あると言われ、この一部を社会貢献に使う休眠預金等活用制度が議員立法で決まりました。プログラム事業は、我々が資金分配団体として、専門性ある団体とともに子ども・生活困窮者・障がい者などへ支援活動をする団体に助成・伴走することを通じて課題解決への貢献を目指すものです。具体的な事例に、ADDSという発達障害に関わる活動をしているNPOと一緒に組んで作った、発達障害の支援の質の向上を目指す地域ネットワーク構築事業があります。発達障害については、日本では社会福祉として取り組む考えが強かったのですが、アメリカなどでは発達障害と宣告されたお子さんに、早い段階から様々な質の高い支援をしていくと予後が大きく変わるという研究結果が出ており、こうした研究結果を日本でも応用して日本の発達障害のお子さんたちのエビデンスを作り、それを政府にロビイングしていくことによって、発達障害の支援の質を高めるプログラムです。
このように日本で社会課題にアプローチする活動がたくさん集まってきており、これまでに約44億円、16プログラム、総助成先数は151団体になっています。
三つめがフィランソロピー事業で、遺贈寄付や富裕層のお客様の寄付活動のお手伝いをしています。アメリカでは個人寄付だけで約60兆円あり、法人寄付も含めると年間80兆円流れています。日本はふるさと納税が増えましたが、それを除くと約7,500億円で、日本の富裕層人口は世界第二位ですから寄付のお金の流れはもっと動いていいと思います。
もう一つ、遺贈寄付も高まっていくと思っています。
2040年に男性の生涯未婚率は30%になると言われており、約3割の方に相続人がいないということになってきます。自身が築いてきた、あるいは親からの資産をどのように活用していくのか。そのまま放っておくと、うまくいけば国庫税金に入りますが、なにもしないままにしておくと滞留します。これを社会貢献に回していこうというおひとり様、おふたり様が増えてきており、寄付というお金の流れはより一層増えるのではないかと考えています。
アメリカには寄付文化があると言われます。社会基盤を作る際に国主導よりも民間主導で作るというキリスト教的な発想もあると思います。一方で、1980年頃から金融とフィランソロピーがうまく接続したことによって、お金の流れが進化したところがあります。寄付に金融商品のイメージはないと思いますが、アメリカではウェルスマネジメントの領域に寄付が組み込まれ、お客様の資産運用、資産活用の中にフィランソロピー、寄付が選択肢の一つとしてあります。自分の資産を増やし、それをどのように社会に役立てるかを考えることが富裕層の中では当たり前になってきています。我々も寄付のお金の流れを金融セクターと一緒に実装することにも取り組んでいます。
一方で、やはり日本の寄付文化について調査をすると、社会貢献は興味があるけれども「どこに寄付をしていけばいいかわからない」「安心安全なところを見つけることができない」という声を多く聞きます。そこに関しては、我々がゲートキーパーの役割を果たし、日本全国の様々な社会貢献活動について、各団体の安全性を見極めた上で、お客様をつなげることに取り組んでいきます。
我々には今までクラウドファンディングを中心に全国の社会貢献活動を応援してきた実績があります。寄付というお金の流れが、これから日本でもっと増えたときに、本当に効果的な社会的インパクトを実現することを、より一層皆様に実感してもらえるよう取り組んでいきます。そのために昨年、寄付の研究を行うシンクタンクを社内に作り、様々な全国の寄付の活動がどのように社会をより良くしてきたかを研究しています。
一例を紹介しますと、行政が取り組むべき社会課題解決の分野と民間のビジネスが解決する領域がある中で、寄付を届けるべき領域とはどこなのか、様々な形でマッピングしたり、現時点では地方で行政の取組みやビジネスとして成立しているものの今後の人口減少によって成り立たなくなる分野はどこになるのか、例えばどの程度の人口規模ならばコンビニエンスストアが建つのか、あるいは病院が成り立つのかということを調べています。ここに対して寄付のお金をうまく混ぜながら社会を維持させていく取り組みが必要になりますし、寄付だけではなく様々なお金を組み合わせて社会課題解決を前に進めることも必要だと思います。
例えば、寄付のお金がR&D的な取り組みの最初の資金になり、それがビジネスとして成り立つようになった時に融資や投資のお金がついてきます。これをアメリカでは「忍耐強い資本」と呼び、こうしたお金も寄付の可能性の一つとして役に立つと考えています。
こうした形で、慈善的な寄付活動がこれから日本でより広まっていき、そして、この寄付のお金の流れが数千億、数兆、数10兆円と増えていった先に日本社会がもっと豊かに、もっと良くなっていくことを、私たちは実現していきたいと思います。今日を皆様と様々な取り組みをさせていただくきっかけにできればと思っています。
※2026年5月27日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。