結婚と婚活の未来について
2026年6月3日(水)
(株)IBJ 代表取締役会長 石坂茂
私は婚活サービスのIBJを経営しております。26年前に創業し、現在は全国4,800店舗の結婚相談所がIBJプラットフォーム上で毎月9万件を超えるお見合いを実現しています。今年は2万4千組近くの結婚カップルを生み出す見込みです。
日本の結婚数は年50万組弱ですから、何と20組に1組はIBJカップルということになります。本日はそのIBJの経験を踏まえ、業界の現状と結婚の未来について率直にお話しさせていただきます。
まず、少子化の本質から整理させてください。よく「子育て支援が少子化対策だ」と言われますが、私はそれだけでは不十分だと感じています。未婚女性も含めた出生率は1.1と危機的ですが、結婚した女性が生む子供の数は、東京都で1.66名、地方では2名程度と、50年前と比べてそれほど減っていません。つまり少子化の根本原因は、子育てではなく未婚化と晩婚化にあるのです。
また年齢別のデータを見ると、40年前と比べて20代で結婚する数は激減している一方、40代女性が産む子供の数は40年前の6倍近くに増えています。これが晩婚化の実態です。政策的に20代の結婚を増やしていくことこそが、ダイレクトな少子化対策につながると確信しています。
実際には8割以上の方が「いずれ結婚したい」と考えています。問題は意欲ではなく、出会いのインフラが社会から失われたことです。仲人文化が消え、職場恋愛はハラスメント意識で難しくなり、地縁・血縁も薄れた。
また結婚のコストとリスクが可視化されすぎたこと。SNSでは幸せな家族と離婚報告が同時に流れてきます。女性の経済的自立が進み、生活のための結婚は不要になった。スマートフォンで孤独はある程度埋められてしまう。
内閣府の調査でも、男女ともに若者の3割強が異性との交際経験がないという結果が出ています。婚活産業はその空白を埋める社会インフラとして生まれました。創業当時、サービスを利用して結婚する方は1〜2%でした。今は20%近くになっています。
では、結婚と婚活の未来はどうなるか。ここからが本題です。
都市部を中心にパートナーシップのあり方は確実に多様化しています。事実婚、別居婚、週末婚――法的な婚姻届にこだわらない選択をするカップルも増えてきました。同性パートナー制度を導入する自治体も急増しており、結婚という制度の輪郭が、確実に変わりつつあります。これを「結婚の崩壊」と捉えるのは誤りだと思っています。むしろ結婚の本質が問い直されているのです。
「生活のための結婚」から「人生を共にしたいという意志の結婚」へ。婚姻届という法的行為よりも、深い信頼に基づくパートナーシップに価値の重心が移っている。これは成熟した社会の自然な変容とも言えます。
一方で懸念もあります。多様化の波は都市部の高学歴・高収入層から広がる傾向があります。経済的・社会的余裕のある層は多様な選択ができる一方、若い世代の多くはむしろ「出会いがない」「踏み出せない」という現実に直面している。
パートナーシップの自由化が、出会いの格差を拡大させる側面も見逃せません。
婚活の未来という観点では、テクノロジーの進化は避けて通れません。AIマッチングは今後飛躍的に高まるでしょう。ただし、結婚という人生最大の意思決定において、恋愛力や直感的判断は欠かせません。
「最後の一歩」を踏み出す力は、信頼できる第三者のサポートも必要です。テクノロジーが進化するほど、人が人に寄り添うカウンセリングの価値は逆説的に高まると見ています。
結婚の形は変わっても、誰かと深くつながりたいという人間の根源的な欲求は消えない。その欲求に誠実に応える仕組みの社会的意義は、これからさらに大きくなると確信しています。
民間と行政が連携し、出会いのインフラを社会全体で再構築していくことが、日本の未来にとって不可欠です。