卓話


パキスタン・ポリオワクチン投与活動報告

2024年11月6日(水)

2023年度地区ポリオプラス委員会委員長
トーホー工業(株)
代表取締役 小林康徳氏(東京向島RC)


 2023年3月11日〜15日の日程で、チームポリオJAPAN第2班、国際ロータリー第2690地区パストガバナーの松本団長(益田西RC)以下メンバー12名でパキスタンNIDに参加してきました。

 この組織は2001年に2830地区のガバナーであった小児科医の関場先生がインドにポリオワクチン投与活動に行かれたのがきっかけでできた組織で、全国のロータリアン有志によって組織されています。

 2018年からパキスタンへ拠点を移して活動しています。その活動の内容について、皆様から毎年お預かりしてる貴重な寄付は一体どのように使われているのか、もう40年以上もロータリーはポリオプラスに取り組んでいるのになぜ終わらないのか、というところをお話させていただきます。

 我々が行ったのはパキスタンの第二の都市カラチで商業の中心地です。そこへ毎日、アフガニスタンや地方から大勢の人々がバスや鉄道で移動してきます。

 そこで、高速道路にポリオステーションを作り、カラチに入る全てのバスを停めてもらい、一台一台のバスに乗り込んでいって、子供がいればその場でワクチンを投与します。1日で通るバスの数が1000台から2000台あり、24時間通過するため、私が訪ねたステーションではワクチン投与を行うワーカー33名が2交代制で365日、活動していました。この1ヶ所で1年間に8万人から約10万人の子供たちに投与しています。

 パキスタンの国土は日本の約2倍で、人口は約2億5000万人です。5歳児以下の子供も5000万人以上いると言われており、今アフガニスタンから毎日大勢の難民がパキスタンに入ってくるため、実際、何人いるかはまだわからないということです。

 次に訪れたのは鉄道の駅です。鉄道も使ってカラチに入ってくるため、駅舎や構内、電車内で子供を探して、その場で説明をしてワクチンを投与させてもらいます。新型コロナの感染が拡大した時、日本人でもワクチンを拒否する方が結構いましたが、ポリオワクチンも拒否される人がかなりいます。それは、ポリオワクチンを投与すると不妊になるという誤った情報が流され、懐疑心が強いためなかなか投与させてもらえませんが、丁寧に説明して投与させてもらっています。

 バスや鉄道を使っているのは比較的裕福な人々で、ポリオについての知識もあるため、比較的スムーズにワクチンを投与させてくれます。

 しかし、アフガニスタン難民キャンプをはじめとするアフガニスタンの人々の間では「ワクチンで我々を殺そうとしている」というような情報が流されていて、懐疑心が強くてなかなかワクチンを投与させてくれません。

 インドではワクチンを投与してくれた子供に日本から持っていった駄菓子を配っていたのですが、ワクチンの対象ではない大きな子供たちも集まってきてしまうため、パキスタンではノートや折り鶴など食べ物ではないものを配りました。

 ただ、識字率が今58%位とおよそ半分の人が字を書いたり読んだりできないため、子供にノートをあげるのはちょっと違うのではと思っています。

 ポリオのワクチン投与を行うヘルスワーカーの人たちはボランティアではありません。ひと月に日本円にして1万5000円の給料をもらい、それを生業としています。パキスタン全土で25万人から30万人いると言われ、ひと月の人件費で約45億円かかります。1年間で約540億円がワーカーの人件費に費やされます。

 次に、一番大事な活動である個別訪問をしました。家というよりは簡易テントに近い感じです。気温40℃の中、上下水道もなく電気もないコミュニティを訪ねました。ポリオは感染者の糞尿が口から入って感染していきます。トイレがないため、子供たちは自分が道路で用足ししたものを掴んで友達と投げ合ったりして、その手で食事をするため、当然ポリオがどんどん感染していってしまいます。

 ロータリーが作った拠点では、熱に弱いワクチンを冷蔵保管し、訪問する際はクーラーボックスの中に入れて温度管理しています。

 パキスタンはパキスタンイスラム共和国という正式名称で、イスラム教の国のため、家の中に男性がいない家には一切他の男性の人は入ることができないため、活動していても、女性のロータリアンが中に入り、我々男性のロータリアンは家の外で子供を外に連れ出してくるのを待ち、子供たちを外に出してもらってからワクチンを投与しました。

 ワクチン投与後は、投与証明として左手小指の第1関節に紫色の油性マジックで色を塗ります。子供も大人も生まれてから一度もお風呂やシャワーに入ったことのない人たちのため、油脂が皮膚について油性のマジックを弾いてしまいます。住民台帳といった管理するものが一切ないため、同じ日に2回ワクチンを打ったりしないように、布で手をゴシゴシこすってマーカーでちゃんと色を着けました。

 そして、簡易テントの小屋一軒一軒の壁に、子供の数やワクチンを投与した日時など詳細な投与情報を書いていきます。カラチはほとんど雨が降らず、一昨年は15日しか雨が降らなかったそうで、いつまでも消えたりしないということです。

 コミュニティの中にはポリオに感染している疑いのある少年がいました。手足に麻痺が残っており、コミュニティにこのように感染している子供が1人いるとお父さんお母さんが「うちの子は大丈夫か」とみんな心配し、積極的にワクチン投与をさせてもらうことになりました。 アフガニスタンからの難民の居住エリアにも投与に行きました。今アフガニスタンからかなりの人が来ており、武器や爆弾などを何の検問もなくそのまま持って入ってきて、かなり危ないため、我々を警護する軍や警察官の数がこのエリアでは倍ぐらいの数になりました。

 ここでは簡易テントの家から勝手にブロックをどんどんどんどん積み上げて、いつの間にか塀を作って勝手に住み着いてる人々がたくさんいました。

 我々日本人から見るとパキスタン人もアフガニスタン人も見分けが全然つかないのですが、地元の方にはすぐわかるらしく、アフガニスタン人は少し気性が荒いようなイメージを受けました。

 最近できたアフガニスタン人が勝手に住み着いているエリアでは、まだ簡易テントの小屋が多い状況でした。アフガニスタン難民は飲み水もなく、仕事も食べ物もありません。我々ロータリアンをはじめWHO、ユニセフもそうですがワクチンを持って行くと、「ワクチンはいらないから、食べ物や飲み水をまず持って来い」と必ず怒って言われます。

 通路に置いてある青いポリタンクは飲料水用で、パキスタン政府も給水車を回しているとは言っていますが中は空っぽで、1週間に1回も持ってこないと住んでいる人は言っていました。たまに中に水が入っているポリバケツを見るとものすごい茶色い水が入っていて、川から汲んできてそのまま飲んでいる水しかなく、牛も人も同じ水を飲んでいました。

 我々は、まず綺麗な衛生環境を作らないとポリオは何年たってもなくならないのではないかという感想を持ちました。高速道路の両サイドに皆さん勝手に住み着いていってエリアがどんどん広がっています。WHOもユニセフもただひたすら1軒1軒回って健康状態を確認し、ポリオ以外の感染症もチェックしてくれています。

 どの家に行ってもポリバケツはほとんど空で栄養状態は極めて悪い状態です。大阪のロータリークラブが今、井戸を作っています。カラチはアラビア海に面した街で井戸を掘ると塩分の強い水が出るため、それをフィルターでろ過して人が飲める水にしています。ワクチン投与活動も大事ですが、まず衛生環境を少しでも改善しないとイタチごっこになると思いました。

 我々はポリオが根絶されるまで毎年パキスタンに行く予定です。もし行ってみたいというふうに思われる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一緒に行っていただきたいと思います。

 なおかつ井戸を作る活動もしておりますので、ご希望の方はそれも合わせて言っていただければと思います。パキスタンはイスラム教で細かく宗派も分かれているため、ワクチンは宗教上、絶対打たないという宗派の方々が一定程度いるため、そこを何とかクリアしなければ全ての子供にワクチンが投与されないという状態にあります。

 これから先、アフガニスタンにも行けるようになると思います。世界でポリオが残るのはアフガニスタンとパキスタンの2カ国だけですので、何とか我々が生きている間に根絶させたいと思っています。


    ※2024年11月6日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。