卓話


AI時代に子どもたちの個性を輝かせる学びとは

2025年3月5日(水)

プチ・レトル(株)
AI活用コーチ 谷口恵子氏


 「AI活用コーチ」という肩書きはなかなか耳にされることがないのではと思います。実は私自身がチャットGPTを初めて使ったのは、2022年11月末のチャットGPT登場から2カ月近くたった2023年1月20日でした。話題になっているので1回ぐらい使ってみようかと使ってみたところ、衝撃を受けました。

 それまで英語学習コーチとして社会人の英語学習のサポートをしてきましたが、これは英語学習が完全に変わると思いました。学習者が自分のための教材を作り、自分のペースやニーズや興味・関心に合わせて学習をしていくことができる時代がチャットGPTのお陰でやってくると思いました。

 そして、仕事も社会も大きく変わっていく予感がしました。そこで、翌日、YouTubeにチャットGPTを使って英語学習を効率化する方法を6つ動画で撮ってアップしたところ、約13万再生になったのです。バズりました。それまでYouTubeをほとんどやっていませんでしたが、YouTubeも含めたAI活用、そして、AIとどのように付き合っていけばいいのか、何に気をつければいいのかも含め、AIと共存する方法を広めていきたいと、その日からAI活用コーチと名乗り始めました。

 本日は、AIとこれからの教育についてお話しします。
 私自身、小学校3年生、9歳の息子がおり、息子が生まれた時に、これからの教育はどうなっていくのかが気になり、東大大学院に入り直して、教育工学や学習科学の分野を学び直しました。その中で、学習者中心の学び、自分で学びたいことを選び学び取っていくことを息子にしてほしいと思い、少し変わった道を息子は私と夫と一緒に選びました。

 チャットGPTの登場は、1950年代からあったAIという言葉やその後何回かあったAIブームとは一線を画すものでした。それは生成AIです。それまでのAIは何かを認識することが得意で創造的なことはできないと言われていましたが、生成AIはこのクリエイティブが得意です。

 何かを尋ねれば、まるで人間が考えたかのように文章で答えてくれます。アイディア出しも得意ですし、何かを企画すること、文章を1から作ることも得意です。音楽、動画、画像を作る様々な生成AIが出ています。

 テキスト生成AIだけでもたくさんありますし、一部の企業においては仕事の効率化だけではなく、製造、小売、飲食・食品、IT、医療の分野で生成AIの活用事例が出てきています。

 例えば、パナソニックコネクトなどはチャットGPT登場前から社内用のGPTの開発をしており、全社にその導入が広がっています。導入から1年間で全社員の労働時間を18.6万時間削減したといったプレスリリースを出しています。

 設計や開発、商品企画などに使っている企業もありますし、メルカリのように一般の消費者ユーザー向けの機能として生成AIを使えるようにしている企業もあります。ユーザーはAIを使っているという意識はありませんが、メルカリのアプリの機能として写真を撮ると自動で商品の説明がパッと出てくる、そんな機能が追加されています。

 5年、10年先がどのような社会になるのかがわからない時代に子供たちに必要な教育、学びとは何だろうと考えた時、明らかなのは詰め込み教育ではなく、自分で考えて行動する力を身につける教育、学びだと思います。

 AI時代の子供たちに求められる力は3つあります。
 1つ目が批判的思考力です。
 AIを使おうと決めるのも、AIに何をしてもらうかを決めるのも、AIが出してきた答えの中でどれを採用するか、あるいはそれをどう編集し、どの部分を生かすのかを決めるのもやはり人間です。AIの言いなりになるのではなく、批判的にそれを捉える力が必要になります。

 2つ目、探究力と自己表現力です。
 自分の興味関心をそのままにせず、深め、それをベースにしてきちんと表現して周りの人に伝えて、そして社会に影響を及ぼしていく。そうした力を育てられれば、1人の探究が広がって、社会にいい影響を及ぼせる、そんな未来につながると思います。

 3つ目が協働力です。
 これはAIとの協働も含みます。生成AIがなかった時代に戻ることはない前提で、AIとどう協働していくのか。そして、もちろん人間同士、人とどのようにチームを組み、コミュニケーションをして、課題を解決していくのか。そうしたことを小学生ぐらいから学んでほしいと思っています。

 こうした力を身につけるために、今オルタナティブスクールと呼ばれる、本当に一握りの学校が注目されています。オルタナティブスクールとは学校教育法第1条に定められている学校ではく、独自の理念やカリキュラムで運営している学校です。不登校の子供たちの受け皿になっているフリースクールとも違い、こうした子供たちを育てたい、こうした理念でこうしたスキルを伸ばしてあげたいとしっかりと各スクールが決めて運営をしています。

 共通するのは子供の主体性や個性を尊重する学び方をしているところです。ただ、認知度がまだ低いこと、国や自治体からの支援が受けられないスクールであるため学費が高くなってしまい、一部の家庭しかオルタナティブスクールを選ぶことができないという課題があります。

 2024年11月に全国11校のオルタナティブスクールが集まり、「オルタナティブスクールフェス」という有料のオンラインでのイベントを開催しました。最初はパネルディスカッションを行い、オルタナティブスクールを選ぶことにはどのような意味があるのか、代表の理事たちが話をしました。その後、参加者には興味のある学校を選んでもらい、ブレイクアウトルームで教員や保護者と話をしてもらいました。

 このフェスは当初、100名の枠で参加者を募集したところ、2日ぐらいで埋まったため150名に増席すると、それもすぐに埋まりました。アンテナの高い親御さんたちは「この子に合った学びは何だろう。もしかしたら公立ではないかもしれない。私立でもないかもしれない。そして、こうした学び方ができる学校はないだろうか」と積極的に情報収集をされているのだと思います。

 私の息子が通っているのが湘南ホクレア学園です。江ノ島の近くにある古民家で、1学年は6人まで、小学校1年生から中学校2年生まで約30名が学んでいます。

 同学園が大事にしている力がサバイバル力です。湘南の海が近いということもあって、毎週木曜日は泳げる日は1日中海に行きます。その後はビーチでラグビーやカヤックなど普通の小学校ではなかなかやらないような体験をさせてもらいます。避難訓練は事前に予告されることはなく本気の避難訓練をします。親にも事前連絡がないため仕事中に連絡が来て慌てます。そんな形で、少し尖った教育カリキュラムを実践しています。

 学び方も少し変わった進め方をしています。いわゆる一斉画一授業ではなく、個別自立学習で、小学校1年生から、自分の目標を毎週月曜日に決めて、振り返りを金曜日に行います。午後はプロジェクト学習という探究型学習を多く行います。親としては、その時その時の好奇心や探究心を伸ばし、自分で学ぶ楽しさに気づいてほしい、そうしたことを一番大事にしたいとここに通わせています。

 この学園の子供たちがハッピーになるだけではなく、日本中にこうした少し変わった学び、多様な学びを広めていくことができないかと、同学園の理事長が2024年6月、一般財団法人オルタナティブスクールジャパンを作りました。私もそのお手伝いをしています。

 ビジョンは「子供が自分の学びを自由に選べる社会を作る」。そしてミッションは「オルタナティブスクールを身近な選択肢にする」です。オルタナティブスクールに興味を持った方がいらっしゃいましたら、江ノ島までぜひ遊びにいらしてください。いつもどなたでもウェルカムですので、古民家で子供達と輪になって面白い学びをしているところをぜひ見に来ていただけたら嬉しいです。

 AI時代に必要となる学びとは何か。もう大人が正解を教えられる時代ではないと思います。子供たちと一緒にこの先の見えない社会をどう生きていったらいいのかを楽しみながら試行錯誤する、そんな姿勢に変わるべき時ではないかと思っています。


    ※2025年3月5日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです