スパイスとハーブが人々の生活をより豊かにする
2024年7月17日(水)
ヱスビー食品(株) 特別顧問
エグゼクティブアドバイザー 山崎明裕君
本日は香辛料とカレー粉についてお話しします。
香辛料の定義やスパイスとハーブの区分については、国や専門家によって様々な考え方があります。その一つとして、香辛料は芳香性植物の一部であり、料理、園芸、クラフトなど人々の生活に何らかの有益な役割を果たしているもので、葉、種子、果実、根茎、樹皮、花などの様々な部位が利用されます。
我が国ではスパイス=「辛い」というイメージが強いですが、実際に大半の香辛料は「香りがするもの」であり、それが一番の特徴です。
料理における香辛料の三大機能は、香り付け、色付け、辛み付けです。香り付けは、料理に美味しそうな香りをつけて食欲をそそり、素材の臭みを抑える働きがあります。代表的なものはクミン、クローブ、ナツメグ、シナモンなど他にもたくさんあります。色付けはターメリック、サフラン、パプリカなどがあり、料理に彩りを加えます。辛み付けは唐辛子、こしょう、わさび、山椒の他に花椒も辛さと痺れが人気です。
香辛料の歴史は古く、古代には防腐作用のあるシナモンがミイラに使われていました。中世には東洋の産地からヨーロッパに運ばれ、多くの商人を経由するうちに価格が高騰し、金銀に匹敵する価値を持つようになりました。15世紀半ば頃の大航海時代にはコロンブスやマゼラン他が新しい航路を開拓し、香辛料の貿易が盛んになると同時に、激しい産地の争奪戦がスパイス戦争にまで発展しました。
カレー粉における日本伝来の歴史は18世紀後半から19世紀後半にかけて、インドからイギリスを経由して日本に伝わりました。イギリスによるインドの直接統治の時代は食文化の交流も盛んであり、インド伝統のミックススパイス(マサラスパイス)をベースにしたものが、イギリスでカレー粉として工業製品化され、明治時代初期に日本に輸入されました。国内におけるカレー粉の製造方法には、スパイスを粉砕して粒を揃える製粉工程、香りを引き立たせる焙煎工程、味や香りをまとめ、寝かせる熟成工程があります。
我が国の香辛料原料調達は海外に大きく依存しており、昨今の世界的な気候変動の影響を強く受けます。異常気象や自然災害は、多品種少量で生産される香辛料生産地に特に大きな打撃を与えることがあり、供給が不安定になりがちです。リスク回避の為に複数産地からの調達は勿論大切ですが、今後は持続可能な農業技術の導入や気候適応策の推進が求められます。また、他国や特に中国に買い負けしない対策として、日本は価格競争だけではなく、環境保護や農家との共存共栄など社会貢献を伴う原産地との信頼関係の構築が重要です。
日本市場の少子高齢化は避けられない現実であり、人口減少により国内ニーズの減少は容易に予想されます。このため、高品質な製品を手頃な価格で提供するだけでは今後の成長は難しいでしょう。
打開策として海外展開の拡大が重要性を一層増しています。訪日外国人観光客の増加に伴い日本の食全般に対する評価は上昇傾向を続けており、高いクオリティを持つ日本製品は、円安効果も伴い海外市場での競争力を高めています。日本式カレーに対する訪日外国人の人気も順調に推移しており、今後に期待が持てると考えています。
食品業界では、冷凍技術、代替食品、調理ロボットなど多くの技術革新が進んでいます。香辛料業界でも、AIやロボットを活用した技術革新が今後益々期待されています。植物工場の活用も一つの可能性であり、気候に左右されずに高品質な作物を安定的に生産することができます。この技術をスパイスの生産にも応用することで、持続可能な生産体制を構築することが期待されます。
香辛料を通じて人々の生活を豊かにするために、私たち一人ひとりが香辛料の魅力を理解し、日常生活に取り入れていくことが大切です。スパイスやハーブの持つ豊かな香りや風味を楽しみながら、健康的で豊かな食生活を送ることを目指していきましょう。