Lead yourself 昭和小学校 未来への挑戦
2024年9月4日(水)
(学)昭和女子大学付属昭和小学校
副校長 渡邉直人氏
母体となる昭和女子大学は今年度で創立104年、附属昭和小学校は創立71年目となりました。
1920年、第一次世界大戦の惨状を憂いた人見圓吉・緑夫妻が「愛と理解と調和」を旨とする女性を育む学校を創立したいと昭和女子大学、附属中高部の前身である私塾・日本女子高等学院を作りました。その後、現在はこども園となっている幼稚園、小学校を男女共学で始め、中学校以上が女子校になっています。
建学の精神は『世の光となろう』です。小学校は『目あてを指してすすむ人・真心を尽くす人・からだを丈夫にする人』のいわゆる「知・徳・体」の3つの目あてで教育の営みを進めてきました。
現在、児童数は約630名、各学年3学級の18学級、教職員数約60名です。初等教育は人格形成の基盤を作る大切な時期であり、先達が作ってくださった源流の下、その営みを続けています。
そして、今年度からは新たに「国際」「探究」コースを開設しました。新1年生3学級の中で1学級がイマージョン教育を実践する国際コース、2学級が探究的な学びを深める探究コースです。
子どもたちがやがて飛び出す未来社会は誰も予想がつかない状況であり、紛争や人権問題を含め世界に課題は山積しています。国内では人口減少が進み、出生数も激減し、社会は様々な課題に直面し、急速に社会情勢が変化する現在は「解」のない世界とも言われています。
こうした情勢下、本校では、社会で逞しく生きる力、グローバル社会で活躍できる力を育んでいきたいと考え、それが2コース制という挑戦になっています。
児童1人1人が自分なりの良さや可能性を発揮して、自分のなかに「光」を見いだし、他と協働して、よりよい社会につなげ貢献できる「人づくり」を目指しています。
また、「資質・能力ベースの学校づくり」を目指し、昨年度からは子どもたちの育成で目指す資質・能力の柱として『Lead yourself 〜自分リーダーシップの発揮〜』を掲げています。
子どもたちには、自尊感情に裏打ちされた主体性を育み、自らのよさや可能性を発揮し、協働で新たな価値を創造し、自身の生きる力を培っていってほしいと考えています。
本校で捉えるリーダーシップは、いわゆる、集団や組織を牽引する役割としての意味だけでなく、「何があっても、どんな場面でも自分のよさや可能性を発揮して自・他の向上のために影響を与え、高まり合って生き方をつくっていく力」です。それは「誰もが発揮できる」「役割や立場に限らない」「資質能力として開発していける」ものと考えています。
そのため、1年生は1年生なりに、6年生は最上級生としての自分リーダーシップが発揮できるように育てていきたいと考えています。
自分リーダーシップを発揮するためのコンピテンシーは「持続チャレンジ」「思考力」「コミュニケーション」「自分づくり」「表現力」の5つで構成されています。真ん中には自尊感情に裏打ちされた子ども自身の主体性を位置づけ、知識や技能だけでなく、少し先の社会に出たときに役立つ資質能力を意識し、全教職員で重点化した汎用的な能力です。今後の本校の教育を担う20代、30代の教員が中心となり、実践と理論を踏まえた議論を重ねて考えました。
本校では、あらゆる学習教育活動をこの5つのコンピテンシーを通して捉え直し、教育活動をプランニングしています。そして、これまで培ってきた昭和学園の伝統を大切にしながら、それらを進化発展させ、果敢なチャレンジをスタートさせています。
2024年度からスタートした新コースについてお話しします。
そもそも本校は、1994年から4年生以上を対象に英語の授業を行い、2004年からは全学年に広げて取り組みました。当時の全国の小学校での英語教育は、2006年に中教審外国語専門部会の審議経過報告で、高学年の週1時間程度の英語教育が提案されるといった状況でした。本校は先駆的に英語教育に取り組みだした学校の一つと考えています。
今から10年ほど前、昭和学園理事長に就任された坂東真理子先生のリーダーシップの下、大学、中高部、こども園とグローバル化を進める中、本校も学校教育法の第1条に掲げられている教育施設である「一条校」としてイマージョン教育を実践するというミッションを受け、粛々と準備を進めてきました。
そして、いよいよ国際・探求コースの開設の運びとなりました。
両コースとも、本校で目指す資質能力、すなわち自分リーダーシップを育みながら、変化する社会、グローバル社会で逞しく生きる力を育てることを基盤としています。
本校のこれまでの良さをアップグレードし、生涯にわたって使え、磨ける確かな資質・能力の育成をしていきたいと考えています。この春より1年ごとに積み上げ、各コースが6年生まで揃うのは2029年になります。
国際コースのコンセプトは「グローバルな社会で活躍できる力、世界標準の力を育てる」です。学校教育法で認められた一条校のカリキュラムのうち、多くの授業、活動を英語で学ぶコースです。こうしたコース設定は、首都圏(東京23区)でも初めてで、多くの皆様に関心を寄せていただいています。
国語、道徳、社会等を除く多くの教科と教育活動を全て学習指導要領に準拠した内容で、英語で学ぶことになります。募集人員は36名、1学年3学級のうちの1学級です。バイリンガルの日本人担任1名と、外国人教員2名の計3名がチームを組んで、きめ細やかな指導をしています。
さらにイマージョン教育に長けたコーディネーターを配置して、子どもたちの発達段階を考慮しながら英語力をより効果的に伸ばすことができるようにプログラムを構築しています。
イマージョンとは「浸る」という意味で、学校生活の中で、より多くの活動で英語に浸るようにしていきます。国語や道徳、社会といった教科以外は全て英語で学びます。1年生は、国語や道徳等の10時間を除く、算数、生活、音楽、図工、体育等のおよそ20時間、6割以上の時間を英語で学ぶことになります。例えば、国際コースの算数の授業では、文科省の学習指導要領に則った検定教科書の英訳版を使用し、児童1人1台のタブレット学習に加え、話し合い活動を交えた協働的な学びで理解を深めていきます。
国際コースで学ぶ子どもたちは、母語の日本語をしっかりと身につけ、その上で第二言語としての英語を習得して、真のバイリンガルになるように育成していきます。
世界のグローバルスタンダードカリキュラムの「Cambridge International」を全国で初めて、一条校の小学校として認定を受けることができました。1年生から週4時間のプログラムを学び、着実な英語力を身に付け、卒業時に世界基準のCEFRの「B1」、英検2級相当を目指します。
このCambridge International認定校は日本ではまだ20校(団体)ほどですが、世界では160カ国で約1万校あります。日本では国際バカロレア(IB)導入校の方が圧倒的に多いのですが、本校は学習指導要領との親和性の高さからCambridge Internationalを選択しました。科目ベースで取り入れることができるため、カリキュラムを大幅に変えることなく学習指導要領に準じた内容を英語で行うことができるのが大きな特色です。
また、本学園ならではの英語環境の下、アメリカの昭和ボストンへの体験学習やBST(The British School in Tokyo)およびテンプル大学との連携を一層図るとともに、様々な学びの内容をオプションとして準備しています。現在も夏に行っている小学5・6年生対象の「ボストン・フレンドシップ・ツアー」は、子どもたちの英語との繋がりをさらに強くし、大切な学びの機会ともなっています。
令和5年度の首都圏私立小学校の主な志願者数を見てみますと、新コース設置を皮切りに本校の取り組みに関心を寄せていただくご家庭が増え、男女共学校の志願者数では、慶応幼稚舎、慶応横浜初等部、早稲田実業、東京農大稲花に続き首都圏下、第5位の実績となりました。
本校の昨年度までの5年間の入試倍率も新コース開設で大きく変化し、5.6倍と志願者を増やしました。
国際コースでは、学びの環境づくりを大切にしています。1時間目と2時間目は国語や道徳といった日本語を使う授業を集中させています。3時間目以降は英語イマージョンの授業になるため、スライディングウォールでクラスを18人ずつの2つに分け、それぞれで外国人担任が授業を行います。少人数にして教育効果を高めるだけでなく、子どもたちの気持ちの切り替えに役立っています。
本校は2つのコース設定で学びの選択の幅を広げ、子どもたちの未来をサポートしていきたいと考えています。国際化の中で英語というコミュニケーションツールを身につけつつ日本人としてのアイデンティティを持ち世界で活躍できる人材、グローバルジャパニーズを育むことができればと願っています。
子どもは「未来の宝」、そこに関わる教育は希望です。本校の教育理念、そして方針、変化しアップデートし続けるチャレンジは続きます。
※2024年9月4日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。