卓話


東北すくすくプロジェクト2020年に向けて

2018年11月28日(水)

東京RCチャレンジ100委員長
三幸(株) 
代表取締役会長 橋本有史君


 東京ロータリークラブでは、10年ごとに長期のプロジェクトを実施しており80周年に当たる1999年から10年間は、「ロータリークリアランドプロジェクト」としてカンボジアでの対人地雷除去活動に取り組みました。このプロジェクトは国際的な地雷除去団体であるヘイロートラストとの協業でしたが、10年間に約130万平方メートルの土地の地雷除去を行い26,000人が居住可能な土地を作り上げました。

 次の活動を協議しているころ東日本大震災が起きました。そのため震災被災地への支援を前提に種々の検討を行いましたが、2011〜2020年の10年間は東北の支援、特に新しい命の支援をしようと「東北すくすくプロジェクト」に取り組むこととなりました。新しい命への支援は短期的には意欲を、中期的には消費を、長期的には地域発展のための人材を生み出します。この事業は、「子育て支援施設の整備」「支え合うコミュニティ作り」「子育てに係る人材育成」の三つの柱で構成されています。

 東北すくすくプロジェクトでは現在まで大きく分けて3つの事業を行なっています。最初に取り組んだ事業は津波で流された陸前高田市の子育て支援センター「あゆっこ」の復興です。東日本大震災復興基金から1,100万円の補助を頂き、東京RCも1,000万円を拠出して2012年の立春に竣工しました。コミュニティの場ができたことで、集まったお母さんグループが仮設住宅のお年寄りの支援を始めるようになり助け合いの輪が広がったことは全く予期していなかった成果です。また、このプロジェクトで整備のお手伝いを行なった施設には「東北すくすくプロジェクト」という銘板の設置を行うと共に、東京ロータリーの花である「ハナミズキ」の植樹を行なっておりますが、「あゆっこ」でもハナミズキが毎年紅白の美しい花をつけます。

 さて、震災直後は地域外からの直接的支援が広く行われますが翌年度からは状況が変わります。震災後、各地より寄せられた資金、物品、人材の支援は2年目以降ほとんどが終了してしまいます。2年目以降は外から直接何かをするのではなく、地域の人たちが互いに支え合うコミュニティ、地域の人たちによる地域の支援が重要になってきます。東北すくすくプロジェクトではそれらの状況を踏まえ、「ママサロン」や「母乳育児支援セミナー」の開催を通じて支え合うコミュニティ作り、母子支援のための人材の育成を行っています。

 一方でこれらを進めるにあたり、気仙沼市にはそのようなコミュニティを育てる場所がなく小児科医院の待合室を借りている状況であり、陸前高田「あゆっこ」のようなコミュニティの場を気仙沼に作る必要性が出てきました。このプロジェクトではそれらを踏まえ気仙沼市に「気仙沼すくすくハウス」を整備することとしました。

 ここまで進んだ段階で、新しい発見がありました。この母子への支援がロータリー財団の「未来の夢計画」の重点項目であると共に財団の勧める内容がコミュニティ作りや人材育成など「東北すくすくプロジェクト」で進めていることそのものだったことです。企画した内容はロータリー財団の内容を見てのものではなく、結果として一致したものです。これは東北すくすくプロジェクトの内容が今回の事業固有のものではなく、母子支援の世界標準になっていることを示しています。今後世界の何処かで被災地の母子支援が必要になれば、今回の経験がそのまま活かせることに他なりません。

 これらを踏まえ気仙沼すくすくハウスの整備には、ロータリー財団のグローバル補助金の申請を前提に準備を進めることになりました。それまで日本では援助される側としてのグローバル補助金の利用はほとんどなく、大型プロジェクトとしては東京ロータリーが最初のチャレンジとなりました。補助金の申請に当たっては被災地クラブが直接的な受け皿となる必要があると共に、海外からの寄付が全事業費の3割を超える必要があります。受け皿として気仙沼ロータリークラブにお願いするとともに海外の多数のクラブ、ロータリアン個人の支援を得て総額20万ドルのプロジェクトとして立ち上がりました。この過程において、チャレンジ100委員会委員、多くの会員の協力があったことは言うまでもありません。気仙沼すくすくハウスは地元の子育て中のお母さんにはなくてはならない施設となり毎年延べ3,000名以上の利用があります。また地元のお祭りに団体で参加するなどその活動は当初想定した内容を大きく超えるものになっています。

 気仙沼すくすくハウスを始め、すくすくプロジェクト全体としては年間600万円程度の費用が掛かっています。これらの費用は会員からの寄付のほか、東京ロータリーの各種行事からの寄付、また2580地区内の寄付によって賄われています。

 さてグローバル補助金は、恒久的な人道支援の「きっかけ」です。気仙沼すくすくハウスも東京ロータリークラブが支援を行う2020-2021年度以降も気仙沼における機能を維持していかなくてはなりません。これらを踏まえ2年前より気仙沼市の支援を得るべく活動してまいりましたが、結果気仙沼すくすくハウスは、気仙沼市に2018年4月に開館する新しい子育て支援施設の幼児園未就園児のエリアに合流することになりました。新施設は気仙沼市にあった古町児童館の移転、新築を行うものですが、この古町児童館には未就園児や妊婦に対するノウハウがなかったため、気仙沼すくすくハウスの理念やノウハウを引き継いでいます。この新施設へも記念にハナミズキを寄贈し、また室内にはロータリーの銘板の設置を行いました。

 さて、東北すくすくプロジェクトは2020-2021年度まで被災地の子育て支援を行いますが、新たに3つの事業を行なって参ります。まず、気仙沼市の新月地区に新たに子育て支援施設の整備を行いその運営を行ないます。この地区は新児童センターから遠く子育て支援の手薄な場所で、場所の選定にあたっては気仙沼市とも相談の上決め、本年9月10日にオープンいたしました。

 次に、「あゆっこ」や気仙沼市の新児童施設、石巻ほか多数の施設において気仙沼すくすくハウスで行なっていたコミュニティプログラムや人材育成プログラムを実施していきます。今年からは福島県の浪江町も対象となりました。福島は原発事故被災地という特別な地域で今までは子育て支援の対象外としていましたが、除染も進んだ現在その対象としました。

 3番目は東京ロータリークラブが直接立ち上げた陸前高田、気仙沼の活動のみならず、その他の子育て支援団体をつなぐ「すくすくネットワーク」の構築です。東北各地では自治体のみならず多くの奉仕団体が母子支援に取り組んでおりますが、これらの施設、団体をつなぎ交流を図って行くことによりさらなる交流が生まれ、ノウハウの蓄積や共同イベント等を通じての活動の活性化が図られると考えています。

 最後に2020-2021までの3年間の課題についてお話させて頂きます。まず今回整備、運用を開始した新月地区の拠点を恒久的な拠点とすることです。このためには、この拠点が地域にとってなくてはならない拠点として気仙沼市に認めて頂き、将来的な補助に結びつけていかなくてはなりません。気仙沼市とも相談し決めた場所で可能性は十分にあり、恒久活動となるように努力してまいります。

 次は、この10年間の活動のデータの保存、記録、報告書の作成です。10年間の間には多くの活動が行われ、また実績として残っています。ここでのノウハウや記録をまとめるとともに東京ロータリークラブの歴史として残していきたいと思います。最後は最終年度 2020-2021年度に予定する終了イベントの企画と実施です。最初に「あゆっこ」を利用した2〜3歳の子供たちも中学生になる年になります。10年を振り返り次の東北の子育て、次の東北の発展につながるイベントを企画したいと考えています。

 プロジェクト終了まで3年を切りましたが、最後まで誠実にやりとげその成果、勢いを次の10年プロジェクトに引き継いでいきたいと思います。引き続き、皆様のご指導、ご支援をお願い申し上げます。