卓話


ドローンと環境保全(SDGs)

2023年3月8日(水)

ドローン・ジャパン(株)
取締役会長 春原久徳氏


 ドローンビジネスは、2015年に首相官邸にドローンが落ちた事象を受け航空法の下に管轄されたことを契機に、空撮が好きな方々が使っていた産業から、業務活用が中心になっている産業です。

 ドローンは、ハードウェアだけではなく、サービス、ソフトウェア、それからドローン関連ビジネスという基盤が横に連なる形になっています。本日は、ドローンは業務活用のための道具であることと、産業は典型的な水平分業型のビジネス構造であることを認識いただければと思います。

 私は年1回、ドローンのビジネス調査報告書をインプレスから出版しています。ちょうど今年度の集計にかかっています。2021年度、日本国内のドローンビジネスの市場規模は2300億円程度でした。2022年度には3099億円に拡大し、2023年は3822億円程度、2027年には7933億円に達する見込みになっています。サービス市場が50%弱を占めており、サービスが回すビジネスです。

 実は少し残念なことですが、ウクライナの戦争でドローンが活躍したこともあり、防衛省予算でもかなりの金額がドローンに振られています。5年間で1兆円です。先ほどの民間の数字に防衛省関連の金額が加わります。

 国内のサービス別市場規模は、農薬散布にラジコンヘリを使ってきていたものがドローンに置き換わったことで農業が一番でしたが、様々なインフラのメンテナンスが重要になってきており、ドローンを活用して点検するサービスが伸びています。

   各分野の状況を見ると、スマート農業を進めてきた農林水産業では、SDGsの観点で2022年度からの農林水産省の「みどりの食料システム戦略」でドローン活用が検討され、農薬散布機や農業リモートセンシング機体の導入が進んでいます。また、全国の森林調査、特にCO2の吸収量に関する調査に予算がつき始めています。

 土木建築では、「i-construction」(測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICTを導入することにより建設生産システム全体の生産性向上を目指す取組み)における土木工事にドローン測量が定着しています。

 点検については、様々なエリアがあり、その一つがメガソーラーと言われる太陽光パネルで、発電所に関してはドローンによる点検が当たり前です。屋根の点検に関しても本格活用されています。

 公共インフラの点検では、特に橋梁等です。プラントの点検は、各業界団体、省庁が出しているガイドラインに準拠する形で部分的な実用化が進んでいます。

 構造物や屋内の点検に関しては技術検証が進み、実用検証の段階にようやく入ってきたところで、これから技術を進めなくてはいけない部分があります。

 それから、ニュースなどでドローンによる物流を目にする機会も多いと思います。技術的には安定的な航行が可能になってきていますが、どうしても物流の中心が過疎地や人の少ない山間地への輸送になるため、そのお金を誰が払うのかという部分で公共事業なのか利用者負担なのかも含めビジネスモデルの構築に苦慮しています。医薬品などの軽量で付加価値が高いものに関しては、ようやくビジネスモデルの構築に見通しが出てきました。

 2022年度もそろそろ終わります。今までは国家プロジェクトと呼ばれる予算がドローンの実証実験にかなり使われてきたのですが、2025年の大阪万博での事業化を目指す、空飛ぶ車、人が乗るドローン開発へとシフトしてきています。

 また、ドローンサービス会社間での売上格差が拡大しています。既に実用サービスを展開している分野や業種に関しては売上が上がっていますが、実証実験に関しては予算縮小で売上が急速に減る会社があるなど、明暗が出ています。

 さて、ドローンの技術概要について説明します。ドローンは、飛ばすこと自体が目的ではなく、業務で使う手段です。

 ドローンの役割は大きく分けて二つです。
 一つは作業の代替です。運搬、散布、採集などになります。
 もう一つは情報収集です。加工・分析するための情報収集、特に空からデジタルデータを取るところに強みがあります。

 よく、「ラジコンとドローンは何が違うのか」という質問を受けます。「フライトコントローラー」というマイコンが乗っているのがドローンで、そこがラジコンとの大きな違いです。ドローンに「前に進む」というコマンドを出せば自律的に姿勢を維持し前に進むことができます。ドローンの技術は、ハードウェア、ソフトウェアソリューションが複合された技術であり、特に自律制御においてはソフトウェアが非常に重要になっています。

 ソフトウェアの開発は、機体制御や機体管理、情報処理など様々な形で分かれています。基本機体制御のみならず、高度な制御、例えば衝突しないといったことや、ドローンはGPSを使うため外では安定して動きますが室内は安定させることが難しいため、室内航行の処理は、フライトコントローラーに加えコンパニオンコンピューターと言われる異なるマイコンを乗せ、その中で処理させることも進んでいます。そうした意味でソフトウェアが非常に重要になっています。

 メーカーではDJI社が、空撮機で世界7、8割のシェアを持つ世界ナンバーワンです。空撮機から産業機、そして固定翼やVTOL(垂直離着陸機)と言われる垂直離着陸ができ、かつ固定翼機のような高速巡航も可能なものにまで、フライトコントローラー、自律技術が応用されています。空だけではなく、陸上、水上、水中で同じ技術が使われています。

 2015年にアメリカなどでは大学にドローン学科ができ、卒業すると初任給が年間3000万円、4000万円という人材がどんどん出ていますが、日本はドローン学科を持った大学がまだ1校もなく、この5、6年の人材育成の差が大きく出ていることは憂慮すべきことです。

 ドローンの活用実践例をいくつかお話しします。
 まず、土木現場の3次元化です。ドローンが土木現場を行ったり来たりしながら情報を取ります。静止画を何百枚も撮ることによってXYのみならず、高さのデータも取れるため測量などに使われていますが、北米において活用が一番進んでいるのが土木進捗です。

 アメリカの建設業界は、3DRobotics社のSITESCANで土木工事の進捗を見ています。現場で1日の作業が終わるとドローンを5分ほど飛ばして撮影することで進捗を理解することができ、例えば、専門工、セメントの人たちがいつ入ればいいのか、建機をいつどのように配置するかを管理することで、費用の削減につなげています。

 もう一つ、農地上でもデータを収集することによって農作物の生育状況を把握し、肥料の与え方などを効率的に行い高品質な農作物の生産ができるように使います。

 最後に、ドローンと環境保全の結びつきについてです。SDGsとの関連で重要なことは二つ、一つは、現在の状況の把握で、もう一つは、エネルギー利用の削減です。

 現在の状況把握では、例えば、先ほどお話ししたような森林調査です。日本は森林の多い国ですが、残念ながら戦後の施策の中で段々と木が死にかけています。二酸化炭素の吸収量が少なくならないよう木をサイクルさせるために、日本中の様々な木がどのぐらい生きているか、活力があるのかも含めた森林調査が行われています。

 自然利用エネルギーでは、風力、特に海上風力が注目を浴びています。これも建設の前にどのぐらい本当に風が吹くのかを調査する必要があり、ドローンには現況の把握、実態のデータ取得の役割があります。

 エネルギー利用の削減では、サプライチェーンマネジメント(SCM)で見れば、これまで10でやっていたのを9でやるようにすれば10%エネルギーの削減になるわけです。例えば、建設土木では30日で実施していたものを27日でできるようになれば、3日間はエネルギーを使わなくて済みます。

 農業も流通段階での廃棄が30〜40%とかなりの量があるという調査があるため、きちんとしたデータを取ることが重要になっています。特に今アメリカなどで強まっているのは、ウクライナ戦争の影響で小麦や飼料用のトウモロコシ不足があるため、食料加工会社やレストラン、スーパーが農地の収量と品質と収穫日のデータを取り、SCMできちんと計画を立てて調達し食品ロスを削減しようとしています。実は日本はそのデータを取得する競争からも少し外れてしまっており、円安もあり買い負けをしています。

 このように、ドローンを、データを取り予測と実態を結びつける道具としてエネルギー利用の削減にうまく役立てていくことが重要です。ドローンについては物を運んだりするイメージが強かったと思いますが、実は情報産業の先端にある道具で、どのように活用するかにテーマが移ってきていることを理解していただければと思います。


   ※2023年3月8日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。