卓話


リモートワークについてのあれこれ

2021年3月10日(水)

 新型コロナウイルスの影響のひとつとして、企業のリモートワーク導入が進んでいる。正確にはテレワークと呼ぶべきとのことらしいが、すでに「リモワ」が市民権を得ているのでここではリモートワーク、リモワと呼ぶこともありとしたい。さて、私が経営する会社はいわゆるIT企業であり、コロナ前からリモワ環境は整備されていて活用率は社員数の10-20%程度であった。コロナの足音が聞こえつつあった昨年2月から社員の安心安全を第一に、いち早くグループ全社員約350名に対して原則出社禁止とした。その後、現場判断を戻したが現在もリモワ中心のままでオフィスはガラガラの状態が続いている。IT企業ゆえの特殊性があるのではないかと思い、世間でのリモワの状況はどうなっているのかについて調べてみた。

 リモワ・テレワークの状況については様々な実態調査があるが、パーソル総合研究所がこの1年間定期的にワーカー1万人規模に対して行っている「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」の直近、第4回調査によると、テレワーク実施率の全国平均は、昨年3月前半の13.2%に対して4月前半に27.9%に増え5月末では25.7%、そして今般の緊急事態再発令後においても24.7%とさほど変化はしておらず、この間各企業の導入環境整備に必要な時間があったと思われるが導入は増えていない。ただし企業の社員数との相関は明確にあり、100人未満の企業が13.1%なのに対して1,000人未満で22.5%、10,000人未満で34.2%、10,000人超で45%と導入率は増加する。業種、業態、職種などテレワークへの向き不向きはあろうが、結果としておおむね平均25%のテレワーク導入状況に落ち着いている。個人的には新型コロナウイルスの感染拡大や、準備に必要な時間の経過、そして実現を支えるICTツール・サービスの登場などにより、テレワーク導入率がもっと増えていってもおかしくないと思うのだが、現実はそうなっていない。一方、現在テレワークを経験している人たちのコロナ収束後の継続希望率は78.6%と4月調査の53.2%、5月調査の69.4%に続き上昇し続けている。そして男女ともに30代が最も継続希望率が高く、また女性の方が男性よりも高い。やはり育児や家事との両立のしやすさは満足度につながっている。

 ワーカーにとってテレワークのメリットは安全性の担保はもちろん、自分にとって働きやすいライフワークバランスの実現、通勤時間など無駄なことに時間をかけないことによる生産性の向上など70%の人々がメリットと感じている。一方で不安に感じていることとしては、人間関係構築や相手の気持ちのわかりにくさを筆頭に、上司や会社から公正・公平な評価がされるか、仕事をさぼっていると思われないかなどが30-40%と上位に現れている。

 ただし、おおむねどの指標も1年前の数値に比べると改善傾向にありこの間の企業、ワーカー双方の工夫やテレワーク慣れなどにより解決される方向にあるが、唯一「労働時間が長くなりがちだ」だけは上昇している。そしてワクチンが普及した後の対応についての企業側の回答は、「原則全員出社に戻す予定」が30%強、「未定」が40%強とのことであるが、一度経験をしてしまった以上簡単にはすべてをもとに戻すことはできないし、得策でもないと考える。

 個人的には、社内外問わず、対面の方が情報量も多く人間関係構築や、不確実で答えの無い状況下でアイデアを創出し進化していくためには「良い意味で無駄なこと」が必ず必要と思っている。テレワーク中心ではなくリアルワークを中心にテレワークの良さを組み合わせることで、企業、ワーカーともに合理的にも精神的にも充足を高める工夫を進めていきたい。些細なことではあるが、弊社の現場において、テレワーク環境で成果をあげているチームの共通項は、直接業務に関係の無いコミュニケーションの機会に結構な時間を定期的にとっているという点である。例えばテレワーク朝会や縦横斜めのメンターコミュニケーションなどすぐ工夫ができることがたくさんあると感じている。

 またテレワークの普及によって今後は、米国社会学者のレイ・オルデンバーグが提唱した、「サードプレイス」という概念も重要になる。ファーストプレイスが自宅、セカンドプレイスがオフィス、そして居心地の良い第3の場所の必要性である。自宅に近いシェアオフィスやワークとバケーションを組み合わせたワーケーションなどである。例えばスターバックスは回転率を優先するのではなく、あえて客が長時間滞在したいと思うようなサービスを提供しサードプレイスとしてのくつろぎ空間をコンセプトに成功を収めている。優秀な人にジョインしてもらいやすく、パフォーマンスを高めるワーク環境構築やカルチャーの醸成は、今後ますます重要になっていくだろう。