卓話


青少年奉仕月間例会
東京ガールズコレクションを支えるブランドビジネスの仕組み

2018年5月9日(水)

(株)W TOKYO
代表取締役社長 村上範義氏


 東京ガールズコレクション(以下、TGC)という若年層向けのファッションショーでは日本で最大規模のフェスティバル、そして、そのネットワーキングを生かしたガールズマーケティング、インフルエンサーマーケティング等を行っています。この経済活動を通じて、女性が輝く社会を創造したいというミッションを持っています。

 TGCは2005年度に産声を上げました。従来のファッションショーはパリコレクション、ミラノコレクションなどに代表される、世界的ファッションデザイナーやモデルによるものが主流です。TGCは従来とは全く異なり、発表しているのはリアルクローズ(現実の生活で着られる実質的な服)です。若い女性なら誰でも知っている、テレビや雑誌で活躍している人気モデル達が、すべて手に届く旬のブランドの衣装を着て登場する。延べ約3万人の来場者が熱狂して見たものは翌日、百貨店や109、ルミネ、スマートフォンを通じてすぐ手に入れられる。販売促進に直結している新しい形です。

 ショーには、安室奈美恵さん、矢沢永吉さんなど単独コンサートしか開催しないような方にも参画していただき、エンターテイメントにすることによって発信力を強めています。さらには写真家、フラワーアーティスト、スタイリストなど業界のトップクリエイターも一緒になってコンテンツを作ることで、日本中のあらゆるメディアに取り扱ってもらえます。

 そして、単純なファッションショーではなく、「アクセラレートモデル」(加速化するチェーン効果を創出するビジネスモデル)、アクセラレート(加速化)するバリューチェーン(価値連鎖)として金融業界が注目するようなビジネスモデルを意識して作っています。

 現在マーケティングでは、人に対する情報のあり方が一気に変わり、人の可処分所得を取るマーケティングから可処分時間を取りに行くものに様変わりしています。旧来からあるテレビや雑誌という強いマスメディアに対し、今はスマートフォンが普及し、特に若年層女性はそれに割く時間がどんどん増えています。その中で私達はテレビや雑誌はもちろん、スマートフォンの中にいかに企業やコンテンツの情報を差し込んでいくかを意識しています。

 TGCの来場者は一日で延べ約3万人。それをLINEというアプリで生中継したものを延べ約140万人の若い女性が生で視聴します。テレビ、雑誌などのメディアで約50億円のパブリシティ効果があり、一日で約880名のメディアが来て、出演者・来場者・生中継視聴者、延べ約140万人が一斉にTwitterをはじめとするSNSで発信・拡散し、TGCについての拡散は一億回を超える状況になっています。その様子は日経MJ新聞の朝刊一面になりました。TGCを「究極の実演販売」「圧倒的な今ほしいをかなえるイベント」と分析しています。

 私達が意識してきたことは、人がメディアになっていく時代であることです。その時、日進月歩でツールは変わります。ある時はmixiというSNS、ある時はブログ等で情報を拡散する。今ではTwitter、Instagramと海外から入ってきたSNSによって人が情報を流す。私達はリアルイベントであるファッションショーを作ることで人を押さえ、10年経っても日本でナンバーワンのイベントであることで、ツールが変わっても、お客様に情報を発信できるシステムを構築してきました。

 弊社の事業領域にはまず開発があります。TGCというフェスティバルを作るため日本中のモデル、ヘアメイク、スタイリスト、ブランドとのコミュニケーションがあり、共にリサーチ、商品開発、キャスティング等を行い、企業の商品やサービスをコンテンツ化して、本番を迎えます。そこで発信されたものをメディアに一気に拡散する。ポイントになるのがイベントです。TGCというブランドあるいはコラボレーションした商品を発表し、そのコンテンツがSNSやwebニュースやテレビPR、スマートフォンに流れていく。webの世界は無限であり、情報をインタラクティブに人々が拾っていける。その中で優位性のあるものは最新性か独自性があるものであり、圧倒的にリアルイベントが有利になります。TGCが枕詞になり、商品、プロデュースされた企画がSNSで一気に広まっていく。このようなプログラムになっています。

 今は来場者3万人全員がSNSを行っているため、お客様である彼女達自身が同じ学校の女の子達に「ここにいたことがうれしい」と情報を発信して、それが一気に何十人、何百人に伝わり、一日で一億回、大変拡散力のあるイベントになってきました。

 私達はこのTGCを、単なるイベントと情報の拡散ではなく、ブランド戦略として捉えてきました。これは私達の哲学です。華やかなショー一日に約3億円の予算をかけています。ガールズマーケットでこれほどの舞台を作る企業はありません。ベンチャーであるがゆえに選択と集中でガールズマーケットに特化し、ナンバーワンの舞台を用意し、商品、コンテンツが一気に拡散していくガールズマーケティングナンバーワンのブランドを構築しました。私達はこれをIP(知的財産)コンテンツ化し、TGC×100のビジネスモデルを構築しようとしています。

 地方創生、復興支援、クールジャパン、文化庁の「Beyond2020」、東京都の東京150周年記念事業等、TGCのIP事業としては、通販等です。従来、イベント事業のマネダイズ(ネット上の無料サービスから収益をあげる方法)は足し算のビジネスだったのですが、フローとストックの中で小さくても利益だけを積み上げるビジネスを行っています。 その中で今大きく展開しているのが地方創生プロジェクトです。地域の魅力や財産をコンテンツ化して全国に発信するものになっています。現在、日本中の女性の情報格差はありません。しかし、格差があるのが体験です。TGCの圧倒的熱狂は一億の拡散があっても東京でしか体感できません。私達は地方に行けば行くほど体験がないところをビジネスチャンスと捉えました。

 第一弾は北九州でした。通常エンターテイメントのブランドビジネスはほとんど博多、福岡市をターゲットにします。博多はスモール東京でエンターテイメントが数多くあるのに対し、北九州は、工業は独自の発展を遂げ同等の経済規模があるものの、エンターテイメントが少なく、迷わず北九州市を選びました。TGCの開催を発表すると、すぐに北九州の女の子がSNSで反応し、「TGCは博多ではなく北九州を選んだ、北九州万歳」と一日で約6000ツィートされました。

 北九州では、北九州の町に入り込み、北九州の百貨店や駅ビルを総合プロデュースし、発信するものは北九州の街ですべて買える物です。街中に「TGC KITAKYUSHU」のポスターが貼られ、会場に行く女の子の多くが出店ブランドの服を着て来ます。さらには伝統産業や名産品をコンテンツ化してモデルがPRする、県内企業とTGCがコラボレーションして商品を発信して全国で販売する、さらには地元の大型商業施設はじめ商店街や百貨店との連携、インバウンド施策も行います。さらにそれがSNSで広がり、LINEを使って100万人が北九州のコンテンツを見た。市長や知事にも目に涙を浮かべて喜んで頂きました。ホテルや飲食店、衣料をはじめ地域に多大な貢献度があり、パブリシティ等も含め約17億円の経済効果が出ました。官民一体となってこのプログラムが成功し、北九州市は、今年四年目の開催を予定しています。

 これが、富山、静岡、熊本でも開催が決まり、ソーシャルビジネスとして全国に広がっています。さらには今、クールジャパンがメインコンテンツとして、バンコクやジャカルタでも行っています。TGCが実際に現地で開催することによって、熱狂があり、JETROや経産省と組み、現地に進出したいブランドを束ねてエンターテイメントを使ってメディアを誘致しコンテンツをプロデュースするという役割をやらせてもらっています。

 社会にとって意味のある活動をすることが自分達にとっても価値のあることになると考え、国連との取り組みも行っています。

 「女性が輝く社会を創造する」という安保理決議を起案した国連永久大使のアンワルル・K・チャウドリー氏がTGCに来た時、「このファッションショーは世界にまったくない形である。このプログラムをうまく使って国連のプログラムをうまく発信してもらえないか」と言われました。

 2015年に国連で「持続的な開発目標」(SDGs)が制定されました。なかなか若い女性に伝えることができないというので、私達も四苦八苦し、17の目標をエンターテイメントすることを考え動画を制作しました。

 チャウドリー氏よりとても新しい先進的取り組みだと評価をいただき、5月31日に国連NY本部に招致され、SDGsの最もおもしろい伝え方をした日本の企業として、世界文化多様性デーの記念イベントで紹介していただくことになりました。こうしたことも、私達のブランドビジネスを強めていく一つの戦略でもあり、この日は私達のパートナーである福島県知事や鯖江市長、静岡市長にTGCによる地方創生、SDGsの推進について発表していただくことになっています。


     ※2018年5月9日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。