卓話


イニシエイションスピーチ

2011年4月27日(水)の例会の卓話です。

入交太郎君

石灰の話

            入交太郎グループ本社(株)
            代表取締役社長  入交太郎 君

 私の職業分類は石灰製造となっていますので、皆様に身近な部分の石灰の用途を織り交ぜながら進めてまいります。

 石灰と言いますと、先ず身近に思い浮かぶのは学校の校庭にラインを引くための白い粉です。最近では宮崎県の口蹄疫や鳥インフルエンザの対応で、白い粉が大量に撒かれています。この白い粉は「消石灰」といいます。

 石灰石を重油やコークスを使って高温で焼くと、生石灰・酸化カルシウムができます。この「生石灰」に水を加えると、水酸化カルシウムとなって白い粉「消石灰」ができあがります。この生石灰と消石灰を総称して石灰と呼び、原料である石灰石と区別しています。石灰石は、化学的には炭酸カルシウムであり、永い地球の歴史の中でサンゴ礁に非常に強い圧力が加わって、密度が高く硬くなったものと考えて間違いないと思います。

 原料である石灰石は、日本国内では約300の鉱山で2億トンが採掘されており、輸入に頼る必要のない、国内で自給自足のできる唯一の地下資源といわれています。国内の石灰石は混ざり物が少なく、品質は世界的に見ても最高水準にあります。栃木・岐阜・山口・大分と高知に大きな鉱山があり、私どもの石灰石鉱山は高知県にあります。

 地元の資料によりますと、石灰が製造され始めたのは江戸時代の初め頃のようです。当時は貝殻を原料とし焼いたもので、「貝灰」といわれていたようです。

 その後200年余り経って、石灰石を焼いて製造を行なうようになったようです。

 私どもの先祖が操業を開始したのが1819年で、足掛け192年になります。これだけの長い年月、世の中が移り変わっても石灰製造という仕事を続けてこられたのは、良質の石灰石鉱山に恵まれたことと、石灰の用途が非常に多岐に亘るという点に助けられたのだろうと思います。

 初期の用途は消毒はもちろんですが、高知県の石灰は白色度が高く、土佐漆喰として全国に出回ったようです。また、当時は農薬のベースも石灰でした。

 現在の石灰の主な用途は鉄鋼用・化学工業用・建築建設用・農業用等です。

 鉄鋼生産では、石灰石と生石灰が2過程で使われることから、毎年の鉄鋼生産量は石灰業界全体の一番の関心事です。石灰石は副原料として使われ、生石灰は鉄鉱石に含まれる不純物とくっつき、スラグというカスになって鉄と分離する働きをしています。化学工業では、石灰が原料となるソーダ灰あるいは苛性ソーダが、ガラス・洗剤・化学繊維・合成ゴム・シリコン・工業薬品等の製造工程で使われています。自動車で考えてみると、ボディーやバンパーの鉄・ウィンドウガラス・ゴムのタイヤからパネル部分のプラスチックやシートに至るまで、多くの部分に石灰が使用されているのです。

 より身近なところで具体例をご紹介します。砂糖の精製過程では不純物を除去するために使用されています。また、こんにゃくを固める凝固剤として消石灰が使われます。しらたきの近くでお肉を煮ると固くなるのは、石灰から溶け出したアルカリ分のためです。最後にもうひとつ、お弁当の白いごはんの真ん中にのっているカリカリ梅です。梅が軟らかくなるのを防ぎカリカリ感を保つのも石灰の働きです。

 このように多様な用途を持つ石灰ですが、実は非常に安価なもので、大雑把に言うと石灰石は1kg2円、消石灰・生石灰になってもその10倍程度です。安価でしかもその性質から使い勝手の良い物質である石灰。社会の「縁の下の力持ち」としての製品ということで、記憶に留めて頂ければ幸いです。