卓話


スペシャルオリンピックスとは〜共生社会実現への架け橋として〜

2018年7月11日(水)

(公財)スペシャルオリンピックス日本
理事長 有森裕子氏


 「スペシャルオリンピックス」は、知的障害がある方々すべてをアスリートの対象としている組織になります。パラリンピックのアスリートの多くは、身体に障害のある方々です。聴覚障害者を対象にしたものとしてはデフリンピックがあります。そして、スペシャルオリンピックスは、知的障害のあるアスリート達が日常的なスポーツプログラムへの参加とその成果発表の場である競技会を経験する機会を提供する国際的なスポーツ組織です。日常的に行っているため、「オリンピックス」と複数形の「s」がついていると覚えていただければと思います。

 知的障害者を取り巻く環境は、時代とともに随分変化してきています。スペシャルオリンピックスはアメリカで始まりました。立ち上がった頃の1960〜70年代は、まだまだ知的障害のある方は施設等での生活を強いられ、一般の方々との接点がないために無理解、偏見からくる固定概念で見られる存在でした。80年代〜90年代になると施設の生活から解放はされましたが、まだまだ社会の中に障害のない方と同じような生活や環境は得られないことが一番の問題で、社会的にまだ孤立した状況でした。

 現在は、特に2020年に東京にオリンピック、パラリンピックが来るという機会もあり、共生社会、インクルージョンといった言葉が身近になり、社会での受入れは少しずつ広がっていますが、まだまだ足りていません。

 スペシャルオリンピックスは1962年、アメリカの故ケネディ大統領の兄弟姉妹の一人が知的障害を持っていたことがきっかけとなり、妹であるユニス・ケネディ・シュライバー氏が知的障害のある人のためにデイキャンプを提供したことが始まりです。それが全米、全世界に広がりました。

 ユニスが一番の理念としたのが、知的障害者と共生し、彼らを自然に受け入れる社会作りを目指すことです。知的障害のある人はその障害のためにいろいろなことができないのではありません。知的障害に対する、社会、人々の無知、固定概念、偏見が彼らの能力を決めつけ、彼らにチャンスやきっかけが与えられていない現場が多かったのだと思います。そうではなく、私達と同じような機会さえあればいろいろなことができる存在だということを広く知ってもらう。ユニスはそうした信念を持って始めました。

 今年、スペシャルオリンピックスが創られて50周年という大きな節目を迎えます。日本は来年が25周年です。現在、世界170カ国で500万人以上の知的障害のあるアスリートがスポーツプログラムに参加し、可能性に向かって頑張っています。

 多少私の持論が入りますが、スペシャルオリンピックスが目指しているのは、知的障害のあるアスリートだけを対象にしているのではなく、「知的障害のある人達はできない」と思っている方々の概念を変化させ、いろいろなことに気づかせることに大きな意味があるのではないかと、この組織に関わってから感じています。そういったところがスペシャルですし、そういったことを多くの方々に知ってもらうことに大きな意味があると思っています。

 知的障害のある人たちが持つ可能性の大きさに気づくだけではなくて、すべての人に当たり前にいろいろな機会が与えられてきたことに気づいてみると、障害のない人にはまだ限られた人にしか機会が与えられていない社会の中で、機会、可能性はすべての人に与えられるべきだと気づいていただくために、日々のプログラムを頑張っています。

 とにかく人は障害の有無に関係なく、その人が持っている能力を生かせる場を持てることで輝き、多くの感動と喜びを得られ、そして、そのための機会を得る権利はすべての人にあるべきだと私自身は感じています。その意味でも、スペシャルオリンピックスが知的障害のある人たちの本来持っているであろう可能性を引き出し、そして、皆さんに気づいていただき、共に生きていく可能性を見いだしていただけたらと思っています。

 そして、今私たちが最も力を注いでいるプログラムが、「ユニファイドスポーツ」です。通常は知的障害のある人だけがチームを組んで対戦し、それを障害のない人達が応援します。「ユニファイドスポーツ」はそうではなく、障害のある人とない人が一緒にスポーツをすることを通じて、社会で一緒に生きていけるという可能性を見いだしてくプログラムです。

 知的障害のあるアスリートと、知的障害のないパートナーが共にチームを組みます。例えばチームスポーツのサッカーであれば11人中5人が健常者、6人が知的障害のあるアスリートというように、ほぼ同数のアスリートとパートナーがチームメイトとなります。ユニファイドスポーツのプログラムは3つのモデルに分かれていますので、アスリートとパートナーが同じ年齢、同じ程度の競技能力で行うものもありますし、そうでない場合はとにかく一緒にプレーします。競技性のあるユニファイドスポーツ、プレーヤーデベロップメント、レクリエーションという3つのモデルの中で、一緒にプレーヤーとしてスポーツを楽しみます。

 その効果は、すべての参加者にいろいろな気づきを生みます。いろいろな可能性を見いだせます。障害のない人は、知的障害のある人達に「こういうふうに言えば」「こういうふうに接すれば」こうできるとわかりますし、逆に障害のある人達も「こういう接し方をしてもらえば自分はこれができるんだ」と気づきます。パートナーである障害のない人、アスリート、携わるコーチ、そして、ファミリーがいろいろなことに気づきます。特にファミリーにおいてはこのプログラムを通した我が子の変化にいろいろな思いをされるそうです。すべての参加者にいい影響が生まれ、そして、それは最終的には地域、企業、さまざまなところにプラスに働く影響があるということです。

 ユニファイドにもサッカーの世界大会があり、この7月にシカゴで行われます。国内においても、全国大会を行っていますので、一度こちらを見て頂ければと思います。

−スペシャルオリンピックス日本主催の全国ユニファイドサッカー大会のビデオを上映−

 ぱっと映像を見て、誰がどの障害のある人かわからない程の動きとプレーだったと思います。彼らは教えてもらえばプレーができ、その時間とその機会さえいただければ、できないことはありません。このプログラムを支援していただいたコーチなども本当に驚いています。私達もそうですが、機会がもらえることで人間というのはこんなに変化できるということを見られるプログラムです。

 シカゴの大会には日本から福島のチームが参加することになっています。このチームは初めての海外遠征です。参加するにあたって国内のプロチームとパートナーを結んでいなければいけないということで、今回はJリーグの名古屋グランパス様に多大なご協力とご支援をいただいて、練習し、コーチもしていただきました。

 7月17日から試合が始まります。シカゴに来て頂くことは難しいかもしれませんが、ぜひ日本から多くのエネルギーを送っていただけたらと思いますので、よろしくお願いします。

 最後になりますけれども、私たちはグローバルパートナーとしてトヨタ自動車様にスポンサードをいただいています。そのトヨタ自動車様が作成した名古屋グランパスとのコラボの動画を見て頂きます。

−動画上映−

 多くの皆さまは2020年の東京オリンピック・パラリンピックを非常に楽しみに、そして盛り上げようとされていると思います。一つイメージしていただきたいのは、オリンピックもパラリンピックもプレーするアスリート達は健常であり、障害者です。しかし、それを応援し見に来るのはすべての方々です。そこには知的障害のある人、車いすを使っている人、高齢者、いろいろな方が見に来ます。そういった意味では私達スペシャルオリンピックスを知っていただくことで、オリンピック、パラリンピックの会場でも、すべての社会、すべての人に、いろいろなことに気づいてもらうことができる。そうした意味で私達スペシャルオリンピクスのなせる意義があるのかなと感じています。

 企業の方にもこれからもっともっと興味とご支援をいただき、スペシャルオリンピックスをさらに広めていき、このスポーツを通してなされていることが社会にとっても大事であり、それがまさに2020の人のレガシーになるのではないか、ということを皆様にお伝えして卓話を終わりたいと思います。


     ※2018年7月11日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです