卓話


イニシエイションスピーチ

2013年1月23日(水)の例会の卓話です。

関哲夫君(掲載していません)
宮田孝一君

ディーリングルームの心理学

蟷旭羹四Д侫ナンシャルグループ
取締役社長 宮田孝一 君

 私は,2000年の1月から2010年の3月まで,ディーリングルームに毎日出勤しておりました。その間一貫して,為替ですとか国債への投資ですとか,いわゆる市場・マーケットに関わって参りました。通常,市場部門には,若いうちからそういった分野で育ってきた人が多いのですが,私の場合,2000年に,経験のないまま,部長としてディーリングルームに出勤することになったわけです。

 最初は全く未体験の世界で戸惑うことも多かったのですが,部下からいろいろ教えてもらい,何とかこなしていく中で,ひとつには,部下を信頼し如何に任せるかということを学びましたし,一方,ふたつめには,先入観なくディーラーたちの生態に触れ,ある意味客観性を持って,ディーラーたちの心理の動きを観察することもできたと思います。

 本日は,こうした中,ディーラーたちの心理の動きから私が何を学んだかについてお話しいたします。

 ディーリングルームは,群集心理や行動経済学の巨大な実験場であります。極めて人間的な,いいかえれば,科学的でない判断が繰り返される場所であり,極めて非論理的な判断からの失敗が繰り返される場所でもあります。

 まず,ディーラーの特性から話を始めます。相場が同一方向に大きな流れをつくりやすい理由の説明でもあります。

 ディーラーたちは均質の教育を受けた,似たような考え方をしがちな人たちの集団です。そして,多くは若いうちからディーリングルームに配属され,そこで徒弟制度の中で違和感なく同質化していきます。

 また,彼らはマーケットの動きについての情報交換が好きです。自分が他人の持っている情報を取り洩れているのではないかとの恐怖感もあり,活発なコミュニケーションが繰り返されると,自分が発信した情報が,他者のコメントとして返ってきたりもします。その時には,実は発信源が自分であったとしても,他人のコメントとして返ってきますから,自分の見方に,より確信を深めることになります。

 こうして,群集心理が強く働くマーケットが出来上がります。そして,他のプレーヤーの行動からの影響を強く受けます。他者が儲かっているポジションを後追いで作りたくなります。これが重なるとバブルになります。

 人間が生来持っている心理特性が遺憾なく発揮されるのがバブルです。高名な投資家のジム・ロジャースはこう語っています。相場は,いつも同じサイクルを辿る。安いとき,割安を狙って一部の人が買いに来る。相場が上がり始めると,ファンダメンタルズ的によいとか,チャート的によいとか言って多くの人が買いにくる。次の段階になると,上がるから買うということになる。最後に魔法の段階になる。合理的価値を超えて買われ,終焉を迎える。その時には,それがどんな商品であっても,流動性はない。

 実際に多くの人が最後にはいやな経験をします。しかし,バブルは形を変えて繰り返されます。これにどう対処するかは非常に難しいと思います。あえて申し上げれば,如何に深追いしないで適当なところでゲームから降りられるか,自分の競争相手はもっと儲けるかもしれないと思っても,その恐怖感を押さえ込んで終えるか,相場に熱狂している自分を如何に冷静に観察できるかといったところだと思います。