卓話


Relations between Japan and France

2022年5月25日(水)

駐日フランス大使館
特命全権大使 フィリップ・セトン閣下


 フランスと日本との間には特別なパートナーシップが締結されており、コロナ禍においても広い範囲をカバーしながら、発展を続けてきました。

 今日は、フランスの経済の動きと二国間関係の展望についていくつかの側面に焦点を当ててお話します。

 まず貿易では、まだまだ発展の余地があります。フランスへの日本の輸出はわずか1%しか占めておらず、日本の輸入に占めるフランスの割合は1.5%に過ぎません。これに対し、中国は24%、そして米国は12%に上っています。

 貿易は、コロナ禍の影響を大きく受けました。特にフランスの輸出は、農産加工品など高付加価値の製品が多く、大打撃を受けました。

 しかし、少しずつ回復しています。2021年、フランスから日本への輸出は合計65億ユーロに上りました。2020年比15%増で、他国への輸出の増加を上回るペースです。現在、2014年から2018年の間の平均値に回復しました。

 特に、2021年下半期の加速が顕著です。原動力は、エアバスが日本市場で伸びたことと農産加工品も復活しました。2022年も回復を継続し、1-2月期で前年度比8%増となっています。

 フランスは、日・EU経済連携協定(EPA)締結の恩恵を受け続けています。特にワインやチーズなど乳製品で顕著です。日本ではフランス製品が常に人気で、この分野はフランスの貿易黒字の20%を占めています。

 一方、相互投資に関しては不均衡がある状態です。フランスから日本への投資は、日本からフランスへの投資の2倍に上ります。フランスは対日投資国の中ではストックで常に5位以内にいます。2019年にはヨーロッパの対日投資国の筆頭になりました。500以上ものフランス企業が日本に進出をしており、地域雇用に大きく貢献しています。それに比べて、残念ながらフランスへの日本の投資は対外投資の1%のみです。

 しかし、前向きな展開も見られます。日本は約150億ユーロの投資をフランスに行い、自動車メーカー、商社、エレクトロニクスを中心に670の企業が進出し、10万3000人以上もの雇用を生み出しています。

 フランスは、日本の投資家にとってますます魅力的な市場になっています。人口減少によって国内ではできなくなっている成長の原動力を海外に求めていることが一つの要因です。

 また、日本はフランス企業とのパートナーシップをさらに追求しています。多くの分野で日本企業とフランス企業の間の補完性があるからです。最近では、こうした協力が大企業だけでなく、あらゆる規模の企業に広がっていることです。日本の投資家には、フランスがヨーロッパ大陸でリーダーシップを発揮しており、特にBrexit以降、その傾向が強まっていると思っていただいています。

 さらに、日本の関係者は、数年前からなされているフランスの構造改革、特に税制や労働法だけではなく、駐在員の家族の生活や教育環境の改善などについても及んでいることを認識されていると思います。

 こうした5年来の改革政策の方針は変わっていません。再選された大統領は、「より持続可能で環境に配慮して、よりデジタルな成長を目指したい。それは、公正で、遠隔に位置する全ての領土の一体化に資するものだ」と 明確に主張しました。

 こうした状況の下、日仏関係を強化したい分野についてお話します。
第1点は、イノベーションです。フランス式のエコシステムとでも申しましょうか、近年、大きく成長しています。

 フランスでは、2013年のスタートアップ企業が1000社で、それが2022年には1万5000社になっています。うち25社がユニコーンと呼ばれる優秀企業です。2021年には12社が、2022年にはさらに4社増えています。

 スタートアップの資金調達額もとても大きく、2021年には116億ユーロ(2020年54億ユーロ)に達しています。ユニコーン全体の評価額は350億ユーロと言われています。国の支援も強力で、公的投資銀行のフランス開発投資銀行がユニコーンの約9割に投資しています。

 フランスのスタートアップは、ほとんどの分野に存在し、例えばSaaS、健康、フィンテック、また小売業のリテールテックなどが際立っています。

 もちろん産業面でも大きな存在感を示しています。新たな形の産業にも着手しており、フランス経済の立役者となっています。雇用は36万人以上、企業の工場開設の50%以上を占めるようになっています。

 このイノベーションは、技術面でも大きな発展があります。スタートアップが1年間に登録している特許件数は、開発を中心とする研究所に相当すると言われています。こうした形の企業の成長は、日本にとっても大きなビジネスチャンスになると考えています。 それは、特に日本が国際市場に開放的になっていることがあります。例えばソフトバンクは、複数のフランスのスタートアップ企業に既に投資しています。ITやAIを活用したテクノロジー、フランス企業が持つ特異性を活用するためです。

 同様に、「フレンチテック」というシステムに日本からも大きな関心を寄せていただいています。そうして誕生したのが日本の「J-Startup」であり、愛知県はフランスの巨大インキュベーターであるStation Fに強い関心を持ってくださっています。Station Fは世界最大のインキュベーターキャンパスで、愛知県はこれを参考に新しい体制を築いておられます。

 イノベーションは、金融分野でも大きな動きがあります。いくつかの大手金融機関を中心に行われていたブロックチェーンや量子情報学、AIなどによる新たな可能性が、企業のみならず個人投資家にも大きな恩恵を与えるようになりました。

 金融分野でのイノベーションは、さらなるパートナーシップ実現に大きな役割を果たすでしょう。特に日本では地方銀行などが広大なネットワークのデジタル化を加速させており、フランスへ大きな関心を寄せています。

 さらに、産業面でも大きなイノベーションがあります。フランス政府は、経済復興策を打ち出し、総額1000億ユーロのうち400億ユーロを産業に投入しています。コロナ禍からの立て直しを意味し、近代化、イノベーション、拠点の移転、脱炭素という4本柱を軸としています。86%に当たる中小企業9000社がこの恩恵に浴し、その結果、23万人の雇用維持・創出につながりました。

 最も大きいのは、フランスには生産税があり、これの引き下げに成功し、国の競争力強化に貢献していることです。

 経済復興策の中心はやはりイノベーションであり、2021年から2025年にかけて200億ユーロ以上が動員されることになっています。

 産業面でも、例えばデジタルはもちろんのことグリーンエコノミー、モビリティ、高齢者、さらにはスポーツや文化を中心としたものなどに大きな変化がもたらされるようになり、日本で「コネクテッドインダストリーズ」と呼ばれている分野でも大きな進化があります。

 改めて愛知県についてお話をさせていただくと、愛知県知事が先週フランスにおいでになり、フランスで開催されているグローバルインダストリーズという見本市を2024年に愛知県で行うことを発表されました。

 多くの分野において、日本とフランスの協力、企業も提携する機会になると思います。これは決して大企業だけではなく、中小企業にとっても同様に提携が可能になると思います。フランスでは中小企業の国際化が進んでいます。

 最後に、脱炭素について触れさせていただきます。この分野も日本とフランスとの今後の可能性が大いにあると思っています。

 脱炭素を目指した経済のために、フランスは大きな努力を費やしています。先ほどの経済復興策の3分の1の予算、300億ユーロを、グリーン成長、即ち、より環境に優しく持続可能な経済への移行、エネルギーの効率改善、クリーンモビリティや水素社会の開発に充てていきます。

 2021年10月、大統領は新たな「フランス2030」計画を発表しました。約300億ユーロを小型モジュール原子炉、再生可能エネルギーの産業化とグリーン水素の生産の加速、そして工業全体の脱炭素化に向けるとしています。

 こうしたエネルギー、再生可能エネルギーに関しては、フランス企業も積極的に事業展開の経験を積んでいます。パイロットケースで、風力やソーラーなどの実験を日本で行っており、エネルギーの消費の効率化などについても様々なソリューションを展開し紹介しています。

 フランスはこれからも日本の方々を魅了する多くの分野を有しています。例えばフランス式のライフスタイル、文化、風光明媚な場所、食文化、そしてワインなどがあり、コロナ禍が落ち着いたら、日本の方々に以前のようにフランスを訪れていただきたいと思っています。

 しかし、フランスは決してそれだけではありません。イノベーション、ハイテクにも特化し、生産性も高いことをあえて強調させていただきたいですし、環境もビジネスに非常に優しいということも申し上げておきます。

 EYという名のコンサルティング会社が2021年に発表した海外直接投資信頼度指数調査 によると、フランスは2年続けてEUの中で首位となりました。直接投資にとって最も魅力的な地であり、R&Dや企業誘致についても積極的に受け入れていると評価されています。特に航空産業や、再生可能エネルギー、グリーンテクノロジー等の分野です。

 大使としては、ぜひ皆様方に勇気を持って、今後はフランスを信じていただきたいと思っております。


※本文はフィリップ・セトン大使のフランス語のスピーチを担当者が翻訳し編集しました。