卓話


スマートシティプロジェクト
−企業連携によるトータルソリューションの展開に向けて

2012年3月21日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

イーソリューションズ
代表取締役社長 佐々木経世氏

 日本にはすばらしい技術があるにもかかわらず,なぜか活かされず,もったいない状況にあるという現状をもう少し見直してみたいと思っています。今どういう問題を感じているかをお話しし,企業連携がどんな解決策をもっているかを知っていただければ幸いだと思います。

■ イーソリューションズについて
 私たちイーソリューションズは, 事業プロデュースを通じて国家的課題を解決する、社会システムのデザインを行なっています。事業プロデュースには基準にしている軸が三つあります。第一に,我々は社会的重要テーマを考えています。例えば,環境・安全・健康といった重要性の高いテーマを対象にします。

 第二に,ビジネスのフレームワークを活用して事業を継続し拡大します。第三に「未来デザイン」を設定し,未来に向けて事業及び社会システムをデザイン/イノベーションしています。

 コンサルティングはクライアントと1対1で対応しますが,事業プロデュースは多くの企業の方々にお手伝いいただき,連携しながら事業を展開していきます。これはちょうどオーケストラに似ていると思います。事業シナリオを書くところが作曲,プロジェクトマネジメントは指揮にあたると言えます。

 これまでの弊社の取組みについてご紹介いたします。

 ■ チーム・マイナス6%
 環境省が2004年度に策定し,2005年度に実施した「クールビズ」に代表される「チームマイナス6%」の計画は私が作成しました。最初は200社程度でしたが,2009年度には35,000社以上の企業が参加している歴史的な国民啓発運動として現在も続いています。

 「クールビズ」では,国が集中キャンペーンをやりましたが,多くの企業も同じタイミングで,同じメッセージを発信しました。国民にも非常に分かりやすい啓発運動になりました。最初,環境省は取り組む項目をたくさん要望したのですが,それを6つの取組みにしぼって,しかも初年度は取組み1の「温度調節」だけしました。テーマを精選する発想はスマートシティに活かせると思います。

■ 高齢化社会
 日本は,2030年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。我々は、高齢化社会にはどんな課題があるのか,関係省庁や関係機関・団体,産業界,生活者で分析を始めています。

 一方,国立長寿医療研究センターの1次調査によると,2002年時点の高齢者の歩行速度は,10年前に比べて11歳ほど若返っているというデータが出ています。

 そこで,超高齢化社会に対する危機意識にも新しい高齢者像があって,そのうえで制度を見直したり,就労関係などを見直して,現役意識の向上や新しいビジネスの創出が出来るのではないかということも考えています。

■ 脳梗塞の細胞治療 
 日本では毎年30万人程の人が「脳梗塞」を発症しており, 発症者の40%は寝たきりになり,33%の人に後遺症が残ります。

 私たちは「細胞治療」という新しい技術を臨床で研究しています。「細胞治療」とは、骨髄幹細胞を培養して1万倍に増やし,それを点滴で注入する治療法のことです。梗塞巣の縮小が認められ,後遺症も改善されています。この話も1社や2社では実現できないことで,いまアメリカでも展開しています。

■ スマートシティ
 千葉県柏市の柏の葉キャンパスにフューチャー・デザイン・センター(FDC)があります。元東大総長の小宮山宏先生が,国家的課題を解決し,未来をデザインしようという目的で設立された一般社団法人です。私はセンター長に任命され,日本の知力・技術力を生かし,世界中から優れた知・技術を結集して,世界へ「先進モデル」を発信していこうとしています。

■「日本の競争力」と「世界の戦い方」
 スマートシティに代表される市場は,今後20年間の累計で3,100〜4,000兆円になるといわれています。そこで代表される技術,例えば太陽電池とか電気自動車の特許の数を見てみると,実は日本が世界の7割近くを持っているなど,日本にはずば抜けている技術がいっぱいあります。

 しかしながら,携帯電話に代表されるような「もったいないこと」が起きています。1999年に世界で22.3%あった日本の生産台数は,2009年になってもほとんど伸びていません。逆に世界でのシェアは6%に落ちています。

 DRAMメモリ,液晶パネル,DVDプレーヤー,カーナビといった精密機器も,5年,10年,15年の間にシェアを落としています。「もったいないこと」だと思います。

 現在優秀だといわれている環境・エネルギー分野も同じような推移を辿るのではないかと懸念されます。

■ スマートシティの6つの構成要素
 SCPでは,スマートシティの構成要素として 1)地域EMS,2)スマートビル,3)スマートハウス,4)分散電源システム,5)次世代自動車インフラ,6)シミュレーション の6つを考えています。各地域のニーズ・制約条件を踏まえ、これら6つの構成要素を基にソリューションを構築し, スマートシティの展開における課題解決に取り組んでいます。それでは,スマートシティの展開における課題をご紹介します。

■ スマートシティの展開における課題 
・課題.法璽此制約条件の汲み取り不足
 SCPでは, スマートシティの世界展開には現状少なくとも計25の機能について網羅的に対応しつつ、各機能の繋がりを検討していく必要があると考えています。
 しかし,日本の実証実験である「八戸市マイクログリッドプロジェクト」「太田市集中連係型太陽光発電システム」などを我々のフレームワークに当てはめてみると, 必要な機能の一部のみを対象としていることが分かります。かつ,横のつながりがあるかどうか不明です。

 横浜市・豊田市・けいはんな・北九州での次世代エネルギー・社会システムの実証実験では広範囲に実証が進められているものの、各機能、更に実証同士をつなぎ、他の企業による活用を考えることが重要です。

・課題機能しない企業連携
 企業の連携はコンソーシアムでやればうまくいくといわれますが,各社は知的財産を守るので本当の連携が進みません。総論賛成でも各論反対,駄目なことは他人のせいにすることがあります。

・課題H鷂率なマーケティング
 昨今スマートシティに関する情報が氾濫してきており,各企業が個別に広告するのでは,効率良くマーケティング効果を得ることは困難です。これからは, 各企業が持つメッセージを統一し, タイミングを同期させた上で発信することが必要になります。

・課題ど現牴宿埖
 今日本で実施されている実証実験は, それぞれが異なる技術, ビジネス方式です。このままでは他国への展開の際, 日本勢同士で価格競争を引き起こしてしまい,私たちが40年〜50年かかって培った技術を,彼らは数年のプロセスで獲得する可能性があります。

・課題ソ蝶笋蠅糧注形態 
 街づくりを進める際に, 発注者側の形態にも課題が考えられます。例えば, 自治体などの各分野の担当部署が個別に企業へ発注すれば, 街の構成要素や技術がそれぞれ部分最適に進んでしまう恐れがあります。

・課題Ε侫.ぅ淵鵐校抉腑好ームの不足
 日本ではファイナンス支援のスキームが不足しており, 実証実験レベルで留まっているのが現状です。
 
 一方世界では実際のスマートシティ構想を進めて街を造っています。その差は早く埋めなければなりません。
 
 具体的にご紹介する時間がなく申し訳ありませんが,ご説明したそれぞれの課題には、ー匆颯轡好謄牴修離侫譟璽爛錙璽、企業連携による全体最適なソリューション、6ζ吋沺璽吋謄ング、て本標準モデルの構築、ゥ錺鵐好肇奪彗寮の構築、Ε愁螢紂璽轡腑鹹鷆,肇侫.鵐匹料箸濆腓錣察△箸いΣ魴荳を考えています。

 現在,私たちのところには世界各国から問い合わせや引き合いがきています。日本の諸先輩が造ってくださったすばらしい技術力やノウハウを,日本の競争国力に変えていきたいと考えています。