卓話


イニシエーションスピーチ

2006年9月13日(水)の例会の卓話です。

辰野守彦君、 山田公平君

21世紀における弁護士の変化

芝綜合法律事務所
パートナー
辰野 守彦君


 日本における弁護士の職業には、20世紀から21世紀にかけて劇的な変化が生じております。本日は、幾つかの観点から、客観的な変化に絞ってお話しさせていただきます。

1 数の変化
 司法試験法が施行された1949年から1990年までの間、司法試験の合格者数が500人を大きく上回ることはなく、その中で、弁護士の職業を選択する人数は、判事・検事をやめて登録される人数を含め、毎年400人程度で推移してまいりました。 91年から徐々に合格人数が引き上げられ、2000年までに合格者が約1000人に達し、10年かけて合格者数が概ね倍増したことになりました。それでも、弁護士の数の不足が指摘され、本年は、約2000名、2010年の時点で合格者数3000名が想定されています。20年前の時点(1990年)の6倍ということになります。

 少し前のデータですが、人口10万人当たりの法曹人口が米国で365人、フランスで47人に対し日本が19人で、10年間でフランス並みの法曹人口比率にするには、約7500名の合格者が必要という試算があります。 したがって国際的に見て、3000人が多いか少ないかといえば、決して多すぎない、といわざるをえません。

 一方、日本の場合、弁理士、司法書士、税理士といった諸資格があり、その他の「法律専門家」の潜在数が多く、単純には比較できません。

 アメリカでは、弁護士を敵役にしたジョークが多数ありますが、敵役にされる理由の一つは弁護士過剰による訴訟社会への嫌悪感です。
 アメリカで弁護士が敵役となるもう一つの理由は、自ら高額な弁護士費用を負担させられた経験からくるものだといわれております。
 
2 法曹養成システムの変化
 二つ目に指摘すべき変化は、法曹養成のシステムにおいて、法科大学院の制度が導入されたことです。法科大学院制度は、米国のロースクールに倣ったシステムで、大学の法学部卒業者には2年、その他の者には3年の履修により卒業したものに新司法試験の受験資格を与え、合格者に1年の研修期間を経て法曹資格を与えることにしております。法科大学院の数は、今年の4月時点で74校、入学定員数が5825名で、その卒業生と前年、前々年の不合格者が再受験することになり、3000人でも狭き門(合格率3割程度)となります。

 法科大学院制度実施の目的の一つは、数の問題ですが、もう一つの理由として受験技術一辺倒の司法試験によってはバランスのとれた法曹が育たないという点が指摘されました。

3 質の変化
\賁膕宗Юい涼罎両霾麥未増え、弁護士の人員数が増えてきますと、当然、専門分化が進んでまいります。最初に、なぜ昔は年間400人でやってこられたのか、という疑問を呈しましたが、その理由は、弁護士の中での専門分化が進んでおらず、いかなる法律問題をも受け付けるという対応をしており、少人数で耐えられたのではないかと考えます。

∨[Щ務所の大規模化:2,30年前に遡りますと、法律事務所の多くが一人ないし数人規模の小規模なものでした。100人を優に超え、300人、400人規模の例が現れた現在とは昔日の観があります。

6搬屬梁人猷宗3000人規模となった場合、企業内、官公庁、NPO法人その他の多様な領域において法曹資格者が働く場面は広がって来るものと期待しております。立法府である国会における法曹有資格者は、他国に比して圧倒的に低いことも指摘されています。

 この多様な分野への職域の拡大及びこれに伴う社会奉仕こそが21世紀の日本の弁護士に真に期待された責務であると考えます。

若者に必要なもの」

(財)日本YMCA同盟 
総主事・常務理事 
山田 公平君

 青少年育成は、いつの時代にも大変重要な課題であります。「一年を計る者は花を育て、10年を計る者は樹を育て、100年を計る者は人を育てる」という言葉に出会ったことが有りますが、この人を育てることがわたしたちロータリーにとってもっとも大切な役割ではないかと感じています。

 世界で最初のYMCAは1844年ロンドンで興りました。青年たちが仲間たちに結束を呼びかけ、自分たちのエネルギーを無駄にしないで自分の成長と社会のために向けていこうという青年運動として興されました。現在では世界124の国と地域に存在し、会員数は世界で4500万人となっています。日本には1880年(明治13年)に紹介され、今日では全国30の都道府県に存在し、会員は10万人となっています。


 日本にYMCAが紹介された1880年、Young Men’s Christian Associationをどういう日本語にするかを考えたそうです。キリスト教青年会と訳しましたが、その時に青年という言葉が生まれたということです。YMCAは青少年を育てることを目的とするより、育てられた青年がその能力やエネルギーを他の人や社会のために向けていくことが目的であります。

 最近気になっていることがあります。目に見える形では、引きこもり、ニート、不登校ですが、それらは今日の若者たちの心の状態を表す現象であるように思います。新聞にもニートが急増し60万人以上、フリーターは、今ではごく普通の現象となっています。ニートは自分の社会とのかかわりを消極的にとらえている傾向なのです。自分の殻から出ようとしないことが多いのです。

 わたしたちの周りを見ると、外の世界と関わりをもたない傾向が出ています。それがごく普通になっていることに気をつける必要があります。近所付き合いも少なくなり、学校でもごく少数の仲間だけが自分の世界をつくり、他とは一切関係を持とうとしない。友達と一緒に何かをやろうということにも関心が薄くなっているようです。それでも自分のことだけで精一杯、精神的にもストレスを感じやすく、自分の前に立ちはだかる問題に対して精神的にも肉体的にももろくなっているようです。

 中村哲さんという方が、医師として1984年にアフガニスタンに行き、もう20年以上も活動を続けてこられています。夏には日本から青年たちがボランティアでアフガニスタンにやってきます。その青年たちが2か月もすると目を輝かせるようになるそうです。日本にはないものを発見するからだと中村さんは言います。それは、あの干ばつと紛争の連続の中で生きる厳しさ、その中で、人と人が生きるために協力し、支え合って生きている姿、そして、子どもたちのすばらしい笑顔と目の輝き・・・これらは、日本にいたときに全く出会わなかった人間の姿であったのです。こんな大切な価値に出会い、価値の大切さに気づくと、数ヶ月で青年たちは変化していくそうです。

 日本にいて見えない価値、考え方、人間としての生き方を、貧しい国アフガニスタンで共に生活している中で気づいていくのです。そんな経験、感動がその後の青年の生き方、考え方に大きな影響を与えるだろうと中村さんは言っていました。青年期に必要な体験であり、それはこれからの人生を生きていくための大切な糧であると感じました。