卓話


コンピュータとの出会い

2018年1月24日(水)

(株)インフォマティクス
取締役会長 長島雅則君


 私は、団塊の世代の最後の昭和24年生れです。戦争という体験をせず、また、物質的に殆ど何もない状況の中で成長期を過ごしたお蔭で、脇目も振らずに、唯々、豊かさを望んで過ごせました。

 そんな時代ですから、大学では建築を勉強することに決め、出会った先生が内田祥哉先生です。先生は何を作るか(デザイン)と同時に、どのように作るかということの大切さも考えて、プレハブ建築などを含むシステムズ・ビルディングの第一人者です。

 そのような時に、CAD(Computer Aided Design)ということを耳にし、そして、システムズ・ビルディングとCADシステムはとても相性が良いと私も周りの人も感じておりました。

 CADシステムを勉強するために、MITへ行き、Nicholas Negroponte先生と出会いました。そして、Architecture Machine Group(AMG)というLabに所属し、Master of Architecture in Advanced Studiesのプロジェクトと論文を修めることができました。それは、1976年のことで、そのプロジェクトの動画は、YouTubeにアップしてあります。
(Masanori Nagashima MITで検索)

 MITでコンピュータを使い始めた1975年頃、いくつかの印象的な教えをもらいました。 まず、「全ての情報はDigitalになる」と言われました。今であれば、スマホを取り出し、Googleでキーワードを検索すれば、それにかかわる情報が表示されます。今は、身の回りのすべての情報がDigitalになってしまったのです。

 「この世の中は、Atom(分子・物質)の世界とBit(01の信号)の世界に分けられる。コンピュータはBitの世界と関わっていて、Atomの世界とは、直接関わっていない。」例えば、料理を作るコックさんや、美しい建物を建てる大工さんは、もっぱらAtomの世界に生きている方々です。したがって、この方々の仕事には、コンピュータの出番は殆どありません。

 情報科学(コンピュータ(インフォメーション)・サイエンス)は、自然科学の学問の一分野であり、他には、数学・物理学・化学・生物学・医学・・・等があり、その仲間であるわけです。ここで、大事なことは、情報科学は、他の自然科学の学問とは、全く異質なものだということです。多くの自然科学の分野では、a ≠ a + 1 です。しかしながら、情報科学では、しばしば a = a + 1 という表現がまかり通ります。ここでは、a と a + 1 が等しいということを意味している訳ではなく、この時点で、a の値が a + 1 の値に変化することを意味しています。自然科学の学問は「“真実”を追求」するものでありますが、情報科学だけは、「“アクション”を追求」するものである・・・といえるのです。要するに情報科学は真実を追求する学問では無いということになります。 典型的なコンピュータの世界で、この特質をうまく利用した成功者の中には、ゲームを製作している企業があります。ゲームの中では何でも有りです。

 また、アクションを追求するということは、データが動く(距離的にも、内容も・・・)ということで、インターネットに代表されるネットワークの発明により、コンピュータの能力は格段に増幅されました。しかしながら、データの値を変化させることがコンピュータの特性でもありますが、データの値が動いてはいけない場合も多々あります。このデータの値を保存する技術の一つがブロックチェーンであるといえます。このように、我々の身の回りには、いろいろな技術が生み出されて、今まで不可能だと思われていたことが、いとも簡単に実現しています。人工知能の発達にも目覚ましいものがあります。

 このようにコンピュータの基礎をMITで学んだ後、1976年に、英国に渡り、Cambrdige大学の研究者達が創った小さな企業で、建築のCADシステムの開発を5年ほど行い、そのシステムを売るために帰国し、1981年に今の会社を設立しました。そして、80年代に、設計事務所、建設会社、プレハブハウジングメーカー等々に、次々と採用していただきました。あの建設バブルの時期に創業したおかげです。

 コンピュータの発明は、人類の歴史の中で特筆すべき出来事です。その黎明期に関われたことが、私にとって誠に幸運であったと思います。


ウーバーについて

2018年1月24日(水)

帝都自動車交通(株)
代表取締役社長 短凖跳鯒邨


 私は昭和51年、日本興業銀行に入行し、30年間興銀マンとして充実した日々を送りました。その後、平成18年4月、京成電鉄に移り8年間経営戦略、グループ戦略を担当、三回目の出向先として平成26年5月、京成の子会社である帝都自動車交通に移りまして、4年が過ぎようとしております。

 本日は、私の三度目の就職先、タクシー・ハイヤー業界について、ウーバーを中心にお話し致します。
 ウーバーテクノロジーズインクというのは、そもそも世界の金持、年金から資金を集め、これを最新のIT技術に投資して金を稼ぐいわばヘッジファンドの一種であり、今後上場をめざしており、その時価総額は4兆円といわれる大会社です。最近日本のソフトバンクも9,000億円出資しました。ファンドですから儲かれば何でもやりますが、面倒なことは一切やらない、そんな事をすればコストが嵩むからです。従って、白タクのドライバーと、お客様とのマッチングをハイテクを駆使したスマホを使って行いますが、万が一の処理等は当事者双方でやってくれ、というのがウーバーのスタンスです。これに対して、最近欧州統一裁判所で判決が出て、ウーバーはハイヤー・タクシー業として届出をせず労働者と労働契約を締結していないのであれば配車アプリを使った白タク営業をしてはいけないという最終判決が出ました。

 日本では道路運送法、道路運送車両法で、欧州各国の様にタクシー・ハイヤー業は厳しく規制されています。数々の当局規制の下にあり、又、何か事ある時は、タクシー・ハイヤー業者として責任を持って対応し、重大事故の届出等を行う義務等を安全第一の公共交通機関として担っています。こうした管理コストを一切負担しないのが、世界中を騒がしているウーバーの考えた配車アプリ白タクです。

 日本のタクシー業界はそもそもその99%が中小企業です。その中小企業でさえ負担している運行管理責任を担わずに、ウーバーが白タクをするのであればこれは認める訳にはいかない、というのが国交省の見解です。
 とはいうものの業界の利害から一歩離れてこのウーバー等先端技術の問題をみてみましょう。

 ICT、AI、IOTを中心としたおそらく百年に一度といわれる技術進歩のスピードは、我々の想像をはるかに上回っています。例えばオリ・パラ時には羽田・オリンピック間の高速道路では、無人の自動車が走ることになるでしょう。これからは家電も電気自動車を作る時代です。そして自動車自体がいわゆるコネクテッドカーの概念の下、今後一つの動く情報の塊りとなり、これがおおきな市場価値を生み出すものになると思われます。実はウーバーはタクシー業を世界でやりたいのではなく、タクシーを使用する人々の動線情報を収集しそれを使ったビジネスをやりたいのです。今年初めウーバーに出資したソフトバンクもまさにそこに興味があるのです。

 しかし、結論から申し上げると、『人身事故が起きるのはまずは車の責任』とする今の道路交通法の概念の下では、無人の車が全く自由に走り廻るという事は、無理があります。なぜかと言えば万が一の事故発生時の責任をだれがどの様にとるのか、十分な国民的コンセンサスがないからです。一言でいうと、技術の長足の進歩に労働法体系を含めた現行の法律の枠組が全くおいついていない、これが、ウーバーが全世界で大揉めに揉めている背景にあると考えます。

 日本のウーバー社では、日本人の社長が昨年末に退任し、本年より新たな体制で日本で白タク営業はせずに、タクシー業者に対し配車アプリだけの販売を行うという営業戦略を本格的に開始しました。料金は非常に高く売り上げの2割〜3割です。この話をすると、短凖弔気鵝∋笋脇本でもうウーバーに乗りましたという方が出てきます。それは日本のタクシー会社がウーバーのアプリを使用し、アプリ代として売り上げの20〜30%を支払って営業しているということです。従って乗車料金は高い筈です。

 本当にウーバーの狙いは配車アプリだけなのか?政府の規制改革会議の議論の行方もあり、今年も当面ウーバーの動向からは目が離せません。ポイントは、^汰粥Π多瓦鮹簡櫃垢覬森坿浜責任は誰がとるのか、技術の進歩に安全第一の社会の枠組が追いつくのか、という事だと思います。どうか今後の展開にご注目ください。