卓話


イニシエイションスピーチ

2008年6月11日(水)の例会の卓話です。

中島周君・江幡哲也君 

食品工場の品質管理について

キューピー株式会社
常務取締役 中島 周 君

 食品会社に入ってからの私の印象は、食品に携わる方は、本当に真面目な方が多い、ということです。またそのことが食品の品質管理と大きく関係しているのではないか、と思っております。

 最も関連が深いと思われるのが新卒学生の採用です。食品会社は転職がほとんどない世界ですので、新卒の学生の質が企業の成果とより大きく結びつくのではないか、と思っています。採用の基本は、社員が卒業した大学の先生方のネットワークです。数十年のネットワークを駆使して、真面目な学生を探しています。主に農学部、水産学部、食品科学という方面がほとんどですが、よく知っている先生方が誠実な学生を特に選んで推薦して頂いています。実際に採用面接に出てみますと、悪く言えば自己PRは苦手で不器用そうなのです。よく言えば実直な性格がにじみ出る様な方が多く見られます。人柄の良さそうな方が多いな、と感心しています。

 最初は自分の会社だけかと思っていましたが、暫くして同業界の方々とお付き合いするようになり、みなさん極めて真面目な方が揃っていることに驚きました。食の仕事に携わるということは、人の性格にかかわることだと感じるようになりました。

 実際に工場では様々な仕事の効率化を行っておりますが、合理化に限界があることも多いように思います。本来的には、食品製造は家庭の台所の手間を担う仕事であり、合理化になじまない労働集約的な仕事が多いのが現実だと思います。

 社会の変化の影響も大きく、女性の就労人口の増加に伴い、家庭での調理が少なくなりました。スーパー、コンビニの弁当や惣菜に対するニーズが非常に大きくなってまいりました。その対応のために弁当や惣菜を作る工場が増えています。それらの場所では、ほとんどの仕事が手作業で行われております。また惣菜・弁当は1日に数回デリバリーされる関係で、昼夜製造が行われており、また年間365日休みがないために、昨今の日本の労働環境では日本人だけでは労働力が足りないのが現状です。

 日中でも現場で働く人々の大半は、パート・アルバイトさんです。夜間作業になりますと、日本人に加え、外国人の方もたくさん働いています。工場の数百人の従業員の90%以上が外国人というケースも間々あります。外国人の方々は就労ビザの関係で日系人が多く、当然標準語がスペイン語、ポルトガル語ということになります。実際に工場に行っても私は会話がわからないことがよくあります。

 食品は間違いがあると、人体に危害が加わったり、命にかかわることがあり、品質の管理というのが最も重要なブランド価値ということになろうと思います。実際に現場ではパート・アルバイトの方は1年未満の短期で変わる方が多く、人が変わっても間違いがないきちっとしたシステムがあることが大事です。マニュアル化された作業がPDCAを繰り返しながら作業的、精神的に負担の少ない形で実現できることが非常に重要です。

 然しながら何よりも品質の管理に重要なことは、現場で仕事に携わる人のモチベーションを上げるということだと思っています。パート・アルバイトの方は短期で変わる方も多く、人間関係がドライになりがちですが、作業の効率化、主体性を持って参加してもらうことで、モチベーションを格段に上げることができます。前向きになった仕事から観察力が向上し、不測の事態が起こることを防ぐことができます。

 実際には様々な不平不満が出てきます。最も多いのは不公平感です。個別の時給を全て公開しているわけではありませんが、作業の割に高い、安い、という話、同じ作業なのに「あの人の仕事は楽だ」、さらに「管理者が特定の人をひいきにし、優遇している」さらには「管理者と誰かはデキテイル」という話など枚挙に暇がありません。話をしやすい環境を作り、工場長、製造課長などの管理者が継続的に自ら挨拶をし、声かけをすることで、ほとんどの問題は深刻になる前に除去されますが、時々は深刻になる場合もあります。

 最近の変化としては、作業の目的を説明するシートを製造現場においています。実際の製造現場で働くパート・アルバイトさんに、作業を説明することはあっても、その目的や背景などを時間を割いて説明することは稀です。稀に作りかけの仕掛品や中間原料が数日にわたって使われることがあります。温度管理をきちんとして作業していますので、品質的には全く問題ありませんが、作業をしている人から見ると、賞味期限の起算日、昔でいうところの製造日ではない日に作られた中間原料が使われているので、「これはいいのだろうか」と内心思われることがありうると思います。小さな疑問は直接質問するところまで至らないので、疑問が増殖した場合に、上司・会社に対して不信感が生まれる可能性があります。食品工場で自分が作っている食品に不信感ができては困ります。みんなが品質には自信を持って作ってもらう必要があります。そこで疑問に思いそうなことを匿名アンケートなどで普段から集め、Q&Aという形で張り出すことを始めています。ある種の可視化、見える化でありますが、会社で行っていることは基本的に透明にしようという気持ちが伝わればいいと思います。

インターネットがもたらす影響について

株式会社オールアバウト
代表取締役社長兼CEO 江幡 哲也 君

 私はオールアバウトというインターネットメディア企業を経営しております。オールアバウトは有象無象の情報が溢れるインターネットにおいて、各分野の専門家による信頼できる情報を提供する情報サイトAll Aboutを運営しております。

 本日は、ここ数年様々な場面で話題に上っております「Web2.0」についてお話し申し上げたいと思います。1996年から2004年くらいまでがWeb1.0〜1.5の時代でWebの草創期から普及期にあたります。そして2005年からがWeb2.0の時代となりネットの本質的な活用が始まった時期と位置づけられます。

 Web1.0の時代は、それまで様々な形で流通していた情報がWebを通して提供されることにより“便利”になった時代です。たとえばYahoo!JapanのTOPページにアクセスすれば複数の新聞社や報道機関の最新Newsをまとめて見られるというようなことが代表例です。また「ビジネス」の視点でも既存メディアのビジネスモデルの延長にある広告ビジネスが中心でした。

 2000年以降ブロードバンドインフラの普及によりネットの利用者数が飛躍的に増加し始めました。このような変化の中でネットが与える影響が大きい分野から企業のネット活用が進んでいきました。求人募集、株売買、マンション販売、旅行予約、ゴルフ場の予約といったシーンでの活用です。とはいえ現在もそうですがネットのビジネスへの活用度合いはまだ企業や業界によってまちまちです。

 さて2005年あたりからWeb2.0時代への突入です。Web2.0時代のキーワードは、「知のコラボレーション」だと私は思っています。Web1.0時代ネット上に流れる情報は大企業や既存のマスメディアが作り出す情報が主でした。それに対し2.0時代はユーザ自身が口コミなど情報を作り出し大量に流通するようになりました。具体的には個人が簡単に発信できるBlogやmixiで有名になったソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などの台頭です。こうしたサイトはCGM(Consumer Generated Media)と呼ばれます。CGMの台頭にはBlogに検索エンジンを通してユーザがアクセスしてくれる環境が生まれたことやGoogleなどの広告配信ネットワークにより小規模なBlogにも広告が配信され個人収入が生まれる仕組みができたことなどにより個人の情報発信モティベーションが花開いた背景もあります。ちなみにGoogleは世界中でさまざまな情報サイトに新しい広告機会を提供し2008年1-3月期にて約5,200億円の売上と1,300億円の営業利益を計上しています。

 CGMの台頭は購買行動へも影響します。例えばお客様は店頭に行く前に商品に関する口コミや最安値情報など裏を取ってから訪れるようになります。既顧客が口コミの元となりますのでこれまで以上に既顧客に対する対応の重要性が高まります。消費マーケットが成熟化する中、消費者を取り巻く情報環境の進化が進みこれらが相互作用しながら消費者の個性化、多様化が進んでまいります。さらに今後はモバイルでのネット利用が拡大しその影響が加わり複雑さを増していきます。これらをポジティブな変化と捕らえどのように対応していくか、これまでの延長線上ではない方策が求められていく時期だと感じております。そして変化に対応した経営を行うためにはWebテクノロジーへの対応力が必須です。日本には理系の経営者が少ない状況ですが、CEOやCFOと同じくらいCTOの重要性がより高まって行くと思います。大変な時代です。