卓話


ロータリー財団月間例会
東京ロータリークラブとICU-歴史的つながりとロータリー平和センターの意義-

2017年11月8日(水)

国際基督教大学
理事長 北城恪太郎君


 今日は、東京ロータリークラブと、私が理事長を務めます学校法人国際基督教大学(ICU)との歴史的つながり、そして、ICUにある「ロータリー平和センター」について、その意義と役割をお伝えしたいと思います。

 ICUは1949年、第二次世界大戦直後の日本で、人類平和と民主主義のため貢献する人物を育む大学を切望した、日本とアメリカのキリスト教徒と教育者が創設を決議した大学です。初代理事長には、日本人初の国際ロータリー会長で、ジャパンタイムズ社長、会長を歴任した東ヶ崎潔氏が就任しました。そして、1953年、ICUは日本初の4年制教養学部大学として、「国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資すること」を目的に、創立されました。

 この大学の誕生のため、1948年、国内では当時の日銀総裁、一万田尚登氏が後援会長となって募金活動を開始し、1950年7月に国内のご寄付額は、目標1億5,000万円を突破しました。この募金への協力者の95%は、キリスト教徒ではない一般国民でした。戦後の厳しい時代に、小学生は飴玉を我慢して小遣いを捧げ、他大学の学生がアルバイト収入から100円ずつを持ち寄った、という記録もあります。

 そして2002年、ICU大学院に、ロータリーの支援を受けて平和研究拠点「ロータリー平和センター」が開設されました。さらに2010年、創立60周年記念事業の一環として、ロータリアンの皆様からのご支援を頂き、初代理事長の名を冠した「東ヶ崎潔記念ダイアログハウス」が竣工されました。

 ICUはその後も国際化の使命を追求し、その取組は日本の大学の国際化を牽引するものとして、2014年、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業タイプB」に採択され、今日に至ります。

 さて、ここで、ICUの概況を説明します。東京郊外の住宅地、三鷹市に位置しており、最寄り駅のJR中央線武蔵境駅からバスで10分、東京ドーム13個分に相当する約62万平方メートルの緑豊かなキャンパスを有しています。

 学部学科は1つ、「教養学部アーツ・サイエンス学科」、大学院の研究科も1つ、「アーツ・サイエンス研究科」です。学生は世界約50カ国から集う約3,000名。開学来、少人数教育を徹底しています。各授業の学生数は、10人未満のクラスが全体の10%、30人未満が50%と、一般的な大学では考えられないほど小規模です。授業の形態は、講義型ではなく、ディスカッションやグループワークの授業が中心です。そして、教員の36%は外国籍という、ダイバーシティー豊かな教育環境を実現しています。昨今、大学の世界ランキングが話題となりますが、その代表格であるイギリスTimes Higher Educationの日本版ランキングにおいて、私立大学では早慶に次ぎ、第3位でした。

 ICUの学部入学者は全員、「教養学部アーツ・サイエンス学科」に所属します。この学科の中に、文系、理系にまたがる31の専修分野(つまり専攻)があり、学生は2年次の終わりに、自身の専修分野を決める仕組みです。これは、リベラルアーツのもつ「Later Specialization(専門化を急がず、自分にあった専門を見きわめるべく幅広く学ぶための時間を重視する)」という考え方に立ったものです。その後、大学院で専門を深めます。 少人数や、学問分野を超えた学びと研究は、学部・大学院共にリベラルアーツの特徴で、このことが、異なる分野の知識の統合や、批判的思考力、そして問題発見・解決力を養うのです。

 さらに、日英バイリンガル教育はICUの理念の一つです。英語のみで卒業できるコースは、ICUの学部にはありません。日本人が留学を通して異なる世界に触れるように、日本のキャンパスは、海外からの学生が日本と出会う場なのです。

 歴史ある、充実した留学プログラムも特徴です。ICUの留学制度の歴史は約60年、現在ある58プログラムの留学先は42カ国91大学、全学生の60.8%の学生が在学中に留学を経験します。学部3年次に1年間参加する交換留学プログラムでは、世界有数の大学と単位を互換しているのが特徴で、23カ国71大学と協定を結んでいます。

 国際学生寮の歴史も同様、約60年に及びます。今では全学生の30%、900名がキャンパス内の学生寮に住み、異なる価値観を持つ友人と生活しながら、多様性を受容する素地を養っています。

 さて、そのICUにあるロータリー平和センターについて、ご説明します。ロータリー平和センターは、世界7大学に6センターあり、これらセンターの研究者を「平和フェロー」と呼んでいます。その1つ、ICUロータリー平和センターは2002年、アジアで初めて開設され、アジアで唯一修士号を取得できるセンターです。

 ICUロータリー平和センターを支援くださっているのは、ICUが位置する東京三鷹を含む第2750地区と、近隣5地区を含めた6地区合同で構成する「ホストエリア連絡協議会」で、カウンセラーオリエンテーション、ロータリー平和フェローオリエンテーション、ホストエリアセミナーを実施しています。また、毎年各地区から、平和フェローを支援するカウンセラーを選出くださっています。平和フェロー1人に対し1名選ばれるカウンセラーは、いわば「フェローの日本の家族」です。お蔭様で、フェローは安心して、異国での研究生活を送っております。

 ここで、ICU平和フェローの現況をご説明します。その数は年間約10名。国際ロータリーが、フェローの学費の70%をご支援くださいます。世界各地から平和研究のためICUでの研究を志願した方々で、2年間で論文を執筆し、修士号(平和研究)を取得します。地域別受入人数は、南北アメリカ大陸から62名(46.2%)、ヨーロッパ18名(13.4%)、アフリカ13名(9.7%)、アジア太平洋39名(29.1%)です。

 次に、年間活動をご紹介します。ICU独自の取組として、国際機関や国際NGOのスタッフを招き、講演や提言を行う「平和フォーラム」があります。そして、全センター共通の取組として、母国以外の国にある国際機関などで行うインターンシップがあります。さらに、毎年3月には広島研修旅行を実施します。これは全国ロータリアン9万人の皆様からのご寄付により実現しているもので、参加したフェローからは、「どのように世界平和の実現に貢献できるか教えられた」、「期待以上に学ぶことの多い研修だった」などの声が挙がっており、有意義な活動であることが分かります。

 2年間の最後を締め括るのが、卒業前の年次セミナーです。研究発表に滲む平和実現に賭ける情熱、真摯な研究姿勢は、胸を打つものがあります。次回開催は2018年6月2日(土)、会場はICUですので、ぜひお越しください。彼らの研究テーマには、紛争解決、人間の安全保障、災害対処、紛争予防策など、世界の喫緊の課題が並び、その研究発表は、世界の現状をそのまま映したものと言えます。

 さて、ICUロータリー平和センターでの研究を終えた彼らが、どのような道に進むかですが、最多はNGO、教育機関、政府機関、国連機関に勤務し、研究成果を現場に生かす例です。例えば国連機関では、世界食糧計画アジア支局、国連難民高等弁務官事務所などのスタッフとして、また、政府機関では、アメリカ国防省、オーストラリア外務省などの政府高官として活躍しています。

 このようなICUロータリー平和センターを、国際ロータリーは高く評価しており、視察団は「素晴らしい活動」、「ホストエリアを始めとしたロータリークラブのサポート体制が整っている」と、コメントしています。

 修了生が残した声も、一部紹介します。「問題の早期解決が重要だと思っていたが、ICUで問題解決とクリティカルシンキング(鵜呑みにせず吟味する)ためのツールと知識を学び、持続可能な解決方法を導けるようになった」、「異なるニーズを持つ人々の声に謙虚に耳を傾けることを学び、自分が正しいと思うことを伝える自信を得、弱い立場の人々の声を代弁できるようになった」、など多くの平和フェローが、粘り強い対話と深い思考の重要性に言及しています。

 ICUロータリー平和センターは、皆様のご支援をもって2002年に開設し、今年で15周年を迎えました。これからもぜひ皆様には、ホストカウンセラーのお役目をお引き受けくださるよう、お願いいたします。

 最後にご紹介したいことですが、それはロータリーの目的と、ICUの目的は、「奉仕」という言葉の上で重なっていることです。皆様には、これからもICUロータリー平和センターと、そこに学び研究する平和フェローのご支援を、心からお願い致します。


  ※2017年11月8日の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです