卓話


The Role of Business in the US-Japan Trade Dialog

2018年8月1日(水)

在日米国商工会議所
会長 クリストファー・ラフルアー氏


 在日米国商工会議所(ACCJ)は1948年に米国企業40社により設立され、今年は70周年を迎えます。東京、大阪、名古屋に事務所を置いています。

 現在、米国の対日投資の増加に伴い会員数は過去最高の約1,000社、個人会員は約3,500名になりました。両国政府や経済団体等との緊密な協力を維持し、米国の経済関係のさらなる進展、米国企業及び会員活動の支援、そして、日本における国際的ビジネス環境の強化というミッションの実現を目指しています。金融、ヘルスケア、IT、防衛など60の産業別に構成された委員会が意見書、白書の作成等を通して、政策提言活動を行っています。他にも政治や経済の行動等について年間500以上のイベントやセミナーを開催し、メンバー企業のCSR等ESG活動にも積極的に取り組んでいます。

 外国企業だけがメンバーだと思われますが、実際には会員企業の国籍は55%がアメリカ、30%が日本、15%がその他となっています。個人会員の国籍は、アメリカ人30%、日本人50%、その他20%です。どの組織でもダイバーシティがますます重要で、日本政府が女性の活躍を推進している今、ACCJはその目標を強く支持したいと考えています。具体的にはWomen in businessセミナーを毎年行って、白書も2回発行しています。ACCJは女性会員が入会しやすいように取り組んでおり、現在の女性会員の比率は30%に達しています。産業別委員会のリーダーに占める女性の比率は27%ですが、こちらも30%を超えるよう努力しています。

 第2のポイントは、ACCJは米国産業界にとって世界第3位の経済大国である日本を非常に重要な市場と考えています。

 米国の貿易相手国として、日本は現在第4位です。中でも米国主要産業である医薬品、医療機器、金融サービス、航空機とその装備品、インターネット関係ビジネスなどの分野では日本が実は第2位の輸出市場となっています。

 貿易による米国人の雇用創出でも日本はカナダ、メキシコ、中国に次ぐ第4位の座にあります。また、日本の市場における米国企業の成功は、米国の雇用創出や物品サービスの対外輸出、さらには米国への海外直接投資の拡大を後押ししています。

 第3のポイントは、日米経済関係は現在、大変重要な段階に差し掛かっているということです。

 日本は米国の安全保障と経済面でなくてはならない重要なパートナーですが、トランプ大統領は、日本をはじめとする多くの経済パートナーに対して、これまで以上に重要で公正かつ互恵的な対米貿易の実現に向けた措置を取るよう求めています。その経済的側面には、賛否両論があります。

 ただ米国では急速な技術革新とサプライチェーンのグローバル化により、従来の製造業界では数多くのアメリカ人労働者が職場を失っています。この問題の簡単な解決策はありませんが、米国の物品とサービスの両面で米国の輸出が拡大すればプラスの効果があることは否定できないと思います。

 第4のポイントは日米間の貿易に関する対話はどのような形であれ、これを協力的かつ建設的な精神で推進する必要があります。日本経済の長期的成長を実現するために解決が求められる重要課題は数多くあると思います。米国企業から見ると、外資系企業に関する環境にはさらなる改善の余地があると思います。

 しかし、昨今、米国企業は日本市場への参入機会を多く獲得しており、安倍政権による最近の改革で日本のビジネス環境は一段と改善されました。その上、日米通商交渉を建設的に進め、保護主義的利益の抑制を支援してくれる味方を日本国内で増やすとともに、成長・改革に向けた近年の日本の取り組みを逆戻りさせないことが極めて重要です。 第5のポイントは、この状況下においても、日米政府間における活発な通商経済対話はますます重要であるということです。昨年、トランプ政権が誕生した後、初回の日米通商会合が開催されました。それ以来、1年以上経っているにも関わらずこの対話の進展がないことを懸念しています。

 もちろんTPPの取り組みは大変難しい問題であることは承知しています。日米が取組む交渉が二国間になるのか、多国間になるのかはともかく、私達はより活発で有益な対話の実現に関心を持っています。

 第6のポイントは日米通商経済対話において民間部門にも十分な発言権を持ってもらうことの大切さです。

 ACCJはトランプ政権が日本との二国間経済対話を開始した2017年4月、光栄なことに、ペンス副大統領、ロス商務長官と日米民間部門の面会を実施するお手伝いをする機会を得ました。ACCJと日本の主要経済団体はこれからもこのような役割を果たせる立場にありますし、問題の解決策に貢献できる確信を持っています。

 インターネットエコノミーに関する日米政策協力対話は民間部門と政府が協働できる事例を示した良いモデルです。10年前、ACCJはインターネットエコノミーの分野で官民が協力して取組み、日米の市場に質の高い基準を確立することができればさらに大きく成長する可能性を秘めていると指摘しました。

 そこで私達は経団連と協力し、民間部門のトレンドやベストプラクティス、そして成長促進に関する規制に対して、政府と共有する場となる年次会議に参加するように日米両国の政府に対して働きかけました。

 私達は日米の産業界が両国の共通の基準を生かして、成長を最大化し、よりよいサービスを消費者に提供することにこの対話が貢献したと信じています。

 また、日米両国間の対話はアジア太平洋の他の国や地域の政策にも大きな影響を与えたと確信しています。トランプ政権も日米インターネットエコノミーダイアログの重要性を理解しており、今年もこの対話を継続することとなりました。このダイアログに倣い、他の分野における日米の政府間協議にも民間が参加する機会が与えられれば、その分野でのビジネスの機会を拡大することができるでしょう。

 第7のポイントは、日米の協力の下、他の主要パートナーを巻き込み、アジア太平洋地域の貿易・投資の基準づくりの促進をすることです。

 ACCJにはアジア太平洋地域にわたる事業活動を行い、それを通じて米国の雇用創出と投資誘致に貢献しているグローバルな企業が多数所属しています。ただ、他国間合意による地域内貿易、投資のルールづくりで日米が足並みを揃えられなければ、これらの米国企業は不利な立場に立たされることになります。日本、その他の主要パートナーと米国の連携がなければ、アジア太平洋地域は真空地帯となり、他の二国間協議や多国間協議が台頭する余地を与えてしまいます。それは多くの意味で米国の経済的、戦略的国益にかなうものとは言えません。なお、多国間合意は多くの場合、二国間交渉を伴うものであり、米国が様々な目的を達成する上で実りある道を拓くものであることを付け加えておきます。

 最後のポイントは、次のステップをどうするかということです。
 来月、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で新たな対話が開始される予定で、日米経済対話は新しい重要な段階を迎えています。

 ACCJは、環太平洋パートナーシップ(TPP)を通じ、より強固な地域経済の構築を主導している日本を賞賛していますが、同時に米国がTPPに復活することを日本が期待していることもよく理解しています。私達はより強固な二国間の経済関係を切望していますし、TPPは地域間協定ですが、実際には地域間、そして二国間、両方の側面を持ち合わせた協定です。

 2016、17年に日米は集中的に協議を行い、TPPの枠組みの中で数多くの項目に関して二国間合意をしました。事実上、既に両国間の自由貿易協定の最重要項目のいくつかにおいては、二国間の自由貿易交渉が完了しているような気がします。

 一方、日本はこれまでオーストラリアなどとの国との間、また、最近ではEUとの間でも二国間、地域間の自由貿易協定を行ってきた実績があります。これらの事実を踏まえて最も重要な同盟国であり、パートナーである米国との自由貿易協定を検討する意義はあると信じています。

 以上、ACCJは日本がさらなる柔軟性を持って今後の対話に臨むことは賢明であり、日米通商関係の一層の自由、公平、互恵性を確保する新たな二国間合意につながる建設的な解決策を日本が提案することに期待しています。そしてそれと同時に、米国にも同様な姿勢で対話に取り組むことを強く求めています。

 私達ACCJは未来にわたってこのような日米間の通商対話が進展を加速させ、日米双方の企業が恩恵を享受できるような経済協力の拡充をもたらすことに期待をしているということを伝えて、私のスピーチを終わらせていただきます。


  ※本文は、ラフルアー氏のお話を東京RCのクラブ会報委員が纏め編集しました。