卓話


独禁法 あれこれ

2014年6月11日(水)

田辺総合法律事務所
パートナー 塩田薫範君


 独禁法は、国内的にも国際的にも重要性を増してきています。昭和52年の課徴金制度の導入以降、課徴金の率の引き上げ・対象の拡大、刑事罰の引き上げ・リニエンシー(課徴金減免)制度・強制調査方式の導入などの強化改正が行われ、昨年末には審判制度を廃止する改正が行われました。独禁法違反の件数に大きな変化は見られませんが、大規模な事件があり、課徴金額、刑事告発も増加しているほか、優越的地位の濫用、下請法違反なども取り上げられています。最近では消費税の転嫁拒否の問題も公取の役割の1つとなっています。米国・EU等においては、自動車部品や金融関係などの事件に見られるように、我が国以上に厳しい運用が行われており、特に米国においては、高額の罰金に加えて、役職員に対して実刑が科されるケースが急激に増加しています。グローバル化の進展に伴い、カルテル等の違反行為だけでなく、合併等についても複数の国の独禁法が関係するケースが増加しています。

 政府規制の見直しは歴代内閣の重要な政策課題とされてきました。平成7年の閣議決定「規制緩和推進計画」では「規制緩和とともに競争政策の積極的展開を図る」こととされ、現在は、アベノミクスの第3の矢の1つの柱とされています。政府規制については、ゝ制の目的自体が適切か、¬榲実現のために必要な範囲に止まっているか、6チ茲砲任るだけ悪影響の少ない方式のものになっているか、といった点をチェックすることが重要です。また、政府規制の見直しと同時に、「行政指導」が事実上の政府規制になることのないように注意する必要があります。さらに、「独禁法の適用除外」(例えば、全農などの協同組合や著作物再販など)についても見直しが必要であると思います。また、企業に対する公的支援に関しても昨年9月の「官民ファンドの運営に係るガイドライン」に示されているように競争を歪曲することのないように競争政策の観点からのチェックが必要です。

 平成9年に持株会社の禁止規定の改正が行われました。この規定は、「事業支配力の過度の集中を防止する」ことを目的とするもので制定当初から規定されていたものですが、長年にわたって全面禁止は行き過ぎた規制であるなどの批判があり、「持株会社の禁止」という方式ではなく、「事業支配力の過度の集中」に該当するものを禁止するという規定に改正されました。

 平成18年にスタートしたリニエンシー(課徴金減免)制度は、カルテルや談合を行っていた企業が,その違反行為を取り止めるとともに、自主的に公取に報告しその後の調査に協力した場合には,その報告の時期や順番に応じて,課徴金を全額を免除する又は50%若しくは30%減額するという制度です。リニエンシー制度は導入当初から効果を上げていると思います。近年複数の国の競争当局が国際カルテルに対してほぼ同時に調査を開始する例が見られますが、その背景には、多くの国においてリニエンシー制度が効果を上げていることもあるのではないでしょうか。なお、最近においてはリニエンシー関連を理由として提起されたと言われる株主代表訴訟の例も出て来ています。

 昨年末に審判制度を廃止する改正法が成立しましたが、その附則で,審査手続の在り方について検討することとされました。公取の実態解明機能と企業の防御権の確保のバランスをどう取るのかが大切であり、米国・EU等の制度も参考にしながら検討が進められることを期待しています。

 米国・EUをはじめとして100ヶ国を超える国に独禁法に相当する法律があり、その定めるルールは基本的なところはほぼ同じようなものであるとされていますが、法律の名称は様々で、国際的には「競争法」という呼び方が一般的です。

 日本では一般に「独禁法」とか「独占禁止法」と略称されていますが、独禁法は、私的独占だけでなく、カルテル・談合や不公正な取引方法の禁止、合併の規制等を定めていて、正式な法律名は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」です。

 今後独禁法のルールがさらに定着することにより公正かつ自由な競争が促進されて我が国経済が一層活性化されることを期待しています。


           ※2014年6月11日(水)の例会の卓話です。