卓話


東京ロータリークラブクリアランド
カンボジア視察旅行報告
イニシエイションスピーチ

2006年3月29日(水)の例会の卓話です。

油井直次君
柴山哲治君

第4094回例会

東京ロータリークラブクリアランド
カンボジア視察旅行報告

油井アソシエイツ(株)
代表取締役 
油井直次君

 カンボジア対人地雷除去プロジェクトの視察は2005年に続き2回目で,今回はご婦人7名を含む東京ロータリー24名で行きました。

 2月9日朝のHALOTRUST本部訪問では通訳を務めることになり,発表者であるダニエル・ブリッジ氏に会いました。

 彼のプレゼンテーションはよく構成されていて,“何故地雷が埋められたか”について歴史的経緯の説明があり,原因について理解を求められました。カンボジアの独立(1953年)とその後のカンボジア内の権力闘争と,国際政治の中における米・中・ソ連及び周辺国であるタイ及びベトナムの介入による戦争により,それぞれの国製の地雷が国中に埋められるに至りました。地雷を撤去するだけでなく,そもそも地雷そのものが埋められないようにすることへの関心を持つ必要性を教えられたわけです。

 地雷除去プロジェクトは雇用対策・技術教育対策にもなっています。HALO TRUSTだけでも,多くの国からの約420万ドル(年間)の支援を得て,カンボジア内で約1,100人の人を雇用しています。全世界では7,000人を雇用して,地雷除去を専門に行なっています。

 こういう辺境の地に,危険を冒して地雷除去に努めているダニエル・ブリッジ氏という人間に興味を持ちました。彼はスコットランド出身,大学で政治と法律を学び,陸軍に7年いて,ビジネス界に3年,そしてHALO TRUSTに入って3年になるとのことです。

 彼は,このような人道的な仕事に強い信念を持っており,高いモラ-ルとモチベーションを持っていました。これには非常に感心させられました。中期的には英国の本部に戻って,より多くの支援を得られるように大学での専攻を生かしロビー活動を行い,長期的には学校の先生になるつもりだと言っていました。

 午後,元軍人だったアキラ氏の地雷博物館を訪問し,彼の地雷除去活動の説明を受けました。彼は,ポルポト軍に無理やり少年兵にされAK47銃を持たされ,ヘンサムリン及びベトナム軍と戦わされました。ヘンサムリン軍に捕らえられるとまた少年兵としてポルポト軍と戦いました。終戦後,彼は地雷除去をライフワークとして行なっており,既に2万個を除去しました。

  翌日のPREY CHAN村地雷原の現地視察では,まず,すぐ隣にある小さな小学校を訪問し,約150人の子どもたちに鉛筆・ノート等のプレゼントを配りました。子どもたちは朝7時頃から楽しみに待っていたとのことです。その後,HALO TRUST代表のリチャード氏とカンボジア人大隊長のマクロ氏より説明を受け,危険を示す赤杭に囲まれた中で,地雷原の帯の中で炎天下除去作業を黙々と続ける様子と地雷爆破を視察しました。最後に,記念案内板の除幕式を行ないました。

 また,国の再建にも取り組んでいる現地のNPO法人アーティザン・アンコール社の社長プルン氏とマネージャーの日本人の菊さんにも会い,話を聞きました。カンボジアの伝統工芸と貴重な黄金の繭を使った絹製品を作り販売することにより,伝統技術を蓄え職人を育成し,雇用を作り,経済を発展させて,国の再建に役立とうとするものです。すでに700人の職人を育て雇用しているとのこと。2005年の愛知万博カンボジア館を運営したのも,この会社です。

 いずれも情熱を持って国の再建に取り組んでいる多くの人々に会い,感動して帰って来ました。










  

イニシエーションスピーチ

社会貢献とオークション
若手芸術家の育成

(株)アートガイア 代表取締役会長
アートガイア河口湖ミュージアム
館長
柴山哲治君

 日本は世界に冠たる経済国となりました。人間としての豊かな生活、充実した人生を送るために、まさにロータリークラブの精神である一市民として社会に貢献することや、文化・芸術に囲まれた生活があるのではないでしょうか。私は、これまで10数年間、社会貢献や文化事業の一連の活動にボランティアとして出来る範囲で参加して参りました。しかし、こうした社会貢献、文化・芸術事業は一朝一夕で育つものではなく、長い年月の積み重ね、公平な立場からの支援が必要となります。社会貢献の基盤はなんと言っても資金です。その寄付行為をオークションという機能がいい意味で仲介するものです。

 戦前までは欧米日本ともに社会貢献は一部の特権階級によって支えられて来ましたが、戦後の民主化により、一般人も参加するようになりました。特に欧米では自分も寄付行為に参加することを楽しみながら、好きなときに、好きなことへ、好きな額だけを寄付するという、寄付文化が根づいてきました。その一般化された寄付文化発展に重要な役割を果たしてきたのが、チャリティーオークションです。

 オークションとは市場経済の根本をなす人類が発明した機能です。この機能を社会貢献の一つの道具として役立てているわけです。参加者がそれぞれ無理なく参加するのが肝要です。チャリティーオークションの仕組みは概ね次の通りです。会社や個人が出来る範囲で生産物や行為を好きな慈善団体に寄付します。余剰物でもいいのです。それをオークションにかけます。そこで売却されたものの売上金が当該慈善団体に寄付されるわけです。

 ある会社や個人の余剰物でも他人にとっては使えるものが沢山あります。日本では誠に残念ながら、勿論税法の違いなどもありますが、未だに寄付というと金持ちの道楽程度にしか思われない非常に残念な状況です。これは寄付行為文化の未成熟さにあると思います。私は成熟社会の社会貢献、即ち寄付行為は、とられるのではなく、自分で参加し、無理なく、楽しく、自分の好きな行為やものや金銭を、好きな目的に、好きな時に、好きな方法でするべきものであると思います。それがひいては日本で寄付行為の文化を育てることになるのではないかと思います。チャリティーオークションは目的ではなく、あくまで手段ですが、寄付文化育成のための有効な手段の一つだと考えております。

 さて次に社会貢献に関連して、若手芸術家の育成についてお話させて頂きます。社会貢献に加えて人生を豊かにする文化芸術についてです。結論から申し上げれば、今の日本の文化芸術分野の特長は、その経済力に比べ若手芸術家による作品の市場と支援が相対的、絶対的に小さい点だと思います。日本の歴史は古く、文化・芸術の幅、深さ、多様性は世界に誇るものがあります。

 ここで私が申し上げたいのは、全ての作品は創られた時は現代アートであったということです。古典といっても作品があくまでも、『もの』である以上は経年変化や天災事故などの理由でどこかで消滅磨耗します。古典を愛し保護するのと同時にその時々の現代アート及び現代アーティスト・芸術家の支援が重要な社会貢献の一つではないかと思います。

 若手芸術家の支援はその時代の人々のみならず彼らの作品を受け継いだ後世の人々も幸せにする、という意味で重要であると思います。逆に言えば現代アートなくして古典は出来ないのです。日本の現代美術は、いまや世界に冠たる日本の伝統文化と同様に世界に誇るべきたいへん高い水準に達していることは間違いありません。世代を超えて形成される偉大なる文化は、現代アートを愛する一人一人の小さな一歩から始まります。

 本日はこのような現状を皆様にお知らせして、日本人が何千年のも亘って形成し愛でてきた文化芸術と同様に現代の若手芸術家の支援や作品を購入するということ、も世代を超えて残る重要な社会貢献の一つであると考えております。