卓話


医療機器の進歩と課題

2014年9月10日(水)

日本医療機器産業蓮同会
名誉会長 和地 孝君


 この20年間で医療機器は革新的な進歩をしました。かつては、患者さんを治せばそれでよいという発想から、患者さんの身体的負担を軽くして、安全に治す医療にコンセプトが変わりました。医療機器は治療機器と診断機器に大別されますが、主に治療機器の身近な例をあげますと
(1)かつては”痛い”ことの代名詞になっていた注射が、いまや殆ど痛くなくなりました。一番細い針は身体に入る部分は、0.12mmと蚊のハリとほぼ同じ細さです。また、ディスポーザル注射器なので、肝炎などのウィルスの感染の心配は大巾に軽減されました。

(2)心筋梗塞等、虚血性疾患の心臓治療は、かつては胸を開く開胸手術でしたが、今や手首からカテーテルと云うクダを血管を通して心臓の閉塞した部分まで入れ、先端にあるバルーンをふくらませ、その後、ステントと云う極小のドカンのようなものを入れて終わりです。治療時間は約30分。入院も3〜4日、日帰りも可能です。

(3)脳動脈瘤の治療は、かつては頭蓋骨をはずしてコブの根元をクリップでとめる手術でしたが、今や脳動脈ができたコブの部分を太ももから入れたカテーテルを通してプラチナ製のコイルで詰めてしまう手術に変わってきて、治療時間も従来の約半分、入院は約3〜4日と大巾に短縮されました。

(4)一方、診断機器も、ご承知の通り、MRI、CT等短時間で殆ど痛みがない精度の高い機器が開発されました。内視鏡は、診断と同時に治療にも使用でき、患者さんの負担が大巾に軽減されました。

 それでは日本の医療の水準は世界のトップレベルかといいますと決してそうではありません。ドクターのレベルや医療機器の製造技術は世界のトップレベルですが、現状はなかなか厳しいです。
○日本の医療機器は常に輸入超です。(平成24年約7,000億円の入超)その最大の要因は新製品の審査期間が長いことです。米国が平均8ヶ月のところを、日本は25ヶ月かかります。申請等にも日数がかかります。更に、薬事承認に要する平均期間は日本16ヶ月、米国6ヶ月、欧州2ヶ月です。従って世界でトップを走って開発を進めても一周遅れの外国製品に追いこされることがしばしばあります。世界で最も売れている先端医療機器100品目のうち20品目以上が日本ではまだ未承認です。

○審査に長時間かかる主な要因として、一つはカルチャーの問題があります。米国は新しいことへのチャレンジを評価する文化に対し、日本は人に迷惑をかけない安全第一の文化です。

 もう一つは医療機器と医薬品と云う全く異なった性格のものを薬事法と云う一つの法律で長年規制してきたところにあります。医療機器は薬と異なり臨床現場で改善改良が可能ですが、操作方法習得が不可欠です。やっと昨年11月に医療機器を別建に改正されましたが、一本立ちしてませんし運用細則はこれからです。

 最後に個人的な提言をさせていただきます。

 今や医療費は40兆円になんなんとしており、50兆円になるのも時間の問題です。高齢化の進展で益々増加して行くことは確実です。日本は国民皆保険制度があるので、語弊がありますがeasyに病院に行けるため予防に対する意識が低いのではないかと思います。ちなみに年間の医療機関への受診回数は一人当たり、日本13回、ドイツ8回、フランス6回、英米4回、スウェーデン2回です。

 国民全体の健康に対する発想を変えることを提言いたします。考え方を治療から予防に移すことです。

 参考になるのはスウェーデン、デンマーク等の北欧諸国です。北欧では、国も国民も”身体を動かさないと病気になる”と云うコンセプトが徹底しています。国全体のシステムが身体を動かすシステムになっています。

 例えば駅にエスカレーターなし。ゴルフ場にキャディーなし。カートがあるゴルフ場も少ない。利用しやすいスポーツクラブが町のあちらこちらにある。高齢者を老人扱いしません。老人ホームはありません。長期入院者(いわゆる社会的入院患者)も医師が不要と認めたら、5日以内に退院。実行しないと罰則が課せられる。また、延命治療は原則行ないません。その結果、寝たきり老人は極めて少なく、当然のことながら一人当たりの医療費は大変少ないのです。

 2020年のオリンピック決定は日本も発想を変えるいいチャンスです。皆さんは既に実行されておられると思いますが、治療から予防へと発想を変え、身体を動かし、国民全体の先導者になって下さい。


世界の森林

2014年9月10日(水)

住友林業
代表取締役会長 矢野 龍君


 現代文明は、産業革命以降、化石燃料を大量消費し、森林を大量伐採することで地球温暖化を引き起こしましたが、日本は、古来、自然と人間が共生する文化をもった国として発展してきました。当社も、国土の900分の1の山林を所有し、1691年の創業以来、320年以上にわたり、営々と森林を守り、自然環境の保全に貢献してきました。歴史を振り返れば、メソポタミア、インダス等の古代文明は、森林のある場所に興り、森林の消滅とともに衰退していきました。現代文明が古代文明と同じ結末を迎えないよう、歴史に学び、持続可能な社会構築のため、森林を大切に保全していく必要があります。

 森林には、木材生産のほか、‘鷸晴獣坐任竜杣固定、∪己多様性の維持、水源涵養、づ攤什匈暇瓢漾↓ゥ譽リエーション、等の多くの公益的機能があります。木は大気中の二酸化炭素を吸収固定するので、木造の住宅や学校等を作ることは、「都市に森を作る」こと、とも言えます。

 木は燃えやすいと思われていますが、外側が炭化することで、内部まで燃えることはありません。鉄は熱で溶けて曲がるため、耐火性、耐久性はむしろ木のほうが優れているとも言えます。また、木製の箱で飼育したねずみは、鉄の箱で飼育したねずみより長生きするといったデータや、木造のほうが子供の免疫力が高まり風邪をひきにくい、情緒が安定するといった実験結果も出てきています。木は人に優しい、優れた素材と言えます。最近では、病院、老人ホーム等の公共施設で、内装に木を使うケースが増えています。また、国も公共施設での木材利用促進のための法律を2010年に施行しており、今後、公共施設の木造化が進むことが期待されます。

 世界の陸地約130億haのうち、森林は約40億haを占めます。日本の森林率は68.5%で、フィンランド、スウェーデンに次いで世界第3位です。主要国の森林率は、アメリカ33.2%、ドイツ31.7%、フランス28.3%、インド22.8%、中国21.2%、イギリス11.8%、で、日本は有数の森林国家と言えます。

 日本の国土は約3,779万haあり、そのうち約2,512万haが森林で、このうち、杉、ひのき等の人工林は約1,000万haです。日本の山に蓄積されている木材総量49億㎥のうち、人工林だけで30.4億㎥あり、理論上は国内の木材消費を約43年分賄えます。しかし、現実には、2012年の木材自給率は27.9%に過ぎません。^堕蠅靴辛兵繊↓安定した価格、0堕蠅靴振ゝ襪裡海弔揃わなければ、国際競争力があるとは言えませんが、残念ながら、これまで国産材はこれらの条件をなかなか満たすことができませんでした。政府は色々な施策を講じ、2020年までに木材の自給率を50%以上に高める目標を立てています。

 私は常々「課題を見つけたらしめたもので、後は解決策を考え、タイムスケジュールを作って実行するのみ」と、社員に言っていますが、日本の林業の課題と解決策は、ほぼ議論し尽くされていますので、あとは政官民が一体となって実行するのみと言えます。  私は、近い将来、木材の輸出をもっと本格化し、林業を成長産業にしたいと考えています。人口減少で消滅すると言われている地域に雇用を提供し、資金循環を生むことで、地域再生にも役立つことができると思います。林業を若者が夢を持って取り組める産業に変革し、地域社会、ひいては日本全体を元気にすることも可能だと思います。今後の日本林業に、大いに期待していただきたいと思います。