卓話


イニシエイションスピーチ

2006年11月22日(水)の例会の卓話です。

山本幸助君、石垣真君 

「紛争解決の賢い方法」

(社)日本商事仲裁協会
 理事長 山本 幸助 君

 司法改革については、種々お聞きになっていらっしゃると思います。これは小泉内閣の初期の頃から開始され、現在も引き続き行われています。司法改革の中味としては、法科大学院制度や裁判員制度などについては、マスコミなどにも大きく取り上げられていますのでご存知の方も多いと思います。しかし、実は司法改革は十項目ほどが検討の対象となり、そのうち二項目が仲裁や調停に関するものなのです。

 仲裁については何と120年ぶりの改正で、新しい仲裁法が平成十五年に制定されました。また、国内の調停を促進するため、平成十六年にADR推進法が新たに制定されました。ADRと言うのはALTERNATIVE DISPUTE RESOLUTIONの頭文字を取ったもので、日本語では「裁判外の紛争解決手続」と呼んでいます。具体的には仲裁、調停などのことです。仲裁というのは、両当事者の合意のもとで、仲裁人が裁定を下すとそれがファイナルになるという制度、調停は調停人が両当事者の仲立ちをして合意を図る制度です。国際案件は殆んどが仲裁ですが、国内案件は殆んどが調停になると考えています。

 実は、本日は大変良いタイミングでお話をさせて頂いております。と申しますのは、ADR推進法は既に成立しておりますが、慎重な準備がされておりまして、来年の四月一日から施行となります。ところがADRそのものについて国民の認識は薄く、政府が特別立法を制定してまで促進しようとしていることも知られておりません。そこで、政府は私ども仲裁等に関係する者や弁護士の方々に対して機会を捉えて多くの人にADRについて内容を紹介し、その効用をPRするようにと要望をしているからです。

 さて、紛争解決の方法として、裁判に比べてADRの良い点は沢山あります。第一は速いことです。最近は裁判も迅速化が進められておりかなり速くなっていますが、それでもやはり時間がかかります。私どもの協会では国内調停は原則三カ月で結論を出すことにしています。

 第二は、安いことです。申し立ての際の料金も安いのですが、更に実情に詳しい人を調停人として選定するので、両当事者は弁護士をつけないことも多いのです。

 第三は、法律的に黒白をつけるというのではなく、現時点で最も妥当と考えられる解決案を見出すということです。

 第四は、非公開ということです。裁判の場合は憲法によって公開が原則となっています。訴訟で争っていることが公けになりますので、商事関係では、取引関係も断絶するのが通例であります。しかし、調停の場合は、調停人には守秘義務があり、当事者のみが知るだけなので、円満に解決をした場合には取引関係も継続されることが多いと言えます。

 第五は、調停人に、事案について知識経験の深い者を選ぶことができるということです。欧米では、ADRは大変盛んで、紛争の解決手段としては、裁判と並んでほぼ半々という状況です。日本人は一般に訴訟嫌いと言われ、一割司法とか二割司法とか称されるように問題を司法的に解決する割合が小さく、大部分は泣寝入りとなると見られています。ADRを活用することにより、紛争の解決が積極的かつ友好的に行われるようになることを期待する次第です。

 なお、念のため申し添えますが、日本では民事調停や家事審判などが発達しています。これは裁判所において、裁判官が関与して行われるもので、欧米でいうADR(裁判外の紛争手続)とは異なるものであり、また個人を主体とする小額案件が大部分であり、今まで申し上げたものとはカテゴリーが異なるものが多いと考えます。

ウォータージェット船舶用推進機

蠕亞澄‖緝充萃役社長
 石垣 真  君

1.概要
 高速化に適したウォータージェット船舶用推進機について,プロペラ推進との違いや大型化している状況などを紹介します。

 現在,ウォータージェットのメーカーは世界に十数社しかありません。その内,日本では当社を含め3社が国産ウォータージェットを製造しています。

 ジェット機の推進装置によく似ており,航空機と同様にプロペラに比べ高速領域での使用に適しています。この技術は17世紀に最初の特許が出され,その後1960年代にアメリカ海軍がウォータージェット推進の水中翼船の開発を実施した頃から本格的に発達しました。

 ウォータージェット推進の水中翼船のモデルはジェットフォイルという名称で知られており,東京〜伊豆大島,新潟〜佐渡島,等の航路で運航されています。博多〜釜山の航路では,フェリーなら一晩かかるところを43ノット(時速約80km)で航行し3時間足らずで運行しています。

2.構造
 プロペラ推進機は船底に張り出したプロペラで後方に水を送ってその反動で推進しますが,ウォータージェットでは船底から吸込んだ水を高圧ポンプで後方にジェット噴出しその反動で前進します。これら推進原理の違いからウォータージェットでは船底から下には一切張り出す物がありません。また,プロペラ船は舵やプロペラの逆転で操縦しますが,ウォータージェット船ではジェット噴流の方向を変えて操縦します。

3.特長 
.Εータージェットはポンプ構造のためキャビテーション(空洞現象)が起こりにくく,時速100km近くまで効率よく高速航行できます。
▲Εータージェット船では船底から下に張り出す物が一切無い事から,浮遊物との接触事故など無く,浅瀬でも航行が可能です。
ウォータージェットの場合は,急旋回・急発進・急停止が可能です。

4.用途 
 高速走行に適したウォータージェットは,海上保安庁の高速巡視船に採用されています。我が国周辺海域で不審船による事件が多発しており,最近では2001年に発生した事件の際には,追跡する巡視船の威嚇射撃や反撃,応戦の様子が生々しく報道されましたのでまだ記憶に新しいところです。これらの事件を契機に40ノット以上の高速巡視船が数多く建造されることとなりました。

 珊瑚礁の多い沖縄などでは珊瑚礁保護の観点から,高速航行が可能であることに加え浅瀬航行も可能であるウォータージェットが採用されています。また,ダイビングボートの多くがダイバーの安全対策としてウォータージェットを採用しています。

 船底から張り出すものが無い推進機ですから,魚網等の障害物の上を航行する事も可能となります。国土交通省などでは浅い川の調査など行う河川調査船にもウォータージェットが採用されております。

 マリンレジャーでお馴染みの水上バイクも安全性と操縦性に優れるウォータージェットの特長を如何なく発揮しています。

 海外では全長100m以上の大型カーフェリーが地中海を航行するなど,その用途は商船から艦船と幅広く多方面に採用されています。

5.高速船の開発動向 
 海外では高速船の分野において数々の計画が各国で検討されております。例えば,アメリカでは大西洋横断航路に全長265m,出力68,000psのウォータージェットを5基搭載した高速貨物船の計画があります。これら次世代の高速船計画には全てウォータージェットが採用されており,大型化していく方向にあります。

 グローバルな視点で見ますと高速化、大型化の流れは今後も続いて行くものと思われます。