卓話


地区対人地雷除去活動について

2008年3月26日(水)の例会の卓話です。

第2580地区世界社会奉仕委員長
ヤマサ醤油(株)
代表取締役社長 濱口 道雄 君

対人地雷の除去に関する特別委員会 座長
(株)東京衡機製造所
取締役相談役 岡崎由雄君 

 私は2月7日から11日にかけて,第2580地区ロータリークリアランドプロジェクトのカンボジア視察団に初めて参加しました。

たまたま,私は本年度地区世界社会奉仕委員会の委員長を拝命しておりますので,その職責からも,この際,視察団に参加して,この眼で対人地雷除去活動を見ておきたいと考えました。

参加者は一般参加者20名。東京RCから,特別委員会・岡崎団長外3名,ほかに会員3名と私,合計7名。総勢27名のチームです。一行は,首都プノンペンではなく,アンコールワット遺跡のあるシェムリアップに入国しました。

早速,シェムリアップのHALO TRUSTカンボジア本部事務所に行きまして,オリエンテーションを受けました。

 プログラムマネージャーのティムポーター氏によると,カンボジア全土で埋設された地雷は400万個とも600万個とも言われているそうです。一年間の死傷者は,最高の年で4千人はあったが,2007年には300人ぐらいまで激減してきたそうです。600万全部の地雷を撤去することは不可能だが,目指すところは,一般市民の死傷者をなくすことだという説明をうけました。

翌日,我々はヘリコプターで,120キロ離れた,地雷が濃密に埋まっているカンボジア北西部の国境地帯に向かいました。

岡崎団長は,このヘリコプターが格段によくなっていると言われましたが,乗った人間全員が座れる座席はなく,立ったままの人もいるありさまでした。機内には,補助燃料タンクが載っていて,そのタンクに寄りかかっている人もいました。

着いた所は,カンボジア北西部,タイとの国境まで,あと数百メートルというパンティチャマー地区プラサットティバング農耕地九号です。一見,のどかな平原にあり,この地区に無数の地雷が埋められているのが現実とは思えない静けさでした。

まず,村の学校の慰問に出かけました。学校は地雷原から350mしか離れていないという恐ろしい所にあります。丸太を組んだような粗末な校門が目に飛び込んできましたが,建物はフランスのNGOが建てたそうです。

全校生徒(6クラス・260人)が,校門の前から校舎まで整列して,我々を出迎えてくれました。

すべての子供が,学校に行けるわけではありません。家の農業を助けたり,小さな子供の面倒をみたりして,学校に行けない子供が大勢いるそうです。

 校庭で,我々が日本から持っていったカバンや文房具を配りました。元気な子供たちですが,この子たちも,誤って地雷原に入ってしまえば,生命の危険に曝されるという困難な生活を強いられているわけです。

教室も見せていただきましたが,窓が小さく電灯もありません。粗末な机と椅子と黒板以外にはなにもありませんでした。

いよいよ地雷原に到着です。まず現地ブリーフィングです。地域の統括責任者のマケラさんから,松岡昇会員の通訳を通して,地雷原に入るための注意を受けました。

図面を見ますと,赤い点が、地雷が発見されて爆破した所,無地の白い所は地雷撤去が済んでいない所だと分かります。私たちのいる所はクリアランド第9号といわれる所で,300m×100mの3ヘクタールの面積があります。

実際の作業を見学する時は,全員が顔面と胴にプロテクターを着け,ヘルメットをかぶらねばなりません。歩く時は,一列になって行進します。勝手に歩くことはできません。前の人が歩いたところを歩きます。先頭は,勿論,HALO TRUSTの人です。

除去作業は,訓練されたクメール人の除去隊員が行います。まず,シャベルで地面の表面を丁寧に平滑にします。それから,磁気と超音波を併用する手持ち型の探知機を用いて,棒で区切った畳1枚分程のスペースを丹念に探索します。

一人の隊員が探索を終えても,それで終わりではありません。さらにスーパーバイザーがチェックします。それから,もう一度セクションコマンダーが再チェックして,最後にフィールドコマンダーと呼ばれる責任者がOKを出して,はじめてクリアとなります。

このように,地雷の探索は気の遠くなるような綿密な作業の繰り返しです。また,暑い日差しの下で大変に忍耐と持久力のいる作業です。

このような作業は,お互いに15メートルずつ離れた場所で行います。万一の場合の人的被害を最小限にとどめる配慮です。過去一年間に怪我をした人は6人だったそうです。指を飛ばされたとか,足の先を飛ばされた程度の怪我で,死者は出なかったそうです。

赤いポールが並んで立っています。地雷除去作業中の所との境を示しています。ドクロマークのプレートは地雷源を示しています。

ドクロマークのプレートの根元に,三角形のコンクリート板に赤で矢印を示したものがありました。「地雷がある」の印です。その先に,ロシア製の対人地雷が顔を出していました。TNT火薬で240g。炸裂すると足が飛ばされる威力があるそうです。

私たちが行った地域は,ベトナム軍が,クメールルージュをタイに追い出した後,再び戻って来れないように,ベトナム兵が埋めた地雷がある所です。ベトナム兵が埋めた地雷は,おおむね一列に並んでいるそうですが,クメールルージュが埋めた地雷は,まったくランダムで非常に見つけにくいそうです。

白い枠に囲まれたところで,地下に金属反応があるというので,シャベルで掘って調べるところをマケラさんが見せてくれました。

実際,手で掘って,泥をかき出して,その金属片に触れるまで,地雷であるかどうかは分かりようがありません。手掘りで,きちんと確認することが大変重要なことで,これを守らないと事故のもとになるそうです。当然ですが,慎重なうえにも慎重な作業です。

棒の先に,地雷の一部を見ました。やはり単なる金属片ではなく,本物の地雷でした。

別な所にも地雷がありました。小型の対人地雷ではなく,大型の対戦車地雷のようです。このような地雷は,爆破して処理するのだそうです。我々も爆破のスイッチを押す機会を与えてもらいました。爆破の瞬間,迫力ある爆破音は腹にズシンときます。

視察の最後に,ロータリークリアランド第8号が完成して,それを現地に引き渡した記念碑の除幕式に参加しました。2580地区のプロジェクトとして8番目のクリアランドの完成引き渡しになるそうです。

百聞は一見に如かずです。地雷除去作業は気の遠くなるような忍耐の連続であって,その成果として生まれるクリアランドが如何に貴重なものであるかが,初めて実感できた,まことに有意義な機会でありました。