卓話


イニシエーションスピーチ

2005年10月26日(水)

黒川博昭君 
瀬谷博道君

第4076例会

RFIDについて − ユビキタスネットワーク時代を支える基盤技術

富士通株式会社
代表取締役社長
黒川 博昭 君

ユビキタスネットワークという言葉が良く使われるようになりました。ユビキタスとは、
ラテン語で「いたるところにある」という意味です。

 つまり、あらゆる所に情報機器や半導体がいきわたり、それによって、生活が便利になり,安心・安全な社会になり,企業活動の効率化が飛躍的に高まるという時代が到来しつつあります。この基盤の技術として注目されているのが、本日ご紹介をするRFIDです。

 RFIDとは、Radio Frequency Identification の略で「無線自動個別認識」と訳しています。RFIDタグとか、電子タグと呼ばれる半導体メモリとアンテナで構成されるチップと、コンピュータなどの情報機器が、無線で自動式に交信する仕組みです。

 RFIDにより、モノや人の認識を自動的に行うことができ、コンピュータ利用のスピードアップや人的作業を飛躍的に軽減できます。

 一番身近な利用例は、JRの定期券のスイカ(Suica)カードです。このカードには、RFIDタグが埋め込まれています。ワンタッチ改札によるスピードアップや、現金のカードへのチャージによる自動清算が可能になります。これは交通機関での改札はもちろん、アミューズメント施設や駐車場などの、様々な施設の入退室管理に応用が拡がります。

 図書館での利用も進んでいます。本の一冊一冊に、本の基本情報を登録したRFIDタグをつけることにより、貸出や返却の処理が、ワンタッチで可能になります。蔵書管理の作業負荷も軽減します。これは企業における文書管理や、様々な物品管理に応用が拡がります。

 また、食の追跡管理(トレーサビリティ)もRFIDの応用分野です。養豚業での事例では、子豚が生まれると、耳にRFIDタグをつけて生育していきます。情報を追加して書き込みができるというRFIDタグの特長を活かして、その個体にどんな餌が与えられたか、どんな育て方をされたかということを追跡管理します。消費者は、購入時に、その情報を確認して、安心して買い物ができます。

 成田空港で実証実験中の手荷物管理も、追跡管理の例です。行き先や搭乗便名などが登録されたRFIDタグを付けた手荷物を自動仕分けや、荷物の現在位置の問い合わせなどに活用します。

 追跡管理のシステムは、製造業における工程管理や、物流管理などの分野でも、スピードアップや効率化を実現するシステムとして大きな期待があります。

 小学校での生徒の登下校の管理でもRFIDが使われています。生徒は、ランドセルにRFIDタグを装着します。生徒が校門を通過すると、自動的に認識して、何時に登校、あるいは下校したかが登録されます。父兄は、携帯電話やパソコンで、自分の子供の状況を確認することができます。

 RFIDの普及に向けた課題としては、RFIDタグの低価格化、▲宗璽好沺璽ングの普及、プライバシーの保護、す餾殄現牴宗↓デ儡・リサイクル、などがあげられています。

 今後の普及の見通しとしては、総務省は、2007年前後が、ブレークポイントとしています。そして、2010年における経済波及効果を、ベースケースの場合、約17兆円、ポジィテブケースでは、約31兆円、ネガティブケースでは、約9兆円としています。

以上のように解決すべき課題もありますが、RFIDは、企業のビジネスプロセスを革新する、あるいは生活の利便性を向上させる、安心・安全な社会をつくるといったIT利活用を飛躍させる可能性をもった大変夢のある技術です。




 

硝子あれこれ

旭硝子(株) 相談役
瀬谷 博道 君

 人類最初の硝子は、約4000年前のメソポタミヤの焚き火跡から発見されました。古代フェニキアの貿易商人が焚き火をした処、その燃え殻の中からキラキラ輝く透明で小さな固まりを見つけたことが記録にあり、これが人工的なガラスの起源とされています。

 現代社会において硝子は、透明性、硬さ等他には類を見ない性質から多種多様な用途に利用されています。工業的な板硝子の製造方法としては、熔けた硝子を型に流し込む鋳造法や円筒形の硝子を広げて板硝子を得る円筒法から、種々の方法を経て現在はフロート法で作られています。フロート法は、融けた金属スズの上で所定の厚みの板硝子を製造するもので極めて良好な平面性を得ることが出来ます。

 利用法としてまず挙げられるのは、透明ではあるが空間を遮断する性質を利用して建物等のほとんど全ての開口部に採用されているということです。ビル、家屋、自動車等の開口部に使用される硝子はさらに個別に要求される性能を満たすことが求められます。例えば窓硝子においては、表面処理を施すことにより外部からの熱線を反射する機能を持たせるなどして、省エネルギー性を向上させた硝子があります。また家屋用に二枚の硝子の間に特殊フィルムを挿入して破りにくくした防犯ガラスがあり、最近需要が増えています。自動車用における最も大切な性能は安全性です。二枚の硝子の間に中間膜を挟むことにより、衝突事故などで乗員が頭部をフロントガラスにぶつけた時の衝撃を和らげる効果等があります。光触媒による反応を利用したセルフクリーニングの機能を持った硝子も登場しています。

 一方、光学的な性質を利用して、高級レンズや反射望遠鏡に硝子が使用されています。国立天文台ハワイ観測所には、直径8.2メートルの一枚鏡の反射望遠鏡「すばる望遠鏡」があります。「すばる望遠鏡」の主鏡のもととなる鏡材は、1フィート角の亀甲型のシリカをパズル状にまとめて再熔解することにより作られました。研磨は振動等の影響を抑えるためピッツバーグにある石灰岩の廃坑を掘削しなおして深さ30メートルの穴を作り,そこに研磨機を置いて1年間行われました。こうして得られた主鏡の理想面からの平均誤差は14ナノメートルです。これは、山の手線の中に新聞紙一枚程度の凹凸になります。

 また、屈折率の異なる境界では光を全反射するという性質を利用して世界を情報ネットワークで繋ぐ通信用の光ファイバーが作られています。従来テレビのブラウン管のパネル面は曲面でしたが、最近は平面パネルが登場しています。ブラウン管の中は、真空ですので強度を持たせるために曲面が必要であり、これを平面とするには技術的困難を伴いました。現在、液晶テレビやプラズマテレビで用いられているガラス基板は加工前の大きさとしては畳一枚の大きさで3ミリから1ミリほどの厚さしかありません。最近はさらに大型化が図られています。

 ガラス繊維は、文字どおりガラスからつくられる繊維ですが、無機質の硝子そのものが持つ、耐熱性、不燃性等の良さと、繊維がもつ柔軟性をあわせもった素材として、様々な分野でその活用範囲を広げてきました。

 このほか他の物質と反応しにくい性質や着色が出来る性質を利用して、容器として用いられます。また装飾品としての用途も忘れてはいけません。シャンデリア、江戸切子、薩摩切子、スチューベン、バカラ等々の工芸硝子は私達の生活を豊かにしてくれます。

 このように硝子は様々な用途に利用されている素材です。今までの歴史を振り返りながら考えてみると、今後さらに4000年が経過しても硝子に代わる材料は出てこないでしょう。