卓話


ものづくり・匠とITの融合

2018年7月18日(水)

(株)ヤマトメタル
代表取締役 柴田行延君


 「ベアリング」を日本語で言うと「軸受」と言います。軸受とは読んで字の如く、軸(シャフト)を受けて支える部品を言います。回転する部分がある機械には必要不可欠な部品です。軸受は軸を支え滑らかに回転させ、摩擦によるエネルギー損失を防ぎ、回転による発熱を減らす役割を担い、機械の性能を直ちに左右するとても重要な部品です。

 軸受はころがり軸受とすべり軸受の2つに大別されます。弊社が製造するすべり軸受は、高加重、高速回転(2万rpm)及び高熱への耐久性能が要求される為、鋼の軸より柔らかい錫や銅などを主成分とする金属合金を、鋼の上に薄く溶着させた2層の複合材“バイメタル”を加工してつくられます。

 すべり軸受は軸と軸受との間に潤滑油などを使用し、軸の回転運動と共に油膜を形成しながら滑らかな回転を支え、軸の回転運動が正しくつづく限り、油膜によって軸と軸受は接触せず「非接触型の軸受」として半永久的に使えるものとされています。“バイメタル”により、いざ不具合が発生してもすべり軸受側が自ら損傷することで、コストが高い回転軸のシャフトを守る役目も果たします。この特性により、発電所のタービン、ダムや河川の大型ポンプ、プラントにあるコンプレッサ、船舶や海上構造物など24時間稼働し続けるような品質精度要求が高い重工機械の「精密部品」として使用されています。

 次に、すべり軸受を製造するためにはどのような技術が必要なのか…?様々な特性の軸受層を接合した複合材“バイメタル”を製造する為には焼結・圧接・鋳造・含浸といった高次元な接合技術、また、錫や銅合金系のみならず、アルミ合金系、樹脂系など、あらゆる特性の素材でバイメタルをつくる「総合的な接合技術」が、すべり軸受をつくる上で必要不可欠です。また、すべり軸受の寸法はミクロン(1/1,000弌肪碓未任硫湛要求がされるため、鋼と合金を溶着させた上で更に「高度で精密な加工技術」も併せ持たなくてはならない重要な技術です。また、これらすべり軸受が部品として使用される機械類の殆んどが、一件一葉のオーダーメイド(受注生産)であり、それに伴い使用されるすべり軸受も都度、素材や寸法指定が違う、一件一葉のオーダーです。

 量産型工作機械類のIT化が進む時代のなかでも、経済効率性やミクロン単位の精度要求に対応する「ものづくり」をする上では、最新の工作機械を導入するより「匠の職人技」が依然として有効であるという特殊な「多品種小ロット型」ビジネスモデルの業界でもあります。過去から脈々と「匠の職人技」に頼りながら繋いできた技術を、今後も如何に、多様化するニーズに対応しながら進化・伝承していくかが業界全体に於ける重要なテーマです。

 しかし、このテーマに立ちはだかるのが深刻な「人材不足」です。同業各社一応に例外なく同じ問題に直面し、問題解決の糸口を模索しているのが現状です。ものづくり職人のなり手は年々減少し、外国人技術者も期間限定での雇用が前提となる為、満足な技術習得には至らず、今いる「匠の職人」たちが元気で出社しているうちに技能や技術を途切らせることなく、如何に伝承するか…? 「伝家の宝刀」はないので、引続き人材物色に尽力する一方、「匠とITの融合」というテーマのもと、頑固な匠の職人たちを説得しつつ、彼らの頭の中や閻魔帳に記帳されている様々な記録やヒントを引出してもらい、それらをデータベース化させ、「匠のAI化」時代に備えるべく様々な試みを進めています。

 嫌がる職人達との葛藤の末、アクションカム(頭につけるカメラ)も、被ってもらい、作業の段取りや加工する際の要領や技を映像として残すことも試みています。また、匠の職人たちの技、感性や勘所を彼らの「勘ピュータ」から引出して、記録として残すべく日々悪戦苦闘中です。その他、特殊な溶接ロボットも購入し、今はまだ人間の手で行っている“バイメタル”の溶着工程をこのロボットができるようにする開発も進めています。 今後とも日本の「ものづくり」の一端を担う、「ニッチだが必要不可欠な業界」の一員として、世界市場にも目を向けながら「挑戦と進化」をつづけ、その結果、この職業を通して社会への奉仕を為すことができれば本望だと思っております。