卓話


エルトゥールルが世界を救う

2013年9月4日(水)

特定非営利活動法人エルトゥールルが世界を救う 理事長
クオリティ
代表取締役社長 浦 聖治 氏


 私どもの「特定非営利活動法人エルトゥールルが世界を救う」は、世界平和に寄与することを目的として、2012年6月に和歌山市で設立されました。エルトゥールルというのはトルコの軍艦の名前で、1890年に実際にあったエルトゥールル号遭難の話が、このNPO法人の名前の由来となっています。

 さて、いきなり「エルトゥールルが世界を救う」と言っても話が飛躍しますので、順を追ってご説明させていただきます。いずれにしてもキーワードとなるのは日本とトルコの関係です。両国は歴史的にも非常に興味深いつながりがあり、それがまた実に感動的であるのも注目される点です。

 今から30年ほど前にイラン・イラク戦争がありました。その真っただ中の1985年3月157日、イラクのフセイン大統領は「今から48時間後に、イランの上空を飛ぶ飛行機は民間機であろうが全て撃ち落とす」という衝撃の発表をしました。この緊急事態に世界の各国はすぐさま飛行機を飛ばして現地にいる自国民の救出に当たりますが、日本の救出機はなかなかやって来ません。そこには法律によって自衛隊機は出動できないとか、また航空会社は安全性の確保という労組の問題などが横たわっていたのです。

 この時、テヘランの空港には200名を超える日本人が取り残されていましたが、彼らはそれを聞いて愕然とします。日本から救出機が来ないとなると、我々は一体どうなってしまうのか。そんな悲嘆に暮れていた中で、救いの手を差し伸べたのがトルコでした。トルコ政府が専用機を出して日本人を救出するわけですが、このようにトルコが親日であるのは百数十年前の出来事が大きくかかわっています。

 1890年の9月16日、トルコ海軍の軍艦エルトゥールル号が、和歌山県の串本沖で遭難するという事件がありました。これは明治天皇を拝謁して帰国の途に就いていたエルトゥールル号が、不幸にも台風に遭遇して串本沖の紀伊大島付近で座礁、生存者は69名で約500名以上が亡くなるという大惨事となりました。

 この時、紀伊大島の島民たちは総出で救助と生存者の介抱に当たり、例えば冷え切ったトルコ人の体を、島民たちが裸になって抱きしめ体温で温めたそうです。また貧しい漁民の集落ですが、正月にしか食べない白米を炊き、時を告げる貴重なニワトリも供出して食べさせたという話も伝わっています。さらに感動するのは、この献身的な救助活動の話をトルコでは小学校の教科書で取り上げ、子孫にまで日本への感謝の念を伝えていることです。

 そして次にご紹介したいのが映画の話で、日本とトルコの感動的な二つの物語を映画化しようという計画が進行中です。監督は田中光敏さん、脚本は小松江里子さんで、このお二人のコンビネーションで企画が進められています。なお田中さんは「火天の城」という西田敏行さんの主演で、結構評判になった映画をつくられた監督です。また小松さんはNHK大河ドラマ「天地人」を書かれた脚本家です。そしてお二人のコンビは、先ごろ「利休にたずねよ」という市川海老蔵さん主演の映画で、モントリオール世界映画祭の「最優秀芸術貢献賞」を受賞されたことでも話題になりました。

 そもそもこの映画づくりの企画は、串本町長と田中監督が大学の同級生であったことが発端になっています。串本町長からエルトゥールル号の映画化を打診された田中監督が快く賛同し、私も串本町長から相談を受けまずは資金集めから協力することになりました。それで和歌山県内の若い社長さんたちが、この話に結構乗り気であることが分かり、彼らと資金集めの方法などを話し合っているうちに、それならNPO法人をつくろうと最終的に決まりました。

 したがって最初は映画づくりのためのNPO法人設立でしたが、メンバーといろいろ話しているうちに、では映画ができた時点でNPOは解散していいのか、という疑問が浮上してきました。いやそうではないだろう、映画を多くの人に見ていただいてそこから世界平和につなげる、そんな新たなミッションがあるはずだと考えた次第です。まあ見方によっては誇大妄想と言われるかも知れませんが、そうした気宇壮大な志のNPO法人であることをご理解いただけたら幸いです。

 最初の目的である映画ですが、これは日本とトルコの合作映画ということになります。予算が5億6,000万円、日本とトルコそれぞれが2億8,000万円を出し合い、来年の4~6月にクランクインというスケジュールが組まれています。またNPO法人の現状ですが、会員数は443名、集まったお金は約1,100万円で、そのうちの500万円を先日NPOに寄付いたしました。今後の目標としては、来年の3月までに2,000万円を集めようと思っております。

 ではここで「なぜエルトゥールルが世界を救うのか」という話に移りますが、ポイントは二つあって、まず一つは博愛の精神です。とにかく困っている人を見たら助けるという人類のDNAは、民族とか国境を越えて備わっているはずです。それはエルトゥールル号の時に証明されましたし、またイラン・イラク戦争の時にも証明されたわけです。最近は殺伐とした世の中であることばかりが強調されますが、人間が本来持っている博愛とか協調の精神を呼び起こすためにも、私どもの映画が役立つことを願っています。

 それからもう一つは、日本とトルコがタッグを組むことによって、本当の意味で世界を平和に導けると考えている点です。これはどういうことかと言いますと、19世紀から20世紀にかけてヨーロッパおよびアメリカは、とにかく何でも競争、競争の時代であったと見ることができます。ニューヨークのデモやEUの一部の国の暴動や失業率の高さは、結局、熾烈な競争の時代のツケとかヒズミではないか。このままでは早晩、世界経済は破綻に向かうのではないかという懸念があります。

 そうした中で人類が今後の繁栄を目指すためには、もっと調和とか共生を目指したものになっていかなければなりません。その場合、調和を主導するのはやはりアジアだと思うわけです。競争社会の欧米ではなく、協調の伝統あるアジア、それも和の心を持ち合わせている日本がその役割を担っていくべきでしょう。  そこで日本とトルコの話になりますが、とにかくトルコは世界一の親日国だと言われています。その親日国が、今では世界でも指折りの経済成長国に数えられています。そんなトルコと日本が手を結ぶことによって、アジアから真の世界平和を目指していく。「エルトゥールルが世界を救う」というキーワードは、まさにそんな志につながっているわけです。

 トルコが親日国である理由は、エルトゥールル号の他にも色々な背景があって、例えば日露戦争もその一つです。トルコは長年にわたり、ロシアの圧政に悩んでいました。しかし日露戦争では東郷平八郎率いる日本海軍が、世界最強と言われたロシアのバルチック艦隊を撃破、日本海海戦で圧勝します。これによって日本はよくやってくれたとトルコは歓喜し、当時のトルコでは子どもに「トウゴウ」と名前をつけることが流行ったと伝わっています。

 もう一つはトルコ復興の祖アタチュルクが、日本の明治天皇を非常に尊敬していたという経緯があります。オスマントルコが終焉を迎えて、もう一回再興させた立役者がアタチュルクで、彼は自分の部屋に明治天皇の写真を掲げ、ことあるごとに眺めていたそうです。

 それと朝鮮戦争の時、トルコは連合軍として参加していますが、例えばトルコ兵が負傷して帰国途中に日本に寄ることがあります。するとトルコ兵は日本人の礼儀正しさや街の美しさに驚き、何て素晴らしい国だろうと感心したようです。あとはやはり戦後の復興ですね。戦争で本当に傷んでしまった国を、こんなにも早く蘇らせて経済大国になったことを極めて高く評価しているわけです。

 実は私もトルコに行く機会がありますが、道を歩いていると小学生から「あなたは日本人?」とよく聞かれることがあります。私が「そうだよ」と答えると、小学生がどんどん集まってきて「一緒に写真を撮ろう」と私を囲んだ集団写真が出来あがります。私に限らずトルコへ行かれたことのある方なら、きっと似たような経験をされているのではないでしょうか。トルコでは子どもからして親日家であることを感じるエピソードです。

 トルコについてさらに注目したいのは、その地理的条件です。トルコはヨーロッパへの入り口に当たります。またイスラム圏への入り口であり、産油国への入り口になります。さらには北アフリカへの入り口であり、トルコ系諸国への入り口で、しかも若く優秀な労働力が豊富であるのも特徴です。

 繰り返しますがトルコは世界一の親日国と言われており、今元気をなくしている日本の応援団長になってもらうのもいいでしょう。そして今後、世界でも重要な役割を果たすトルコと日本は力を合わせ、アジアからの調和ひいては世界平和を訴えていけたらと考えています。そのために是非とも魅力的な映画を完成させ、日本とトルコの新たな時代を切り拓きたいと念願しています。

          ※2013年9月4日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。