卓話


イニシエーションスピーチ

2008年4月16日(水)の例会の卓話です。

鮫島章男君・安田郁生君 

セメント産業の変貌

太平洋セメント(株) 代表取締役会長
           鮫島章男君


 本日は、私が勤務する太平洋セメントの最近の事業の取組みを中心にご説明させて頂くことで、セメント産業が社会の中で果たす役割の変貌を皆様にご紹介させて頂きたいと考えております。

 現在、世界のセメント需要は年間約23億トンでして、中国を中心とするアジアの伸びが著しく、世界的に見ると成長産業であるといえます。

 一方、国内では既に成熟産業であり、近年では公共投資の縮減等によりセメント需要は頭打ちになっており、年間5千万トン台後半で推移しております。

 ご存知の通り、セメントは鉄と並んで社会資本形成のための重要な基礎資材であり、そうした側面から社会の動脈産業として位置づけられて参りましたが、
一方で、近年環境問題への社会的関心が高まる中でセメント産業の静脈産業としての側面が注目されてきております。

 セメント産業は、古くから原料として、電力会社から排出される排脱石膏やフライアッシュ、製鉄会社で排出される高炉スラグなどの産業廃棄物を受け入れて来ております。

 近年では、これらに加えて廃タイヤ、廃プラスチック、廃パチンコ台、建設発生土など様々な業界から産業廃棄物を原燃料として受け入れセメント製造に利用しており、今やインダストリアル・クラスタリングの中心として無くてはならない存在になっております。

 また、私たちの家庭から排出されるゴミやその焼却灰といった所謂一般廃棄物も積極的に受け入れ、ゴミの最終処分場の延命にも一役かっております。

 我国では産業廃棄物が年間約4億トン、一般廃棄物が約5千万トンの合計4億5千万トンのゴミが排出されていると言われていますが、セメント産業では、約3千万トンの廃棄物等を受け入れ、使用しております。
これはセメント1トン当たりに換算して423kgのゴミを使用しているということになります。

 さて、ここでセメント産業におけるゴミ利用の一例として、埼玉県日高市にある当社の埼玉工場で取り組んでいる都市ゴミ資源化技術「AKシステム」をご紹介致します。

 「AK」とは「アプライド・キルン(Applied Kiln)」の略で、遊休となったセメント焼成キルンを、都市ゴミの発酵装置に転用したシステムです。

 転用された遊休キルンは、「資源化キルン」と呼ばれ、ここに、収集袋に入った都市ゴミをそのまま投入し、約3日間かけて通過させます。

 この間に、生ゴミ類は微生物によって分解が進み、悪臭のないハンドリングが良好な状態になります。また、発酵による発熱で雑菌類も死滅しています。これに異物除去とサイズ調整を施し、セメントの原燃料として活用します。
プラスチック類は投入時と同じ状態で出てきます。

 これまで分別収集されていたプラスチック類と生ゴミはAKシステム導入を
機に分別の必要がなくなりました。

 このシステムは2002年に運転を開始し、人口約5万6千人の日高市の発生ゴミの全量にあたる、年間約1万5千トンを受け入れ、セメント資源化しております。

 また、AKシステムはCO2の排出削減にも貢献しています。

 つまり、AKシステム導入前の都市ゴミは、全て焼却処理されており、焼却によるCO2が発生していました。

 これ以外にも、焼却施設の運転、焼却灰の運搬処理などの過程でCO2発生がありますが、これらはAKシステムの導入によって完全に無くなりました。

 一方でAKシステムの運転に伴うCO2排出もありますが、トータルで見た場合、都市ゴミ1トン当たりで約520kgのCO2排出削減となります。

 実は、セメント産業は石灰石を焼成して酸化カルシウムを得る過程でCO2が発生します。つまりCO2を排出せざるを得ない「原罪」を背負っています。

 このため、私共はこれまでに培った環境技術の活用や、エネルギー効率の一層の向上を図ることなどで、少しでもCO2排出量を削減し、地球温暖化防止に寄与して行くと共に、今後も産業クラスタの中核として、循環型社会形成にも貢献していきたいと考えております。

GE前CEO/ジャックウェルチの経営哲学

ピナクル(株) 代表取締役会長兼CEO
        安田育生君 

 私はかつて勤務していた長銀が国有化される際、GEからオファーを頂き、GE 日本支社の事業開発本部マネージングディレクターに就任致しました。

 長銀が国有化になった以上転職をせねばと考えていた折、数々の会社からお誘いを頂いた中から、迷うことなくGEを選択しました。理由は、ジャックウェルチという経営者が私にとってヒーローであったからです。確かフォーブスであったかと思いますが、20世紀最高の経営者に彼は選ばれています。私は「ジャックの元で生きた経営を学びたい」という気持ちからGEを選択致しました。

 もうひとつ私の転職の動機になったことは、1980年代私が長銀ニューヨーク支店に勤務しておりました際、GEの金融部門であったGEキャピタルとも取引をしておりました。その頃、GEキャピタルは格付けAAA、長銀も同様AAAでした。なぜ10年余りの間に、片方のGEはAAAを維持したまま拡大を続け、長銀は国有化されるまでになってしまったのか、その答えを知りたいとも思いました。

 その答えは入社してわずか数ヶ月で発見するに至りました。入社して最初に感じたカルチャーショックはGEジャパンの社長にこう言われたことです。「GEは毎年二桁成長をコミットしている。それに貢献するように。」「但し勘違いしてはいけないよ。二桁成長とは当期利益であって、売り上げではないよ。GEではP/Lの一番下のライン(Bottom Line)のみを意識し、売り上げは二の次なんだよ」と言われたことです。

 またある時、私自身でこういうことにも気がつきました。「外資では人件費は変動費になっている」ということです。人件費を「激しく差のつくボーナス」や「解雇による人の入れ替え」によって変動費化させているようです。

 さて20世紀最高の経営者といわれたジャックウェルチの経営哲学を語る上で数々のユニークな経営手法があります。有名なシックスシグマやワークアウトなどです。また彼は記憶力が非常に高い人でした。ある時、彼が来日中に彼の滞在先ホテルで偶然廊下ですれ違った際、どうせ一年も前に鞄持ちをやった私のことなど覚えてないだろう、と横を通り抜けようとした時、彼の方から「ハイ、YASUDAさん!」と声をかけられました。その時私は「この人の為なら死んでもいい」と思いました。皆さんも社員の名前はなるべく覚えたほうが良いと思います。

 また彼は逸話を作る天才でもあります。数々の逸話も話せばきりがないので割愛いたします。しかし、逸話が伝説となって社員の尊敬を集めるきっかけになってることは確かです。

 数々ある経営手法や逸話の中でも今日私が皆さんにこれこそ「ジャックウェルチ教の真髄」ではないかと思うものをご披露したいと思います。それはお手元に配布しましたGE Valueというものです。これは意外に本などでも書かれていませんし、知られていません。これを皆さんでじっくり読んでみてください。こうした訓示ともいうべき前向きな数々の言葉の一番上に書かれている言葉に注目下さい。「GEのリーダーたる者はゆるぎないインテグリティーを持て」と書かれてあります。

 インテグリティを訳せる適当な日本語が未だに見当たりません。要すれば「人の道に外れた悪いことをするな」というような意味でしょうか。ジャックは念頭の言葉で世界中の社員へのメッセージでこう言ったことがあります。「野球の世界にスリーストライクアウト(三振)はあるがGEではインテグリティ違反はワンストライクアウトだ!」

 昨今の相次ぐ企業不祥事の中、このインテグリティ遵守の精神が社員の末端にまで行き届いていれば今日の日本のようなことを招かなかったのではないかと思われます。

 GEは100年以上も前からニューヨーク証券取引場の代表銘柄であり、100年前から変わらず代表銘柄であり続ける唯一の会社です。長い間成功を続けられる秘訣がこのGE Valueの中に生きているように思います。