卓話


京都から世界へ届けるメッセージ
−KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭−

2017年3月22日(水)

一般社団法人 KYOTOGRAPHIE
共同創設者&共同ディレクター
ルシール・レイボーズ氏


 私はフランスで生まれ、医学の研究に従事した父に伴い、幼少時代を西アフリカのマリ共和国の首都バマコで過ごしました。その後、南仏のカタルニアで青春時代を過ごし、十代で写真家になりました。20歳のころ移ったパリで、ブルーノートやヴァ―ヴ・レコードなど音楽関係の写真を撮り始めると同時に、エルやヴォーグ、ルモンド紙など国際的なプレス向けに世界各地からドキュメンタリー写真を寄稿しました。

 1999年に坂本龍一氏のオペラ「LIFE」に参加する機会を得ました。私にとって日本文化、より具体的には神道に出会う大変重要な経験となりました。私は神道がアフリカのアニミズムに近いと感じます。このテーマを掘り下げるべく度々日本を訪れ、何年もの間ニューヨークとパリ、日本を行き来しました。

 2007年に東京に拠点を移し、フランスをはじめ国際的な雑誌の特派員として写真を撮り、何冊かの本も出版しました。直近のものは作家の平野啓一郎氏との共著です。

 2011年には経験の幅を広げ、日本文化により深くかかわる機会を求めて京都への移住を決めました。同じ時期に出会った照明家の仲西祐介氏も、日本社会に前向きなインパクトを与える新たなプロジェクトを始めたいと意気投合し、京都に移りました。

 5年前に京都に移住してから、あちこち二人でサイクリングし、新たな発見をする中で、国際的な写真フェスティバルを始めてはどうかとの思いに至りました。写真を仕事とする私達は、悠久の古都・京都で創造力を掻き立てられました。それまでの経験やネットワーク、それぞれの文化的背景をベースに、大規模な国際的イベントを古都で始めることができました。長年にわたり培われたプロとしての経験から、日本の景観には何かが欠けていることに気づきました。多才なメディアである写真の素晴らしさを、大々的に鑑賞するチャンスを逃していたのです。

 フランス人である私は、アルル国際写真祭や国際写真ジャーナリズム展、パリフォトのような催しからインスピレーションを得て、写真の世界に国際性という新たな奥行きをプラスする芸術イベントの持つ力を理解していました。仲西祐介氏と私はこのようなイベントを日本でも開催すべきだと確信しました。日本はまさに写真大国と言える高度な技術を持ち、世界的に優れた写真家を多く輩出しながら、写真は然るべき評価を受けていませんでした。

 KYOTOGRAPHIEが目指すのは、才能ある日本の写真家と国際的アーティストに発表の場を提供し、世界に向けて窓を開くことです。準備を通じての様々な発見と経験に刺激され、私達の構想は膨らみ、このフェスティバルをKYOTOGRAPHIEと名付けました。あの美しいアルル国際写真祭のように、時空を超える旅となるフェスティバルを目指しました。また内外の写真家の作品を展示し、京都の持つ伝統と現代性の両面を表現することが重要だと考えました。本物が持つ国際的なアピール力を兼ね備える京都は、私達にとって理想的な舞台となりました。

 KYOTOGRAPHIEでは神社仏閣や町家、茶室など京都らしい場所に作品を展示し、見る者が芸術をより身近に感じることをねらいました。プロの建築や空間デザイナーの協力を得て、写真と会場が相乗効果で価値を高めることを目指しました。私達の望みは、京都の伝統的な職人さんの力も借り、京都のより広い層の方々にこの催しを自分たちのイベントだ!と感じて頂くことでした。フェスティバルの会期中、多数の写真が優美な歴史的建物あるいは近代建築の空間に展示されます。伝統的な職人の技を表現する作品から、最先端技術とのコラボに焦点を当てたものまで多彩です。展示形態も従来の画廊の枠にはまらず、実際に居住する空間との調和をもつよう展示されています。

 私達のプログラムは、文化的背景にとらわれず、どなたでも楽しんでいただけるよう幅広い内容となっています。世界が直面する課題と関連し、かつ人類の美と多様性を反映するテーマを毎年定め、常に環境と社会的側面に配慮しています。KYOTOGRAPHIEのようなイベントは、人々の良心にうったえ、マイノリティの方々やデリケートな問題に光を当てる役割を担っています。写真には言葉の壁がなく、ダイレクトに訴えます。必ずやより良い世界の構築に向けて貢献できるでしょう。

 毎年異なったテーマで来場者を惹きつけることを目指すこのフェスティバルでは、「お祭り」の精神も中心に据えられています。展示と同時開催で、多くの公開プログラムや教育プログラムが企画され、ワークショップや有名写真家によるクラス、ポートフォリオレビューなど多岐にわたります。次世代の育成にも力を入れ、学校や子供たちの参加を呼び掛けています。

 KYOTOGRAPHIEは初回より国際的な組織の協力を得て、真に国際的なイベントとしてスタートし、定着してきました。回を重ねるごとに国際的な連携を広げ、今日ではフランス国立ギメ東洋美術館、テート・モダンアートギャラリー、フランス国立造形芸術センターなどの組織、アルル国際写真祭、中国の連州国際写真祭、スペインのフォト・エスパーニャなどの写真祭と強いパイプを持っています。この強力なネットワークにより、私達は日本の写真家に新しいチャンスを生み出しているのです。

 KYOTOGRAPHIEは世界中から新たなプロジェクトを持ち寄り、絆を育む交流の場となりました。KYOTOGRAPHIEは日本のプログラムをもっと海外へ紹介するよう、多くの要請を受けるようになりました。一例を挙げれば2016年のPLANKTON展のプロジェクトです。クリスチャン・サルデ氏と高谷史郎氏、坂本龍一氏と私がコラボして実現しました。この展覧会はパリのカルティエ財団現代美術館で半年にわたり開催され、その後コロンビアとブラジルを巡回する予定です。

 ご覧のように写真や開催テーマに対する理解を深めるため、キュレーターやアーティストとのトーク、ワークショップを企画しています。またポートフォリオレビューを通して、若手写真家とキュレーターやギャラリストをつなげ、キャリアを広げるチャンスを生み出します。コンサートや子ども達のワークショップも、参加者同士が楽しめる場となっています。来場者は京都市内をまるで宝探しのように巡り、開催場所の目印となっている赤い暖簾を見つけて回り、毎年企画される15〜20の展覧会のほか、トークイベントやワークショップなどのイベントに参加しています。

 KYOTOGRAPHIEは、取組みの初期段階から寄せられたスポンサー企業や個人サポーターからの信頼とご厚意、のちにご協力を仰いだ政府機関からのご支援がなければ実現できませんでした。そして各回にご参加くださった才能ある写真家の皆様のおかげで、毎年開催が期待される写真祭になりました。

 私達は常に創造的で有意義な協働を最優先に図ってきました。KYOTOGRAPHIEをさらに大きく活性化させ、継続していくために常に新しいパートナーを探しています。前回のKYOTOGRAPHIEは1カ月の開催期間中、89,000人にご来場いただきました。

 今回私たちは5回目となる写真祭を、来月中旬より開催することを誇りに思います。 2017年のテーマは「LOVE」です。「写真は生命と愛の交わりです」写真とは感じること、触れること、そして愛することです。

 この度の第5回目の記念となるKYOTOGRAPHIEでは、写真の中で、そして写真を通して愛を賛美したいと思います。

 LOVEとは情熱であり、恍惚であり、また祈りです。絶望でもあり、時には狂気にもつながります。悦びであり、希望であり、家族でもあります。そして無限に広がっていきます。LOVEは我々を互いにつなげ、自然とも結びつけます。

 このプログラムでは、多様かつ献身的、親近感のある写真家の視点を通してLOVEに対する考えを皆様と分かち合いたいと思います。

 4月15日〜5月14日にかけて、京都市内の各所で開催されます第5回KYOTOGRAPHIEに是非ともお運びください。ご清聴ありがとうございました。