卓話


イニシエイションスピーチ
水を育む森づくり

2013年10月30日(水)

サントリー食品インターナショナル
代表取締役社長 鳥井信宏君


 ウイスキーやワイン、ビール、清涼飲料など、サントリーの事業の多くは、水や農作物などの自然の恵みによって支えられています。創業から百十余年、雄大にして精妙な自然の営みに対する敬意と感謝のもと、事業活動を継続してきました。

 とりわけ、いい水がなければ、ビールも、ウイスキーも、清涼飲料も、なにひとつつくることが出来ません。水、なかでも良質な地下水である「天然水」は、サントリーにとって生命線であると言っても過言ではありません。サントリーは、「水と生きる」というコーポレートメッセージを掲げ、この貴重な水のサステナビリティ(持続可能性)を実現するべく活動を行っています。

 そうした活動のひとつが、「天然水の森」と名づけた水源となる森林の保全活動です。「天然水の森」の活動は、全国各地の工場の水源にあたるエリアで、森林が持つ、地下水を育む力を維持、向上させるために森林整備をしていこうという活動です。

 2003年に熊本県の阿蘇・外輪山からスタートし、現在までに設定した「天然水の森」は、全国13都府県17ヶ所、面積にして7,600ヘクタール以上にのぼります。これは、東京の山手線内の面積よりもやや広く、大阪環状線内のほぼ2倍の広さにあたります。また、この面積は、「工場でくみ上げる地下水よりも多くの水を生み出す」という理念を満たす広さでもあります。

 「天然水の森」の活動とは、空から降り注ぐ雨が、大地に達し、地中に浸み込む際の入り口である森林の土壌を、地下水を育むのに最適な状態、つまり、多様な植物に覆われ、昆虫や微生物も豊かな、フカフカの手ざわりの土づくりを最終的な目標にしています。

 「天然水の森」での具体的な活動をご紹介します。まずは、サントリー社内に設置した、水専門の研究機関である「水科学研究所」が、水文学(すいもんがく)に基づいた水に関する調査を行います。水の成分分析に加え、地下の地質・地層の調査、工場とその周辺の井戸情報などにより、どこから、どのような地層を通って、どのくらいの歳月をかけて流れてきた水なのかを、推定していく。これにより、全国各地の工場の水源となるエリアを特定することができます。

 さらには、植生、土壌、鳥類、昆虫、砂防、微生物など、さまざまな分野における多彩な研究を、それぞれの分野の第一線の研究者、大学の先生方、有識者の方々とともにすすめております。その研究内容をふまえたうえで、それぞれの森に合った整備計画を立てて整備活動をおこなっています。

 日本の国土の約7割は森林ですが、整備が遅れ、一歩足を踏み入れると真っ暗になっているスギやヒノキの人工林が数多くあります。そのような森では、木をまびく「間伐」や細い不要な枝を切り落とす「枝打ち」を行い、地面に光を入れることから始めます。やがて、地面から背の低い植物が茂り、モグラやミミズなど多様な生物が土を耕す森へと変化し、フカフカの土が形成されていきます。このような作業は、「天然水の森」の地元の森林組合の皆さまと協力して実施しています。

 「森林の整備」というとすぐに「植樹」が連想されるかもしれませんが、それぞれの森林によって抱える問題は様々であり、求められる整備作業も異なってきます。

 いま日本の森で起こっている、手入れ不足のスギ・ヒノキの人工林の問題、鹿の食害、マツ枯れ、ナラ枯れ、いずれも生物多様性の劣化が大きな要因であると考えられています。従って、「その土地本来の生物多様性を、いかに再生していくか」が根本的な課題だといえます。多様性に富んだ豊かな森をつくることで、多様性に富んだ、豊かな土をつくり、その土の力で良質で豊かな地下水を育む。それが、「天然水の森」の目指しているところです。

 「水と生きる」企業として、私たちサントリーは、50年後、100年後をみすえながら、水と生命(いのち)の未来を守る「天然水の森」の活動を継続していきます。


イニシエイションスピーチ
安全安心サービスの展望

2013年10月30日(水)

綜合警備保障
代表取締役社長 青山幸恭君


 1.安全安心サービスとしての警備業の歴史
 江戸時代は藩単位で武士自ら藩内警備を行っていました。明治維新以降、警備は警察権力へ集中しており、業としての警備業はありえませんでした。

 米国では、西部開拓時代に町の治安維持のため保安官制度が生まれました。当時の辺地には連邦警察の力が及ばなかったため、市民が自ら地域の治安を維持しなければなりませんでした。このため、州境を越える鉄道警備のためピンカートン社のような警備会社が誕生しました。

 1980年代から英国、米国では刑務所の運営、軍関係のアウトソーシングが行われるようになりました。イラクやアフガニスタンでは、民間軍事会社が兵站や情報収集と分析も業務として行っています。

 わが国では1960年代に警察(公権力の行使)の補完のために警備会社が設立され、1964年の東京オリンピック・大阪万博を経て警備業の発展が始まりました。

2.業界の現状
 市場規模は、昨年末で3兆2千億円です。9千社強の警備会社があり、1972年の警備業法施行当時と比べると、約12倍。警備員の数は、昨年末54万人、同法施行当時の約13倍に増加。警察官の約2倍です。

 警備業法は、警備業について必要な規制を定め、業務の適正な実施を図るための法律です。警備業務を営む者は、各都道府県の公安委員会の認定を受けています。

 警備には施設、雑踏、輸送、身辺警護と4つの業態があります。狭義の意味で、お客様の生命、財産(ハード、ソフト:情報も含む)を守るのが基本ですが、最近では暮らしを守るという観点から介護等を含めた安全安心サービスとしての広がりが出てきています。

 現在は、ほとんどの公的施設・金融機関・民間の施設は出入管理、巡回警備、常駐警備、機械警備業務などの何らかの警備がなされています。原発施設の警備、核燃料などの輸送時の警備も行われています。

 企業は、社員を守衛や宿直として勤務させた時代から、経費削減、業務効率化、専門性の観点から人ごと外注する時代になり、有事の際に警備員が駆けつける機械警備で画像・音声を監視センターで確認できるシステムが普及しています。

 金融機関にあっても、コスト削減とリスク管理向上の観点から警備会社がその受け皿として多くのサービスを提供しています。

 なお、刑務所等運営事業(PFI刑務所)を行っているケースもあります。公権力の行使は官、刑務所の警備業務及び宿日直は民がやるということです。

 個人のセキュリティ導入率は2%ほどですが、これから普及が進む市場です。スマートフォンで警備操作や画像の確認ができ、見守りや医療相談に特化した高齢者向けのサービス、清掃や家事代行、子供や女性向けのセキュリティシステム等が提供されています。

 警備会社の仕事は防犯防災を通じて社会の安全・安心を守るための社会貢献です。守りのプロである社員を小学校へ講師として派遣する子供向け防犯講座や、特殊詐欺対策や救急救命を行う高齢者向け防犯講座、ストーカー対策の女性向け防犯講座を行っています。

3.2020東京オリンピック・パラリンピックへ向けて
 水野パストガバナーのご尽力もあり、9月8日、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まりました。招致ファイルには官民の調和のとれたセキュリティが記されており、警察当局との連携の中で「日本らしいおもてなしの心」と21世紀型の警備を業界全体で国際的に示す機会となることでしょう。そのためにはテロなどの危機管理を含めた高品質なセキュリティをハード、ソフトの両面から構築していく必要があります。

 1964年東京オリンピックの成功でわが日本の戦後復興を世界に示したように、日本のイメージを一新するためにも、世界にこの心意気を示したいところです。

 尚、警備会社の運動部は各種スポーツ分野で活躍している選手をオリンピックや世界選手権に数多く輩出しています。今後もスポーツを通じた社会貢献活動を実施していきます。