卓話


With/After コロナにおける公認会計士の役割

2020年11月11日(水)

森公認会計士事務所
代表 森 公高君


 公認会計士は、新型コロナウイルス対策について、政府の支援施策に関わる相談や支援申請手続きの補助等で少なからずの貢献をしているところですが、コロナ禍で最も対応に苦慮している業務は監査業務です。

 現在、公認会計士は、業務補助や実務補修を終了していない、いわゆるジュニアを含め約38,000人いますが、概ねその半数が上場会社の監査業務に携わっています。我が国の上場会社は約3,500社、そのうち3月決算会社は約2,700社あります。その決算作業は、6月末の株主総会に向けて、4月の決算締め作業から全力で走り出すことになります。

 今年は丁度、緊急事態宣言の期間と重なりました。例年、決算業務は、かなりタイトなスケジュールで行われ、総務、経理等関係部署、更に外部監査人の公認会計士が、密閉空間、密集場所、密接場面、まさに三密状態で行っています。そのため、政府が音頭をとり、公認会計士業界、経済界、証券取引所等の関係団体、関係省庁を集め、連絡協議会を立上げ対策を立てました。対策は、三密を避けることが主眼となり、決算発表や総会開催時期の緩和や柔軟化等となりました。

 総会を7月に開催した企業は、コロナの影響以外の理由もあったようですが、61社に上りました。かねてから総会開催日の分散化が推奨されているにもかかわらず、6月下旬に集中している現状に鑑みれば、かなりの効果があったといえます。

 監査法人では、監査チームを、企業内、監査法人、自宅の3ヶ所に分散し、可能な限りリモートで対応しました。監査に必要な書類のPDF化によるデータ転送や、財務・会計の電子データでの監査法人への提供等、企業、監査法人の協力の下、リモート環境が整備され、無事に決算が行われました。在庫や、重要な契約書等、現物を確認する必要があり、どうしてもリモートでは対応できないものがあるという課題も出ました。

 今回のコロナ禍で明確になった課題は、政府も提唱しているところですが、DXの推進、規制改革といえます。デジタル化は、監査法人では、企業の重要なデータを受入れる強固なセキュリティ体制の整備が必要です。同時に大量データの入手により、AIの活用を推進し、業務効率化を進展させる必要があります。

 また、在庫等の現物の確認においては、ドローンを遠隔操作するなど新技術活用の検討も対象となるでしょう。企業では、受注販売、購買、在庫、会計等の業務プロセス、親会社と子会社、国内と海外等、それぞれのシステムが統合されずに、本社でタイムリーに効果的にデータ活用ができないケースがあったとの課題が寄せられています。

 また、契約書等が本物であることの信頼性は、ブロックチェーン技術が活用できるといわれています。金融業界では、送金や取引所の清算・決済等での活用が検討されています。経済安全保障の面では、個々の部品の生産者管理が求められるケースが出ており、サプライチェーンマネジメントにも有効でしょう。こういった企業や社会制度のDX推進への貢献も期待されるところです。

 規制改革では、先ず、押印廃止です。公認会計士法等により監査報告書には、監査業務執行者の署名・押印が求められます。今般のコロナ下では、PDFの活用、署名・押印した監査報告書の提出時期の柔軟化で対応しましたが、押印廃止に向けた改革が必要です。また、決算手続き、株主総会スケジュールに関しても、現場の負担軽減の観点から、規制や慣習を見直す検討も必要です。

 コロナは人類の敵ですが、コロナの感染拡大により、社会、経済活動に制限が生じ、従来から改善が求められていたこと、本来、取入れておくべきことが、明確になったのではないでしょうか。同時にコロナは改革のコンセンサスを作ってくれると考えます。国や地方自治体、企業、団体等の組織、また、家庭においてもコロナを機に変えるべき点は変えていくことが必要と強く感じる次第です。


The Art of the Handshake
(握手からひも解く欧米の本音と建て前)

2020年11月11日(水)

ロールシャッハ・アドバイザリー(株)
代表取締役 ジョセフ・クラフト君


 アメリカでは握手の種類が 20 以上あり、それぞれに意味、心情が込められております。日本に「建前と本音」があるように欧米では、握手を筆頭にボディ・ランゲージから本心などを悟ることが出来ます。身ぶりや表情から意思を研究する動作学を「Kinesics(キネシクス)」と言います。下記に代表的な握手そしてそれらの意味・心情を紹介させていただきます。そしてそれと照らし合わせて、トランプ大統領と安倍総理の関係を振り返って日米関係を再検証してみたいと思います。更に下記の情報を参考に、今後外国でのネットワークづくりに多少なりとも貢献できれば幸いと存じます。

 代表的な握手をいくつか紹介いたします。「Dead Fish(デッド・フィッシュ)」とは死んだ魚を掴むことが由来となっているように嫌気、気持ち悪い、軽蔑、会いたくないなどネガティブな心理を表す握手です。ガッチリ手を握るのでは無く、手先だけで無気力、消極的な仕草です。2017年1月にメイ英首相あるいは2017年5月にベルギー国王がトランプ大統領との初対面でみせた姿勢です。

 次に、「Shake(握手)」と「Hug(抱擁)」が合わさる握手を「Shug(シャグ)」と言います。シャグは、親近感、好感あるいは仲間意識を表す仕草に逞しさがあるので、基本的に男性あるいはアスリートの間で良く見られます。シャグはオバマ大統領が友達あるいはアスリートに会う際に良くみせた姿勢です。

 「Bone Crusher(ボーン・クラッシャー)」骨が砕けるほど、あるいは指関節が白くなるぐらい力いっぱい握ることから名づけられました。この握手は相手を威嚇、威圧、脅威を与えることで優位性、上下関係を確立する攻撃的な握手。最も有名な例として2017年5月にトランプ大統領とマクロン仏大統領の初対面の席でお互いの拳が真っ白になるぐらいのせめぎ合いは米仏メディアで話題になりました。

 「Shake & Cover(シェーク&カバー)」は、(左)手を相手の手の甲に添える握手。心理学上、二つの意味合いがあるとされます。 一つは、「私はあなたより上で強い」と上下関係を確立する意識があります。もう一つは、「私はあなたに同情している」あるいは「興味・好感を抱いている」とポジティブな意味があります。相手の手の上に沿える場合は好感度を表すことが多いですが、手首、肘あるいは肩に回す場合は下心や企みまたは上下関係(優位性)を確立しようとする意味も持ちます。プーチン露大統領がブッシュ大統領と会う度にシェーク&カバーを行い、優位性をアピールしたことは有名な話です。

 最後に日本でも有名な「High Five(ハイ・タッチ)」と「Fist Bump(グー・タッチ)」があります。手のひら(五本の指)を上げて合わせる動作が「ハイ・ファイブ」ですが、明るい挨拶、称賛や祝勝を分かち合う仕草で、連帯感・チーム感を高めるメッセージがあります。そして拳を軽くあてるのが「フィスト・バンプ」。これは「ハイ・ファイブ」の進化系で、より強い友情や連帯感を意味。本来、拳を向けることは攻撃・敵対心の象徴ですが、逆に拳を向けられるほど仲が良いという意味もあります。これはオバマ大統領、キャメロン英首相あるいはトルドー加首相など若手の首相が見せる仕草であります。

 今や、安倍総理とトランプ大統領の蜜月は広く承知されています。しかし、2017年の早い段階で両首脳の動作・握手から親近感や信頼感が確認出来ていました。2017年の2月に安倍総理がホワイトハウスを訪問、トランプ大統領は先ずシャグ(シェーク&ハグ)で迎えました。更に両手での握手である(ポジティブな)シェーク&カバーに続けて入りました。ここから大統領執務室へ移動してトランプ大統領は安倍総理を見つめながら、再びシェーク&カバーに入ります。ところが、19秒間も総理の手を離さない現地でも話題になった伝説の握手がありました。ゴルフでも、初めてのラウンドでは「ハイ・タッチ」でしたが、それ以降は「グー・タッチ」と親近感と信頼感が深まったことが伺えます。

 握手など動作から相手の本音を探り(キネシクス)、外交でもビジネス上でより良い関係を模索するツールとして役立つのではないでしょうか?