卓話


「ガレキを活かすいのちの森のプロジェクト」の活動について

2013年4月24日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

元首相・(財)瓦礫を活かす森の長城プロジェクト
理事長 細川護熙 氏

 今日は「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」についてお話しさせていただくのですが,東京ロータリークラブには,私どもの財団がスタートした直後から,いろいろとサポートしていただきました。たいへん高額のご寄付もいただきました。この場をお借りして,あらためて厚く御礼を申し上げます。

 これから日本の経済がどういうふうになっていくか。少しは上向きになってきているようですけれども,やはり何と言っても一昨年の東日本の大震災の復興が進まないと,日本の本当の再生,前進はありません。

 私どもは,そういう意味で,このプロジェクトに力を入れて,これからも取り組んでいきたいものだと思っております。

 被災地に行ってみると,依然として復興ははかばかしくありません。いまだに避難施設で暮らしている方々がたくさんおられます。職を失っている方々もたくさんおられるわけで,とても見すごせるような状況ではありません。

 一方で,時間の経過とともに,被災地への思いも段々と薄らいできていると感じるものですから,何か自分でできることをしなければいけないと思い,昨年の7月に,植物学者の宮脇昭さん(横浜国立大学名誉教授)らと共に「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」という公益法人を立ち上げました。

 このプロジェクトは,東日本の海岸沿い300kmに,瓦礫と土を混ぜて高さ数メートルのマウンドを築き,このマウンドに,シイ,タブ,カシなどその土地固有の照葉樹の30〜40cmのポット苗を植樹していく,それが20年,30年経ったら,立派な命を守る防潮林になっていく,という青写真を描いて活動をしています。

 瓦礫は厄介者扱いされて,なかなか引き取り手がありません。これを,そんなに遠くまで運ばないで,その土地土地でマウンドを築いて,そこに木を植えていくのであれば一石二鳥・三鳥の話ではないかと思うのですが,環境省などからは「瓦礫をそのように使用することは許されない」と強い抵抗を受けてきました。しかし,やっと少しずつ話が進んで,先が見えてきたところです。

 瓦礫の混ざったマウンドというのは,普通の土だけ盛った山と違って,空気が非常によく通り,植物の生長が促進されます。

 タブの木は,地下に5〜6mぐらいまで,瓦礫を抱き込んで深く根を張っていくので,今度の震災でも,南三陸町や大船渡市のタブの木はいちばんしっかりと根を張って津波に耐えて残っていました。

 瓦礫の90%以上は木質瓦礫や家屋の土台のコンクリートなどで,毒性のあるものはもちろん排除しなければなりませんが,国はいまだに広域処理と称して,無理矢理,日本中にそれをばらまいて,焼却を進めようとしているのは如何なものだろうかと思います。

 瓦礫を埋め立てなどに活用するのはなにも新しいことではなく,関東大震災の後,大量の瓦礫を利用して横浜の山下公園を造成したのは周知のことです。東京の外堀通りもその時の瓦礫を活用したそうです。

 外国の例では,ベルリンの立派な森や,ミュンヘンあるいはロッテルダムの森には,第2次大戦の爆撃で壊された建物の瓦礫や戦車まで随分埋まっているということです。

 3・11は特別な事態ですから,40数年前にできた法律に基づいてしかゴミの処理ができないということではなくて,もっと融通を利かせてやってもらいたいものだと思いますし,私たちは関係省庁と随分と話し合ってきましたが,まだまだ期待するほど前進していません。

 私たちのプロジェクトでは,今後10年間に照葉樹のポット苗数千万本を植樹していこうと計画していて,去年は,4月に岩手県大槌町に,5月に宮城県岩沼市に,6月には宮城県山元町にそれぞれ植樹しました。

 また,宮城県ではドングリ拾いを実施しました。ドングリから苗木に育てていくわけですが,ドングリには表年と裏年がありまして,昨年は裏年だったので,ドングリの実が思ったほど集まりませんでした。皇居にも伺って,両陛下にもお願いし2000粒ほどありがたく頂戴してきました。因に東北で育てるには関東以北のドングリでないと育たないのです。

 ドングリの苗が30〜40cmのポット苗に育つのに1年ほどはかかります。それから先は1年に1m程度伸びていきます。

 今年5月から,30〜40cmに育てたポット苗を仙台の荒浜,宮城の岩沼,福島の南相馬に植樹をしていく予定にしています。

 国の復興事業とも提携していくことになっていて,林野庁との関わりでは,東日本の海岸保全林が震災でやられたのですが,そのうちの50kmについて,昨年度から工事が始まっています。私どもも林野庁と提携して,お手伝いしていくことで進めております。

 国交省所管の宮城東部道路という道路が,津波を止める大きな役割を果たしました。道路が堤防の役目を果たしたわけです。そこで国交省では,それに類するような道路の嵩上げを考えています。そして嵩上げをした道路の法面(のりめん)に苗木を植えていったらどうかと,今までの道路では考えられなかった画期的なことを考えて実行に移そうとしていて,私たちの団体とも提携していく話が進められています。

 もう一つは,高い堤防を造る話が出て反対運動が起こったりしていますが,国交省としては,堤防の陸側の法面をコンクリート剥き出しにするのではなく,そこに土を盛って,斜面を造って,そこにも植樹をしていこうという新しい計画を持っていて,6月から私どもの団体と協力して試験植樹をしていくことになっています。具体的には,仙台だけで20kmほどの規模で考えているようです。

 ですから,私どもも頑張って苗木を育てないといけないと思っているところです。一本の苗木を30〜40cmに育てるのに,暖かい地方ではそれほど手間はかかりませんが,東日本では雪が降ったりするので,ビニールハウスを使ったりすると一本500円ぐらいかかります。

 その資金をいろいろな形で調達していかなければなりません。先日は東京でオークションを開きました。一般的によくあるような,物を売るオークションではなく,権利を買っていだだくという変ったオークションです。例えば,
○名馬ディープインパクトに人参をやる権利
○レスリングの吉田沙保里さんの3つの金メダルを首にかけてもらって,吉田沙保里さんに担ぎ上げてもらう権利
○東映の太秦でチョイ役で映画のエキストラに出演する権利

 他にも,このような一味も二味も違う楽しいアイテムがたくさん集まりました。権利金(寄付金)もたくさん集まり,とても楽しいオークションでした。私は焼き物を嗜んでいますので,私の失敗した作品の破片を安藤忠雄さんがオブジェにしてくださったものをコラボとして出品し,これもいいお値段がつきました。震災の記憶は年とともに薄らいできますから,忘れられないように少し楽しみながら資金集めもしていければと思って,これからもこのようなオークションをやっていきたいと思っています。

 瓦礫を活かす森の長城プロジェクトは,震災から立ち上がっていく日本の,後世に残る大きな仕事だと思います。

 外国の方々も,段々に育っていく防災に役立つ森を見て,日本はこのように震災から立ち直っていきつつあるのか,ということを高く評価してくれるのではないかと思います。

 20年〜30年の息の長い事業ですが,是非とも皆様方にも強い関心を持っていただいて,このプロジェクトに手を差し伸べていただけたらありがたいと思っております。