卓話


イニシエーションスピーチ

2005年9月21日の例会の卓話です。

浅野茂太郎君  
安樂兼光君 

第4071回例会

『食生活における牛乳・乳製品』

明治乳業株式会社
取締役社長 
浅野 茂太郎君

 「健康は食生活から」とよく言われております。私たちが健康で丈夫な身体作りをする上で、健全な食生活を心がけることはとても大切なことであります。最近の生活様式の変化に伴う食行動の多様化が進む中で、栄養バランスの偏りや生活習慣病の増加等が社会問題となっております。そこで、偏りがちな食生活を改善するための様々な取り組みが行われておりますが、牛乳・乳製品に関して見ますと、「食生活指針」等において、その摂取が推奨されております。また、酪農乳業界におきましても、牛乳・乳製品の摂取により、健康によい食事の実践を目指す「3−A−Day」運動を展開し、活動を続けております。

 わが国の牛乳・乳製品は、国民1人当たりの消費量で見ますと、野菜、米等と並ぶ水準にあります。また、農業の生産という点から見ましても、牛乳・乳製品の原料である生乳の総産出額は、米、野菜等に続く位置にあり、正に日本人の食生活そして日本の農業において、代表的な基礎食料品となっております。

 今では身近な牛乳・乳製品ではありますが、日本人と乳製品との付き合いはまだ浅いといえます。牛乳・乳製品が大衆の間に普及しましたのは、明治時代に欧米の食文化が紹介されるようになってからであり、その後、戦後の食生活改善の高まりや日常生活の欧米化に加えて、学校給食での牛乳採用等によって、本格的に消費が伸びていきました。
 
 こうして、わが国の牛乳・乳製品の消費量は大きく伸びてきた訳ですが、欧米先進国に比べますと、まだかなり低い水準にあります。世界最大の消費国であるフィンランドに対し、日本の消費量は未だ1/5程度でしかありません。

 確かに、日本人と欧米人の食生活には大きな差があるわけですが、かといって食の欧米化が進むことがよいことなのかといいますと、そういう訳ではないと考えます。日本人の食生活は「日本型食生活」と呼ばれ、米をはじめとする伝統的な素材に、欧米から伝わった畜産物や果実等が豊富に加わって、栄養バランスが良いとされております。その中で、牛乳・乳製品は、優れたたん白質とカルシウム等を豊富に含み、日本人固有の食生活において不足しがちな栄養素を補うのに最適な食品の一つであり、果す役割は大きいといえます。そういう点からしますと、欧米並みとまではいきませんが、確実に消費は伸びていくものと考えております。

 また、本格的な高齢化社会を迎え、骨粗しょう症の増加が大きな社会問題になってきました。そこで、手軽に美味しくカルシウムを補給できる食品として注目されているのが、「不老長寿の薬」と呼ばれるヨーグルトです。ヨーグルトには、牛乳よりも多くのカルシウムが含まれており、さらに腸の中での食事全体のカルシウムの吸収を助ける働きがあります。また、ヨーグルトの乳酸菌には、研究により、骨粗しょう症の防止の他にも、様々な健康効果があることが確認されております。

 最後に、健康で長生きするというのは誰しもが望むところかと思います。そこで「健康は食生活から」であります。豊かな食生活とは何か。それは高価な食材をぜいたくに食するということではなく、豊かな自然の恵みをバランス良く摂り入れ、健康に役立つ食事をすることであると、私は考えます。
 
 これからの長寿社会において、皆さまがいつまでもご健康で長生きされますように、ぜひとも規則正しく栄養バランスのよい食事をお摂り下さい。

 今後も、牛乳・乳製品に携わる一人として、国民一人ひとりが豊かな食生活を通じて健康で幸福な生活を送ることができますよう、精進していきたいと思います。
                                      

「ここ10年の自動車産業の動向」

日産不動産株式会社
相談役 安樂兼光君

 私は日産自動車に38年間勤め、職業に関する知識、経験は殆んどが自動車産業に関わるものですので、自動車産業に関するテーマでお話します。

自動車産業では技術、コストの両面で世界的規模で厳しい競争が行われていて、最近はあの王者GMが経営の危機に瀕しています。一方、日産は倒産寸前にまで落ち込みましたが、現在は最高益を計上するまでに復活しました。私は日産の最悪期に経理・財務を担当し、また日産の再生を主導したカルロス・ゴーン社長とも一緒に仕事をしてきましたので、その経験を基に企業の復活事例として日産の再生を取り上げました。

90年代後半の日産は7年間で6回の赤字を計上し、負債は2兆円強で、企業存続も難しいような状況にありました。

ゴーン社長は99年赴任当初、日産の問題点として、利益・顧客指向の不足、危機感の欠如などを挙げる一方、従業員が会社を困難な状況から脱出させようと強く望んでいるが、これが再生のために最も重要な力となる、と指摘しました。

日産は2000年に入りV字型回復を達成し、連続して過去最高益を計上しましたが、それを可能とした要因は次の二つです。

一つはルノーとの提携です。提携内容は(1)ルノーが日産に約6千億円出資(2)ゴーン社長(3)事業協力 です。
二つは2000年度から3ヶ年の日産リバイバル・プランです。
プランではゴーン社長は黒字化、営業利益率4.5%以上、負債半減 の三つのコミットメントを、自らを含む経営陣に課し、達成できない場合は辞任すると宣言しました。その方策は取引先の半減、村山工場などでの生産中止、関連会社の株式の売却などでした。

 目標達成のために新しい試みを導入しましたが、組織についてはプランの象徴とも言えるクロス・ファンクショナル・チームです。異なる能力・考え方を持つ、担当の違うスタッフが共同作業をすることで、問題に対する多くの解決方法が生まれる、という考えの下に作られた部門、国境を越えたチームは、タブーを設けず、部門の壁を打破した、挑戦的な目標と方策を提言しそれが計画の骨子となりました。

 企業文化については目標以上の結果を得るためのストレッチ・カルチャーです。それは持てる能力を最大限に引き出すために、会社、部、個人のレベルで必達目標をコミットメントとして約束し、さらに高い目標 であるターゲットにも挑戦することによって、より良い業績に向かってストレッチしていく風土です。

 これらにより日産は三つのコミットメントを1年前倒しで達成し、連続して過去最高益を計上しています。

 日産再生の要因は三つです。第一はゴーン社長です。彼は目標を達成できなければ責任をとって辞任すると宣言してリーダーシップを発揮しました。第二はルノーから6千億円という莫大な資金が現金で出資されたこと。第三は日産従業員の資質とやる気です。個人は相当の能力があるが、ベクトルが合わずに力を結集できず、また危機感も欠けていました。ルノーが資本を持ち、外国人社長を送ってくると、さすがにここで踏ん張らねば再生の道はない、と経営陣、従業員一丸となって計画の実現に取り組みました。目標がはっきりして、やる気を出せば日産は力があり、実現が危ぶまれたプランを一年前倒しで達成しました。

 どれか一つが欠けても成功しなかったでしょう。三拍子揃ったのは幸運だと思います。

 ゴーン社長は4月に「日産の再生は完了した」と宣言すると共に、ルノーと日産両社の社長とCEOを兼任することになり、日産では日本人COOが誕生しました。日本人による会社経営が始まったことで日産は新しい局面を迎え、更なる発展を目指します。

この日産の復活事例が困難に直面している企業に少しでも参考になることを願っています。