卓話


会員増強・新クラブ結成推進月間例会
超電導リニアによる中央新幹線計画

2015年8月5日(水)

東海旅客鉄道蝓ー萃役 常務執行役員
中央新幹線推進本部長 宇野 護氏


 本日は、超電導リニアによる中央新幹線計画について、お話しします。

 まず、弊社が中央新幹線を整備する目的ですが、東京・名古屋・大阪を結ぶ大動脈輸送を二重系化することにあります。現在この役割を担う東海道新幹線は、昨年10月に開業から50年を迎え、将来の経年劣化や東海地震などの大規模災害に対する抜本的な備えを考えなければなりません。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提に、弊社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。

 次に中央新幹線の効果についてですが、その開業により、東京・名古屋間が最速40分、東京・大阪間が最速67分で結ばれ、わが国の人口の約半数、6400万人が含まれる巨大な都市圏が誕生します。平成22年の国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会の試算によると、沿線地域にもたらす経済的効果、生産額の増加は、年間8700億円に及ぶとされています。

 また、中央新幹線の開業により、東海道新幹線の活用可能性が拡大することが期待されます。中央新幹線が開業すると、東海道新幹線の「のぞみ」の機能は、相当程度、中央新幹線にシフトし、東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれ、「ひかり」や「こだま」の機能を充実させることが可能となります。これまで停車本数が少なかった沿線都市の駅に停車する列車を増やすことができ、沿線都市から3大都市圏への到達時間やフリークエンシーが大幅に改善されると期待されています。

 次に中央新幹線計画の経緯についてお話します。中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法(以下、「全幹法」という)に基づき、計画が進められています。東海道新幹線は昭和39年に開業し、大きなインパクトを与えました。全幹法はこれを受けて、新幹線を全国的に整備しようとしてできた法律で、中央新幹線は昭和48年に、全幹法の基本計画線に決定されました。この基本計画において中央新幹線は、起点が東京都、終点が大阪市、主な経過地として甲府市付近、名古屋市付近、奈良市付近とされ、以降、弊社が地形・地質などの調査を進めてきました。

 そして、平成19年に弊社が東京・名古屋間を自己負担で建設することを決定したことで、全幹法の法的手続きが進み、交通政策審議会で技術、環境保全、費用対効果、弊社の事業遂行能力、東日本大震災を踏まえた影響に関することなどが、1年2カ月にわたって審議されました。その結果、平成23年5月に、交通政策審議会より、営業主体及び建設主体として当社を指名することが適当であることの答申がなされ、これを踏まえ、国土交通大臣は弊社の同意を経て、整備計画を決定し、弊社に建設の指示を行いました。その後、足かけ4年に及ぶ環境影響評価を経て、平成26年10月に品川・名古屋間の工事実施計画の認可を頂き、12月に準備工事に着工しました。

 次に、中央新幹線の土木構造物についてお話し致します。中央新幹線の土木構造物は、主に高架橋とトンネルで構成され、品川駅から名古屋駅までの延長286kmのうち、トンネルが全体の86%を占めます。

 駅については、ターミナル駅として品川駅、名古屋駅、中間駅として、神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県飯田市、岐阜県中津川市に駅を設置することを予定しています。

 品川駅は、東海道新幹線との結節、在来鉄道との円滑な乗り継ぎを可能とするため、東海道新幹線の品川駅の真下、地下約40mに南北方向に計画しています。名古屋駅は、大阪市に向けて、できるだけ短く直線に近いルートをとること、また東海道新幹線との結節点、在来線などとの円滑な乗継ぎを考慮して、中央新幹線のホームを東海道新幹線及び在来線の名古屋駅の地下に、現在の名古屋駅とほぼ直交する東西方向に配置します。どちらの駅も現在列車が走行している線路の下に大規模な土木構造物を造る難しい工事になります。

 品川駅の大きさは、2つのホームに線路が2線ずつの2面4線で、延長約1km、最大幅約60m、敷地面積約3.5haを想定しています。工事は、まず地中に土留壁、いわゆる地中連続壁を構築します。その後、現在の品川駅を新たな柱で受け替えます。受け替えが終わると、地下の掘削を進め、新たな躯体を構築し、設備完成後に、開削部分を埋め戻します。名古屋駅は、中心が東海道新幹線と交わる点の付近となるよう計画しており、鉄道との交差部は3分の1程度です。

 高架橋には、防音壁や防音防災フードを設置し、都市部のトンネルは円形のシールド工法で行うなど環境面に配慮します。

 トンネル掘削による発生土については、本事業内での再利用に加えて、沿線の関係自治体の協力を得て他の公共事業や民間事業の事業主体と調整を行い、有効活用を進めます。現時点で、各県から想定される発生土量を上回る活用候補地の情報を得ています。ちなみに山梨リニア実験線建設時における発生土は、田畑として有効活用されています。

 また、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に定められた、「大深度地下」使用の認可をいただければ、土地に係る区分地上権等の補償が不要となるため、中央新幹線計画では大深度地下使用法の適用を考えています。大深度地下とは、通常利用されない深さの地下空間を言い、公共の用に使用できるとされます。これまでの大深度地下使用の適用例は、神戸市大容量送水管、東京外かく環状道路の2例で、これまでに無い規模の適用例になる予定です。

 次に簡単ですが、超電導リニア技術の特長についてお話しします。

 リニアにもいろいろありますが、現在弊社が開発を継続しているのは超電導リニアで、日本固有の技術です。超電導磁石を積んでいることが特徴であり、500km/時を出せるのはこのシステムだけです。トランスラピッドはドイツの技術であり、常電導型のリニアで、中国・上海で使用されており、最高速度は430km/時です。それからリニモという愛知万博に合せて作られたシステムがあり、これも常電導型で低速です。

 超電導リニアは、万が一の停電時や変電所の電力変換器の故障等により動作していない状態でも、複数のバックアップブレーキにより速やかに停車します。車両の超電導磁石が通過すると、両側の浮上案内コイルに電流が流れて電磁石となり、車両に押し上げる力と引き上げる力が発生し、浮上するため、停電し、地上側からの電力供給が無くなった場合も浮上走行を続けながら減速し、自動的に車輪走行に移行して安全に停車します。また、超電導リニアは、従来型の鉄道の線路に当たるガイドウェイに囲まれ脱線しない構造であり、地震の力を受けても、強力な磁気バネの作用により、ガイドウェイ中心に車両を保持されるため、地震にも強いシステムです。さらに、走行時の車輪からの音は発生しないため、同じ速度域では在来型の新幹線に比べて沿線騒音は少なくなります。地盤の振動についても、超電導リニアは浮上するため、列車荷重が土木構造物全体に分散し、構造物に伝わる振動は小さくなります。

 消費電力については、平成39年の名古屋開業時に首都圏から中京圏の走行数を1時間に5本として計算したところ、約27万kWと試算されました。電力会社の今年の夏の供給力見込み(原子力発電所がすべて停止している前提での試算)では、東京電力5,650万kW、中部電力2,725万kW、関西電力2,875万kWと見込まれています。中央新幹線の消費電力は、現在の供給余力で十分賄えると考えています。

 磁界については、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)が定めた非電離放射線が人体を含む生物全般に与える曝露限度に関する国際的なガイドラインに対して、500km/時で通過した際の線路脇4mの地点では、約1/6、高架下8mでは約1/50と、すべてガイドラインの数値を大きく下回ります。

 超電導リニアの技術開発には長い歴史があります。昭和37年、東海道新幹線の開業前から国鉄で研究開発が開始されました。昭和52年、宮崎に実験線を作り、昭和54年には517km/時の世界記録を出しました。昭和62年、国鉄が民営化して弊社が発足し、平成2年、山梨リニア実験線の工事が始まりました。ここで走行試験をしながら20数年、技術開発を進めてきました。平成26年には累積走行距離が100万キロに到達し、平成27年には1日の走行距離4064km、また有人走行で世界最速の603km/時を記録しました。

 また、現在弊社では山梨リニア実験線において、一般の方々を対象に、「超電導リニア体験乗車」を実施しており、この7月、8月は約9000名の方に500km/時走行を体験いただいております。

 最後に、工事の進捗についてお話し致します。工事実施計画の認可をいただいて以降は、沿線各地において地区ごとの事業計画等、地域に密着した内容をきめ細やかにご説明するため、自治会等の単位で事業説明会を順次開催しました。また、路線の中心位置を明らかにするための中心線測量について、本年3月に名古屋駅周辺、4月には岐阜県と長野県で開始し、関係者のご理解をいただきながら順次作業を進めました。さらに、6月には、補償の考え方等をご説明するための用地説明会を名古屋駅周辺で開始するなど、今後の工事に向けて準備を進めました。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視して着実に取り組みます。


      ※2015年8月5日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。