卓話


イニシエイションスピーチ
世界の都市の総合力,東京は何位?

2013年12月4日(水)

森ビル
代表取締役社長 辻 慎吾君


 21世紀は「都市の時代」です。都市の面積は地球の全面積のわずか5%ですが、そこに全人口の50%以上が集積しています。さらに、グローバル化を背景に、選ばれた大都市に集積が進んでいます。こうした「磁力ある都市」には人、モノ、金、情報がどんどん集まり、イノベーションやムーブメントが起こっています。

 世界の人々を惹き付ける「都市の磁力」とは何かを分析するため、森記念財団では2008年から「経済」「研究・開発」「文化•交流」「居住」「環境」「交通アクセス」という6分野の70指標をとり、各得点の合計で『世界の都市総合力ランキング』を出しています。
 さて、東京は世界何位だと思われますか?

 2013年の調査では、東京は、ロンドン、ニューヨーク、パリに次ぐ第4位です。以下、5位シンガポール、6位ソウル、7位アムステルダム、8位ベルリン、9位ウィーン、10位フランクフルト、11位香港、12位上海と続き、14位が北京、23位が大阪です。

 また、2008年〜2013年の順位の変動をみますと、2つの特徴があります。

 ひとつは、2012年にロンドンがニューヨークを抜いて首位に立ったことです。ロンドンは2005年にオリンピック招致が決まってから、2012年の開催に向けて宿泊施設や都市インフラの整備、国際イベントの招致等に積極的に取り組みました。これによって都市の磁力を高めて首位に立ち、オリンピックの翌年も首位を守っています。東京にとって非常に参考になる事例ではないかと思います。

 もうひとつはアジア諸都市の躍進です。東京はずっと4位ですが、5位のシンガポール、6位のソウルとの点数差は急激に縮まり、上海や北京も6年間で20位台から10位台に躍進するなど、激しい追撃を受けています。

 我々の現場感覚でも東京の地盤沈下を痛切に感じます。ひと昔前まで、外資系企業にとって東京赴任は栄転でした。しかし、今は東京からシンガポールや香港、上海に赴任が決まると「おめでとう」と言われるそうです。今回の調査でも、経営者の評価は1位ロンドン、2位シンガポール、3位上海、4位北京、5位香港、6位ニューヨーク、7位ソウル、8位パリ、9位東京となっており、アジアのライバル都市の後塵を拝しています。

 ネガティブな話になりましたが、東京の強みを伸ばし、弱みを改善すれば、東京の大逆転は可能です。

 東京の強みは、「経済(1位)」、「研究・開発(2位)」、「環境(1位)」です。ただ、経済分野でも経済の規模や集積度は最高評価ですが、「市場の魅力」や「法規制・リスク」の評価が低い。特に法人税は40都市中9番目に高く、ここを改善すればスコアはさらに伸びます。

 一方、弱みは「文化•交流(8位)」、「居住(20位)」、「交通・アクセス(10位)」。 特に「文化•交流」の得点は1位のロンドンの半分以下です。ここをぐっと伸ばせばトップ3に食い込めます。英語で予約できる集客施設やハイクラスホテルを増やす、国際線の就航都市数を増やす、空港と都心へのアクセスを改善する等々の手を打てば、東京の総合力は確実に高まるのです。

 今は大逆転劇を実現する千載一遇のチャンスです。アベノミクスの3本の矢とオリンピックによって人々のマインドが好転し、政官民一体となって取り組む気運や体制ができつつあります。国家戦略特区によって法人税の引き下げや規制緩和を実現する場とレールが敷かれ、2020年という具体的な目標もできました。これまでとは異次元のステージとスピードで制度改革や都市再生を進める舞台が整ったのです。これは東京と日本にとって最大にして最後の機会であり、今後数年間が勝負です。

 私個人としては、東京はあくまでも世界のトップを目指すべきだと思います。スポーツ選手も、金メダルを目指すから辛い練習にも耐えられるのです。

 東京ロータリークラブが創立100周年を迎える2020年、スポーツのオリンピックだけでなく、都市でも東京が金メダルをとって次の世代にバトンをわたせるよう、全力で走り続けたいと思っております。



イニシエイションスピーチ
仲裁あれこれ

2013年12月4日(水)

日本商事仲裁協会
理事長 横川 浩君


 商事仲裁と言っても、多くの方にはあまり馴染みのない言葉だろうと思います。

 国語辞典で仲裁という言葉を引くと、「争いの間に入って取り成し両方を仲直りさせること」などと出てきます。

 しかし法律上の「仲裁」は、このような意味の仲裁ではなく、「当事者が紛争の解決を第三者の判断に委ね、その判断に服する紛争処理手続き」を言います。日本語の日常的な用法の「仲裁」は、法律的には、和解あっせん、調停に当たるのです。

 ビジネスの世界においても、会社の法務部門の方は別にして、一般的に、特にトップマネージメントにおいては、商事仲裁の認知度は残念ながら低いと言わざるを得ません。
 他方で欧米の諸国では、「commercial arbitration」は広く知られ、ビジネス紛争の最もポピュラーな処理手段として広く利用されています。やはりまだ日本では仲裁文化が十分根付いていないと思います。

 当事者の合意に基づいて、紛争を仲裁で解決しようということになると、まず裁判官に当たる仲裁人を一人か三人選びます。その仲裁人の下で極めて裁判に類似した手続きが進行します。このあたりのすべての事務処理サービスを行うのが日本商事仲裁協会です。

 なお、裁判管轄のようなものがないので、仲裁は世界中どこでやってもいい、仲裁地を決めるのも当事者です。日本企業と米国企業の仲裁をロンドンの仲裁機関でやってもいい、中国企業と韓国企業の仲裁を東京の日本商事仲裁協会でやってもいいのです。

 使用言語も当事者の合意で決めます。日本企業の皆さんに申し上げるのは、ホームとアウェイであればやはりホームのゲームをやられるのが何かとよろしいですよと。もちろん東京でやるからと言って仲裁判断そのものが日本企業寄りになる訳ではない、あくまでも厳正で中立な法律判断がなされるのです。

 なお、紛争の発生後に仲裁合意を結ぶのは極めて難しいので、契約書を作成しあらかじめ仲裁条項を定めることが重要です。仲裁地を始めとするその内容も、相手のあることですが、是非こだわりを持って、安易な譲歩を避け、自社に極力有利なものにするよう頑張るべきです。

 次に、仲裁は合意があって入る世界ですが、一旦入ると、あとは勝っても負けても当事者は仲裁人の判断に従わなければなりません。出された「仲裁判断」には裁判所の確定判決と同じ効力、強制力があります。ニューヨーク条約という140か国以上が参加している国際取り決めがあり、これに基づき外国における強制執行が容易になっていることが、裁判に比べての仲裁のメリットです。

 他に、一審制つまり仲裁は上訴がなく一発勝負です。その分紛争の法的解決が延々長引くことがないというのは、コストを下げることにも繋がる仲裁のメリットです。

 コストと言えば、裁判官は公務員でその給料は国が払いますが、仲裁の場合は裁判官役の仲裁人の報酬は当事者に払っていただかなければなりません。

 ともかく、経済取引の紛争処理のため、うまく使っていただければ仲裁は大いにお役にたつ制度だと思います。

 一つだけ付言させていただきますが、私のところでは仲裁と並ぶ事業の柱として「カルネ事業」というのをやっています。簡単に言えば、外国に物を一時的に持ち込む場合の免税証明書の発給でございます。展示会出品物、商品見本、そして報道の資機材や音楽家の楽器など職業用具と呼ばれるものに、外国通関でのトラブルを防ぐために持参いただくと便利な通関用書類の発給です。一年ほど前に有名演奏家の名器バイオリンの通関トラブルでもカルネが話題になりました。

 最後に、私、本業の仲裁協会の仕事のほかに、陸上競技のお世話をしておりまして、今年の6月から日本陸上競技連盟の会長をしています。2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まり、日本の陸上をもっと強くするため、一所懸命やりますので、こちらの方でも応援よろしくお願い致します。