卓話


Current status and future prospects of the
Australia-Japan relationship

2017年9月20日(水

駐日オーストラリア大使館
特命委全権大使 リチャード・コート氏


 森田会長はじめ東京ロータリークラブの皆様、本日は卓話の席にお招き下さり、大変光栄に存じます。今年初めに大使として東京に着任以来、妻と私に対する温かい歓迎に感激しています。まさに豪日の人々の緊密な絆の証であります。

 国際奉仕を目指すロータリーは、よりよい世界の構築に向けてビジネスや様々な業種からのリーダー達を結集しています。人道支援を行い、高い倫理規範を掲げ、親善と平和を推進し、国際的に素晴らしい活動を展開してこられました。

 ロータリーはオーストラリアでは、精神衛生を含む医療全般の研究に資金提供を行う最大規模の独立した団体です。さらに地方の医学生と看護学生、先住民の医療系学生に奨学金を支給し、多大な支援を行っています。

 本日はこれとは別になりますが、よりよい世界を作るためのサクセスストーリーを披露したいと思います。第二次世界大戦後の豪日関係にまつわるお話しです。二つの国がその違いを乗り越え、素晴らしい友となった、最高のお手本を示しています。これは又、私自身の家族の話しでもあります。

 私の父は第二次世界大戦中、将校としてパプアニューギニアのブーゲンビル島で日本軍と戦いました。戦後は政界へ進み、西オーストラリア州議会の大臣に就任、1950年代後半から1960年代にかけて日本の製鉄会社と鉄鉱石輸出の交渉にあたりました。今日にいたる日本の産業の繁栄を左右しうる決定的な交渉でした。1960年代後半までにオーストラリアは日本にとり鉄鉱石、石炭、その後LNG(液化天然ガス)の最大輸出国となり、日本の近代化を後押しして来ました。

 本日は興味深い写真を何枚かお持ちしました。これは父が終戦時にブーゲンビル島で二人の日本人将校と撮った写真です。一人は陸軍の、もう一人は海軍の将校でした。これは1973年に東京で父が同じ二人の将校と再会を果たした際に撮った、夕食を囲む写真です。1960年代に父が輸出交渉を精力的に進めている中で、お二人との友情が深まったのです。また1980年代初めには、私自身が下院議員としてここ東京でお二人にお会いすることができました。

 父は歴代の首相や経済界のリーダー達と直接交渉してきました。昨日、私は小泉進次郎氏と防衛大臣政務官を務める福田達夫氏という二人の若手政治家にお会いする機会があり、福田氏に二枚の写真を持参しました。福田氏の御祖父様である福田赳夫氏が総理大臣の時、父と一緒に撮った写真です。また福田氏の御父様の福田康夫氏も首相でした。父は歴代の総理大臣と交渉を重ね、多くの写真を残しました。

 私は西オーストラリア州首相兼財務大臣を8年間務めましたが、先人の築かれた強固なパートナーシップを礎に発展することができました。オーストラリア全土で貿易から始まり、教育や観光、インフラ、金融サービス、医療研究など広範囲に多様化しています。貿易・投資を起点とし、60年以上にわたる努力を重ねて勝ち得た信頼と尊敬の上に文化交流や防衛などの戦略的な絆を深めて参りました。

 豪日が築いた二国間関係は他国の羨望の的となっています。オーストラリアを世界で最も競争力ある鉱物資源とエネルギー国に押し上げたのは、日本企業であったことを忘れてはいけません。現在、オーストラリアは世界最大トン数の鉄道網、ばら積み貨物船用の巨大な港、さらにLNG用施設など先端技術を活用した設備を誇っています。

 食料部門でも和牛からファーストフードのハンバーガー用ビーフ、ビール用大麦、さらにうどん用小麦にいたるまで、オーストラリアは日本人の多種多様な食を支えています。 豪日関係は我々が誇るべきストーリーなのです。許し合い、和解、信頼、そして尊敬に根差しています。我々はお互いの固有の文化からさらに多くの素晴らしい教訓を学ぶことができます。日本には礼儀正しさ、自制心、身の安全の文化が浸透しています。オーストラリアには開放的で斬新、単刀直入の文化が息づいていますが、時にはもう少し洗練も必要でしょう。

 両国の友好関係を考える時、このストーリーの礎を築いた先人達に感謝すべきでしょう。終戦後わずか12年目の1957年に締結された日豪通商協定には、岸総理とメンジス首相が調印しました。岸総理は、安倍現総理の御祖父様にあたります。防衛の要となる「安全保障協力に関する日豪共同宣言」には、ハワード首相と第一次安倍内閣の安倍総理が調印しました。画期的な日豪経済連携協定(JAEPA)は2015年に発効し、今日にいたるまで日本の貿易協定の中で最も規制が緩和されたものです。

 現在、日本にとりオーストラリアは世界3位の輸入相手国であり、オーストラリアにとっても日本は世界3位の貿易相手国です。日本はまた、世界2位の対オーストラリア海外直接投資国です。日本の投資額は中国の5倍にも匹敵します。人道支援においても、自然災害が発生した時にはお互いに支え合ってきました。2011年の東日本大震災の折には、オーストラリア国防軍および民間人が復興活動に参加し、大きな役割を果たしました。 しかし、こうした過去の栄光に安住していてはいけません。自己満足は危険なのです。我々の強い絆を当たり前だと思ってはいけません。長年にわたりオーストラリアの首相を務めたメンジス氏はこう述べています。「人生で大切なものは、むき出しの敵対心よりも無関心により失われてしまう」と。私達1人1人には、単に状況の変化に適応するのではなく、積極的に新しいチャンスを探る責務があります。

 オーストラリア政府としては、どのようにオーストラリアの革新性や現代性を日本に伝えて行くか、先を見据えて考えています。来年、我々はAustralia Nowと題する大掛かりなオーストラリアフェスティバルを日本で開催します。大規模なパフォーマンスや文化・スポーツイベント、特別プログラム、さらにはシンポジウムや共同プロジェクトと多岐にわたる内容です。皆様にも何らかの形でご参加いただけましたら幸いです。

 卓話を終えるにあたり、ロータリアンの皆様が日本で重要な役割を果たしておられることに再度感謝申し上げます。アジア太平洋地域は不安定さが増しています。我々は北朝鮮の動きを危惧し、攻めの姿勢を貫く中国の情勢も憂慮されます。今こそオーストラリアと日本の関係に目を向けるべきなのです。二国間関係の中で成し遂げてきた成果は、まさに誇るべきことなのです。繰り返しになりますが、「許し合い」と「和解」、「信頼」、「尊敬」に根差した素晴らしい関係です。今後も強力な友好関係が続くと確信しております。
 ありがとうございました。