卓話


東京と日本のこれから−2025年までにどう変わるか−

2017年7月12日(水)

明治大学公共政策大学院
ガバナンス研究科長 市川宏雄氏


 東京と日本がこれからどう変わるのか、2020年にオリンピックが開催されますが、実際は2025年から2030年位になると見えてきますので、今日は、東京を取り巻く環境の変化、都市力の分析、都心がどうなるのか、3つのテーマでお話します。

 国家戦略特区が東京18区に指定されています。2011年に東京都はアジアヘッドクォーター特区を設けました。都心5ケ所で、「外国企業が日本企業とビジネスしやすい環境づくり」「24時間活動する国際都市としての環境整備」「外国人が暮らしやすい都市作り」を示しましたが、うまくいかなかった。理由は、すべて国が“うん”といわないとできなかったためです。

 その後、2013年10月に安倍政権が「国家戦略特区の規制改革検討方針」を出しました。医療、雇用、教育、都市再生・まちづくり、農業、歴史的建築物の活用がメニューで、様々な規制改革にはオリンピックが非常に重要だと内閣府はあえて言っています。医療では国際医療拠点における外国医師の診察等は、1年かかってやっと数名の医者が特定の病院でOKになったのが現実です。その一方で、都市再生・まちづくりは、容積率緩和や民間の宿泊施設の開放等が比較的うまくいっています。

 国家戦略特区の特徴は、初めて国と地方と開発主体の民間事業者が入れるテーブルを作ったことです。東京では都心を中心に大手のディベロッパーがすべて関わり、おのおの世界に誇れるすばらしいプロジェクトで、民間の力が東京を作っています。

 2050年、日本はかなり深刻になるとわかっています。人口は2025年には9000万人台になり、2030年頃から高齢化が深刻になり、2050年位が最も厳しくなる。人口構造の形態は、かつてのピラミッドから現状のビア樽になり、2035年には中高年層が若者の倍になる。さらに、女性が男性より長く生きるので、右側の女性人口が多くなり、右側に倒れる可能性があるため「ピサの斜塔」と呼ばれています。

 こうした中で大きなテーマは大都市と地方です。3大都市圏と地方圏の人口比率を見ると、1960年に地方圏は1.5倍でしたが、2005年には1:1に。よく見ると、1990年以降は3大都市圏中、東京だけが増えており、テーマは地方と東京に変わっています。

 日本の力はどこにあるのか。東京、名古屋、大阪は1962年の第一次全国総合開発計画で頑張るとしました。1998年の第五次ではその軸が瀬戸内海から福岡まで伸び、現在日本の力はここで保っている。西日本国土軸上の県人口のシェアは2012年に72%になり、いずれ8割になると考えられましたが、軸上の他に人口の四分の1は日本全国にいるため、そうはなりません。その姿を見ながら日本をどうするかを考えればいい。

 2027年にリニア新幹線が東京・名古屋をつなぎます。リニアが通ったら品川駅から40分と名古屋が東京の郊外になり、大阪が関東地方に入ります。それが2030年から40年にかけての日本列島の実態です。

 東京と名古屋を合わせると5000万人近い都市圏が発生します。東京は商業と金融業が突出しており、名古屋はトヨタのお陰で製造業が強く、東京は弱い。なおかつ移動時間は40分のため何も移す必要がない。相互補完するwin-winの関係が濃厚です。

 現在、東北の経済圏は東京を中心とする首都圏の領域に入っています。10年後は東北から東京、名古屋まで一体となって経済を引っ張る可能性が高い。東北、首都圏、中部を足したシェアは2011年で64%が、リニア開通後75%程度に上がる可能性が高い。即ち、人口減少国家で危ないという時、この軸上で頑張ればいい。開発軸上の東京と名古屋の合体と、なおかつ東日本で4分の3位は稼ぐ。こうした集約化が進めば、あの怖い人口図はなんとかなるかもしれない。

 その中で、東京です。私が理事を務める森記念財団では、世界の都市総合ランキング、都心ランキング、都市圏ランキングを行っています。

 都市総合ランキングは42都市対象で、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野70指標で評価し、総合力を見ます。昨年は、1位ロンドン、2位NY、3位東京で、3位に上がったのは初めてです。東京は、経済は世界のトップで、研究・開発は2位、文化・交流は5位。交通・アクセスは11位で、このうち海外への交通ネットワークがネックです。

 ロンドンは、2012年にオリンピックを行ってNYを抜きトップに立ち、その後もスコアを上げ、NYは横ばい。東京はオリンピックに至る過程で獲得したポジションがあり、急激に力を上げています。パリはテロがあって力を落としました。東京都知事はずっとこのデータを使っており、小池さんもオリンピックの時に1番にしたいと言っています。NYはロンドンに負けて頑張っていますが急には上がらないだろうし、ロンドンはブリグジットで落ちる可能性があり、東京は一番を争えるかもしれません。

 このランキングは人からの評価でも見ています。ポイントは経営者で、東京は世界トップの経済力はあるものの、経営者達はアジアで東京を選ばず、上位にシンガポール、上海、北京が来ます。指標グループにおける弱点は3つで、内容としては経済における市場の魅力とビジネスの容易性、居住コスト、それから交通・アクセスの国際交通ネットワークと交通利便性。利便性は高いけれども評価が悪いのは、タクシー代が世界で一番高いためです。ロンドンは交通・アクセスが勝り、文化・交流で圧倒的に強い。

 世界10都市の都心ランキングも行っています。指標は、活力、文化・交流、高級感、アメニティ、モビリティで、5匏のトップは香港で、2位東京、3位がパリ。10匏はいよいよ東京がトップで、2位がパリ。都心を見れば東京はすごいことが明らかになりました。

 東京の弱さと都心の強さの要因を見るとわかる典型的なものは空港です。利用できる空港はNYは3つ、ロンドンは5つ、東京は2つ。計算方法は各空港の発着の比重をかけて、時間距離で測ります。東京が変わるための大きなテーマは羽田の国際化です。

 では都市圏はどうなのか。「東京一極集中は悪い、是正しろ」とずっと言われていますが、本当にそうなのか。東京、ロンドン、パリを都市圏の対全国シェアのデータで見ると、人口、従業者、GDPともに東京は25%前後、ロンドン20%超、パリ20%前後でGDP比率は3割近い。即ち一極集中は21世紀において当たり前、産業構造が第三次産業にシフトしているため大都市のスケールメリットが働くからです。さらに、中央集権国家ではこうなる。ですから、一極集中是正に異論はないものの、世界の現実は違うと言っておく必要があります。

 オリンピックを行うと不景気になると言われますが、間違いです。確かに多くの開催国で景気が落ちました。しかし、例外もあった。アトランタとロンドンです。基盤が充実した先進国で開催し、あえて過剰な投資を行う必要がない都市では、開催後に経済力は上がる。今回の東京はこれに近い。前回のオリンピックでは当時のお金で一兆円、今のお金で30兆円近く使い、開催翌年、日本は大変な不況に陥った。今回の金額でほとんど影響が少なく、ロンドン型になるのではと期待されています。

 東京の人口はどうなるのか。国立社会保障・人口問題研究所のデータを見ると、2020年に東京圏の人口は減少しますが、これははずれており、おそらく2025年まで人口増加が続きます。1998年に東京都が出した2050年までの人口推計のうち最大が1250万人でしたが、現実は1360万人で100万人も違っています。

 1990年、ちょうどバブル経済の時に東京都が都市白書を作った時、私が昼夜間人口密度を世界の4大都市で比較しました。東京の都心3区は8.3人/1haで、夜間に50万人だとすると、昼は400万人いることになり、350万人のギャップがあった。当時NYは3.7人/1haで、ロンドン2.7人/1ha、パリ1.5人/1haです。東京だけ異常に昼間人口が高い。都心回帰が始まっているため、これが5年前に5.4人/1haに変わってきています。東京に人が来れば、住宅供給が行われますが、昼間の余剰のインフラを使うため、新たにインフラ投資の必要がない。都心居住はNY、ロンドンでも進んでいますが、こちらの最大の課題はインフラ投資でコストが上がってしまい、中流階級が住めないと言われていること。東京の都心3区はともかく、5区、8区は高くない。ですから、東京の人口は、これからさらに100万人は増えるかもしれないと思ったほうが当たります。

 64年の前回のオリンピックでは使ったお金の8割は基盤整備で、直接にオリンピック関連に使われたのは2割と言われています。東京では首都高速、ホテル、そして東海道新幹線も作りました。首都高速は71劼箸いΨ弉菽罐リンピックで32劼完成。一旦始めれば日本の政策は動くため、実行に移る大きなテーマだった訳です。たった5年で、玉川通り、都心部は青山通り、環状7号線の西側が作られました。この時環状7号線では初めて土地収用法が使われ、その後青山通りを中心に都心部が変わりました。

 今回は、大した基盤整備はありません。環状2号線、新虎通りから臨海部への道路がオリンピック道路になりますが、これは偶然です。新虎通りにはパリのシャンゼリゼ通りのようにし、世界トップの道にする目標があります。

 オリンピックがうまくいくかどうかは別として、2025年位までの都市の整備状況、そしてさらに、2030年ころからは日本が危なくなるかもしれない状況があるため、今後の展開を見ていく必要があります。今日の話は私が書いたものがいくつかありますので、ご興味があったら見ていただければと思います。