卓話


グローバルな人財とは?

3月31日の例会の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

コーン・フェリー・インターナショナル蝓‘本担当代表取締役社長
橘・フクシマ・咲江氏

エグゼクティブサーチの業界,ヘッドハンティングビジネスをご理解いただくのは,なかなか難しいのですが,私どもが提供しているサービスというのは,資産としての人材,財産としての「人財戦略」をお手伝いして,設定実施をするというものです。

企業側からサーチのお話をいただきますと,先ず,その企業のビジョンは何か,戦略は何か,戦略に沿った人財戦略について,かなり綿密にディスカッションさせていただきます。

もしかすると,その企業の中にいい方がいらっしゃるかもしれない。「隣の芝生現象」といいますが,よく知っている人のことは,なかなかよくみえないことがあります。

先ず,戦略にかなう人財がほんとうに中にいらっしゃらないことを確認します。時には私どものプログラムでアセスメントをさせていただくこともあります。外から採用するということになれば,私どもがサーチをいたします。

その際は,合意したポジション・スペックに基づいて,どういう要件の人をどこから探すか。そして,どういうチーム作りをするかということのコンサルティングをしながらサーチをいたします。今の人材市場の情況を一言で申しあげますと,クライアント(需要企業側)はグローバルなチェンジ・エイジェント(変革者的人材)を求めているのに対して,供給側(潜在的候補者)は,どちらかというと国内的,組織的,管理者的な方が多いのです。明らかに,需要と供給のミスマッチが生じています。

この5〜6年の大きな変化として,以前はクライアントのほとんどが外資系でしたが,最近は日本の一部上場企業や企業再生を必要としている日本企業,あるいは,オーナー系の経営者の二代目をお探しするといった需要が増えてまいりました。

求めておられる人材の要件はほとんど同じです。まず,グローバルで国境を越えて活躍できる人材であること。そして,組織に属さず汎用性の高いプロフェッショナル・スキルを持っていること。さらに,変革のための問題解決能力を持つ人材という3つの要件です。

人材の市場は,それぞれの企業の発展段階によって,必要とされている人材のスペックが違ってきます。

創業期には,起業家としてアイディアが豊富で実行力があって,組織を頼らず仕事をする人が必要になります。それが成長して100人くらいの規模になりますと,こんどは人事や財務のシステムが必要になります。そこで,管理の経験者が求められます。

会社が成長思考から管理思考になりますと組織も官僚的になり,変革者が必要になります。チェンジ・エイジェントの人は,企業をスリムダウンしたり分社化をしたりするわけですが,単位が小さくなると,また,そのユニットに起業家が必要になって,サイクルを繰り返すという傾向がみられます。そこで,安定期から低下期に入ってきた日本企業の多くは,同じような変革者としての人材を求めているのだと思います。

企業が求める,変革者としての要件はどういうものかを,私どもの作成するPosition Specificationにそってご説明します。

ここ5〜6年,企業が異口同音に求めている要件は,「専門的資質」の「職務能力」に関して言えば,先ず,組織人ではなく「起業家精神」のある人。コミュニケーションで,英語・日本語といっていたのが最近では,中国語・韓国語など多言語を話す人材なら尚欲しいという要件になってきています。

「危機管理能力」については,成功だけでなく失敗を経験した人が欲しいという企業がありました。「創造的,柔軟な問題解決能力」については,定形の中ではない,創造的な解決策が考えられる柔軟性が求められます。

ITの情報技術に関しては,今は必須ということになっています。

「職務経験」に関しては,今,私がご紹介する方のほとんどは,海外での仕事あるいは勉強の経験がある方々です。

「個人的資質」の「基礎的能力」では,「戦略的思考」,「論理的」,「頭脳明晰」,「理路整然」,「人間中心」,「言語力」などがありますが,その中ではっきりと要件として示されているのが「戦略的思考」です。

人事でも財務でも,単に人事をやる経理をやるというだけではなく,企業戦略に合うように資本としての人材の活用を,マネージメントのメンバーとして戦略的に考えられる人が求められています。

「個人的資質」については,判でついたように,「ダイナミック」,「エネルギッシュ」,「創造的」,「柔軟」,「前向き」,「リスクを取る」といった要件です。

最近は,弁護士が欲しいという企業が増えているのですが,日本の弁護士は,アメリカ100万人に対して2万人しかいません。そのうち,ビジネス弁護士は千人ぐらいしかいません。

引き抜くのはなかなか難しいのですが,LLM(海外の修士学取得者)の数が少しずつ増えております。そういう方を外資系の企業の弁護士事務所にお入れするというのは,今だに大変ですが,ここ2年ぐらいで,弁護士の考え方も変わられてきていると感じております。

企業再生期の経営者の選抜についてですが,需要と供給の間に起こるミスマッチがある場合こそ,人財戦略が必要です。我々が「創造的解決策」とよんでいるもののうち3つをご紹介します。 まず,企業の戦略実施に必要な人材の要件を明確にして,業界にいなければ他業界からも探してくるということ。次に多様な人材の活用です。日本には,有能な女性や帰国子女がいます。いろいろな大企業のトップのお手伝いをしてきた方,トップの視点から企業経営をみてきた経営コンサルタントの活用があります。3つめはチーム方式です。

これら3つについて簡単にご説明します。企業の戦略実施に必要な人材について他業界からの採用ということを申しましたが,例えば,ファッション/リーテルの業界についていえば,ブランドビジネスのポートフォリオ化がおきています。

昔でしたらイタリアのブランド,フランスのブランドといっていたものが,既にグローバルブランドになっています。そこでブランドは資産(イクイティ)という価値が出てきている。資産ですから戦略的なマネージメントが必要になります。昔はセールス中心だったものが,マーケティング,マーチャンダイジングが必要になります。昔は感性でやっていたビジネスが今は国境を越えた管理が必要な経営としてのビジネスになってきています。つまりプロフェッショナルが必要になってきています。残念ながら今まで必要でなかった為に,人材が育っていないマーケティングの領域は,消費財の古典的マーケティングの経験者をファッション/リーテルの業界に入れるというようなことが起こってきています。

多様な人材の活用の一例は女性です。昔でしたら,マーケティングや人事に女性が多かったのですが,最近は社長,財務といったところでも必ず女性の候補者を入れてくださいというリクエストがございます。MBAを取ったり金融やコンサルティングで活躍された女性も増えてきていますので,候補者も増えていると思います。21世紀戦略財団の調査でも女性の活用は企業の業績を向上させるという結果が出ています。

チーム方式ですが,一人の人が全部のスキルを持っているということは,殆どあり得ませんので,例えば,戦略に強い経営コンサルタントと数字に強いCFO(最高財務責任者)と業界に強い人を組み合わせたチームで仕事を進めるというのも,ひとつの解決策だと思います。 これからキャリアを築きたいという人にお話しをするのはプロフェッショナルになって欲しいということです。先ず,誰にも負けないという領域を作ること。そして社長の視点から経営を考えること,MBAについても持つことが偉いというのではなく,MBAのコンセプトを勉強することが大事なのです。MBAの概念はグローバルな共通言語だと思います。

また入社一年目の人でも,アシスタント業務の女性にも,自分が社長だったらどうするかということを考えていただきたいと話します。早くからシミュレーションをして,社長の立場になったら自分はどういう責任をとって,どういう方向性で物事を考えるか。リスクに対してもどう対応するかというトレーニングになります。できないと言う前にどうしたらいいかを考える。さらに,常に自分の市場価値を知っておくことが大事だと思います。

仕事は戦略が20%,実施が80%です。リーダーシップを持つ優秀な人が入れば会社が変わります。戦略的思考をもった変革者が求められています。そのためには,人財戦略の立案が急務だと思います。