卓話


ロータリークリアランドプロジェクト
カンボジアの現況 

5月12日(水)の例会の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

地区対人地雷除去活動に関する特別委員会 座長
 蠹豕衡機製造所
代表取締役会長 岡崎 由雄君

 地球上には,アンゴラ,イラン,イラク,アフガニスタン,カンボジアといった紛争地域が40〜50カ所もあり,世界の60カ国に数千万の地雷が埋められたといわれています。米国の国務省の発表によりますと,6千万から7千万と言っておりますが,その数は定かではありません。

特に埋設が多いのは,アンゴラ,イラク,アフガニスタン,カンボジアですが,アンゴラでは国土の2分の1が汚染されており,毎年6百人以上が被害に遭っているといわれています。いま問題になっているイラクでも1千万個近い地雷が埋められておりまして,相当の被害が出ていると聞いております。

 我々が支援しているカンボジアでは,1975年から20年間にわたって埋められた地雷は,4百万個とか6百万個とかの数字が記録されておりますけれども,実際に我々が支援しておりますヘイロトラスト(英国のNGO・地雷除去専門団体)のデータによりますと,せいぜい2百万個か3百万個ぐらいだろう,と言っております。 しかし,1998年には,カンボジアで,毎日5〜6人,年間2千人以上の地雷による死傷者が出ていたのが,2002年には一日平均2名程度,年間8百人にまで減っております。このことは,かなりの地雷除去が進んでいることの証しだと思います。 いずれにしても,地球上で年間2万人以上の被害者が出ており,単純計算でも一日に70人,20分に1人の割合で犠牲者が出ていると,赤十字の国際委員会が発表しております。

地雷は非常に殺傷力が強く,長期間地中に残留します。50年〜60年にわたって,その効力が残っているといわれています。1996年か97年ころの,半世紀以上前の第2次大戦中に埋められた地雷で死傷した人が9人あるいは10人出たという記録も残っております。

地雷は,大きく分けて,対戦車地雷と対人地雷の二つに分けられます。対人地雷には一度に大量の人を殺傷する地雷のほかに,空からばらまく蝶々型のものとか木の枝にぶら下げるものとか,いろいろな種類があります。また,地雷のパーツの90パーセント以上がプラスティック製というものもあります。そういうものは,地雷探知機,金属探知機にはなかなか反応しないので見つけにくいということです。現在の調査では,ソビエト製,中国製,ヴェトナム製,アメリカ製など,350〜360種類の地雷が確認されております。製造コストの安いものがたくさんありますので,非常に安易に使われてまいりました。

1997年の12月に,カナダのオタワで,対人地雷の全面禁止条約が発効しました。日本では,小渕内閣の時に,世界で45番目の批准国として,この条約を批准しまして,昨年の2月に,日本に残っていた最後の1個の地雷を小泉さんがボタンを押して爆発させました。これで日本国内には地雷が1個も残っていないということになっております。

対人地雷の全面禁止条約が発効された翌年の3月に,東京ロータリークラブの会員5名が参加された「人道目的の地雷除去支援」のNPOができました。通称JAHDSと呼んでおりますが,JAHDSの目的は,日本のハイテク技術を使った新型の地雷探知機を開発する。プラステイック製の地雷なども簡単に発見できる新しいタイプの地雷探知機を開発して,地雷除去作業の効率をあげていこうというものでした。また,地雷除去の後方支援をすることによって,地雷の被害者を減らそうという趣旨で発足したものでした。

ロータリーと地雷除去支援活動との係わり合いは,このNPOに東京ロータリークラブが,100万円の寄付をしたことから始まりました。ちょうど鈴木和夫会長の年度の時でした。
 このNPOが開発する新型の地雷探知機の実用化と普及を支援しようということでスタートした活動でございますけれども,これにはたいへんなお金と時間がかかります。

 当時の当地区のガバナー徳増さんが,この活動を地区の奉仕活動にしようということで,1999年7月の地区大会の時に,ガバナー直轄の「対人地雷除去に関する特別委員会」を設置いたしまして,地区内72クラブに活動の輪を広げて今日に至っております。

その時の目標として,なんとかこれを継続的に地区内に広げていって,今年の5月に関西で開催されますRIの国際大会で,日本のロータリーが発信する,世界社会奉仕活動にアピールしていこうということを,ひとつのターゲットとしているわけでございます。 最初は,日本の最新技術を使った新型地雷探知機の開発とその実用化に向かって動き始めたのですが,この活動を支援しようという形で多くのロータリアンにご寄贈もいただいてまいりましたので,ロータリーとしては,目に見える実績づくりをしていこう『一人でも多く,地雷の被害から救おう』ということを趣旨に,ロータリークリアランド造りというプロジェクトになってまいりました。

一方,JAHDSの方は,支援団体に大手企業が参加されて,資金と技術支援のみならず,技術者の出向などの応援もございましたので,ロータリーとしては,クリアランドプロジェクトをメインの活動にしてまいりました。 皆さまのご支援のお陰をもちまして,実際のプロジェクトは2000年から活動が始まっておりますが,その成果は着々とあがっておりまして,既に4カ所のクリアランドが完成しております。 2000年3月から手がけたロハール村は,アンコールワット北部60キロぐらいの所にあります。1978年から80年ごろ,特にポルボト派,政府軍,さらにベトナム軍まで入って来て,たいへんな激戦地でございました。ここが第1号ロータリークリアランドでございます。 2001年2月から,タシアム村。それから,第3号として,2002年3月から,ドンブックコプス村。だんだんとタイの国境の方に進んでまいりまして,2003年3月から着手した,カダップタマー村は2004年2月に完了しました。

 村人に引き渡されましたクリアランドは,再定住者が戻ってきて,家を造ったり農耕を始めたりしました。学校もできました。子どもたちの教育も再開されたということで,村と村の交流や道路の建設も進められ,国の社会復興が着実に進んできております。

RIの世界大会に,日本のロータリーとしてアピールしょうということもございましたので,2002年から対人地雷の除去支援活動に関する全国連絡協議会を作りまして,日本全国34の地区ガバナーにお声をかけましたところ,多くの地区から,この活動にご賛同をいただきまして,すでに,18地区ぐらいで,対人地雷の除去支援ならびに犠牲者に対するリハビリの応援やケア,車椅子の提供といった支援活動が始まっております。 2002年8月の地区大会の時に,ヘイロトラストの現地のオペレーションマネージャーであるレン サレン氏をカンボジアから招いて講演をしていただいたこともありまして,当地区内では,この活動に対する理解も深まってまいりましたし,募金活動も定着してきているというところでございます。

地雷ボックスと称する黄色い箱を地区内全クラブ72ヵ所をはじめ全国のいくつかのクラブの例会場の受付に置かせていただいて,募金を頂戴しております。この募金は,当地区内だけで500万円ぐらいは確実に集まっているというのが現状でございます。

ロータリーの奉仕活動の資金集めにはいろいろな方法がございますけれども,この活動に関しては,一切強制しないで,とにかくこの活動の趣旨をご理解いただいてご寄付をいただこうというのが当初の考えでございまして,地区大会,分区のIM,周年行事,チャリティーの催し事といったときに資金をいただくということで現在に至っております。

2000年3月から2004年2月までのクリアランドの実績は,除去面積63万平方メートル(約20万坪),12ヶ村,居住者210家族でございます。 2000年3月のクリアランド第1号着手から2004年2月に着手した第5号のカダップタマー村のクリアランドの完成までの経費は7千万円ぐらいかかっております。 第1号のロハール村周辺の除去では,作業用具や機材の購入費がありましたので4千万円を要しましたが,第2号以下は毎年1千万円づつの支援をしてクリアランドを広げているということでございます。

水や電気は言うに及ばず,医療施設もなく原始的な生活をしている人たちが多いわけでして,せめて地雷の被害から救ってあげようというのがこの活動の趣旨でございます。クリアランドができますと,そこには世界社会奉仕あるいは国際奉仕の活動として,井戸を掘るとか学校を造るとか医療施設を造るとかのプロジェクトが安心して入っていけます。

よく,『1年間で地雷をどのくらい除去できるのですか』とご質問がありますが,除去する地雷の数ではなく,そこに何人の人が住めるようになったか,何人の人が地雷の被害から救われるのかということを主眼にして,候補地を選んでおります。この活動は,2004年〜05年度も続けなければならないと思っております。地雷の100パーセント除去は不可能ですけれども,地雷の被害者をゼロにすることはじゅうぶん可能なことであると思っておりますので,今後とも,皆さまのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。