卓話


ガバナー公式訪問

2012年7月25日(水)の例会の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

国際ロータリー第2580地区
ガバナー 石川正一氏
(那覇西RC)

東京RCは2580地区を代表するロータリークラブです。1920年10月に創立された東京RCは,第2次世界大戦直前の1940年に,解散を決議するという不幸な時期がありましたが,1949年には157名の会員を擁する新しい東京RCが創立されました。その年の7月には,ロータリー財団奨学制度に応じて奨学生募集を開始し,1952年にはアジアの大学生,大学院生を中心にした米山奨学金募金計画を決定されました。

 ロータリー米山記念奨学会となった現在では,年間800名の学生に対し14億円という多額の予算を費やし,累計で1万6千名の奨学生を援助してこられた偉大な実績があるとうかがっております。諸先輩の業績に対して心から敬意を表するところでございます。

 思うに,カンボジアのシュムリアップでの東京クリアランドの対人地雷除去作業の取り組みをはじめ,いろいろな事業を取り次いでおられますが,東京RCが率先して実践する事業は全て成功しています。

 私ごときが東京RCに対して申し上げることは何もないのですが,ガバナーという役目をいただくと,改めてRCについて勉強したり考えたりする機会が多くなり,私なりに感じたことをお話しいたします。

 私はガバナーの責務は四つあると思います。一つは,勿論,ロータリーの組織の充実強化と会員の増強です。これは当然のことです。2番目には,その地区におけるロータリーの役員として各クラブへ公式訪問をしてクラブの現況を見届けること。3番目は,ガバナー月信を発行してロータリーの魅力を伝え,クラブ会長を激励し,楽しい例会になるように情報を提供することです。4番目には,ロータリーは世界的な奉仕活動をしているわけですから,ロータリー財団への寄付を促すことだと思います。

 寄付の基準は,毎年一人当たり100ドルが目安です。世界のロータリアンは120万人ですから1億2千万ドルの事業となります。
 この事業の目的は,「ポリオ・プラス」にプラスして次の6つの重点事業です。
(1)平和と紛争の予防/紛争解決
(2)疾病予防と治療
(3)水と衛生設備
(4)母子の健康
(5)基本的教育と識字率の向上
(6)経済と地域社会の発展向上

 年間に120億円の奉仕事業を行う国際ロータリーが,107年もの間,強固な組織を維持しています。その偉大な力を支える為に年間100ドルを支援することは,ロータリアンとしての誇りを実感するところだと思います。

 国際ロータリーについては「もう一度,原点に戻って考えて見る必要があるのではないか」という意見をよくうかがいます。

 国際ロータリーは,1905年にポール・ハリス氏と数人の友人たちによって,シカゴ市に誕生しました。現在では200以上の国と地域で,120万人のロータリアンが3万4千以上のクラブを作っています。

 日本のRCに目を向けてみますと,現在は34地区に2,292のクラブがあります。2012年3月末現在での会員数は88,734人です。しかし,1995年3月末では,クラブ数は2,151,会員数は127,785人でした。

 以上の数字から,直近の17年間でクラブ数は141クラブ増えたが,会員は39,051人減ったことになります。平均すると1年当たり2,297人ずつ減っています。

 言い換えれば,会員数2,297人を有する地区が毎年1地区ずつ減少し,それが17年間も続いたことになります。この現状を見れば,会員の増強は緊急の課題であると考えるところです。

 会員増強において重要なことは,時代の変革に直面している現在,100年の歴史を顧みながら,「ロータリーとは何か」「今,ロータリーの真の価値とは何か」を各クラブで真剣に論議して,共通認識を得る必要があると思います。

 ポール・ハリスはバーモント州のウォーリングフォードという静かな田舎村で育ちました。都会砂漠の広いシカゴの町には心から付き合える友人がなく,お互いに仕事を越えた友人が欲しいという願いで始めたのがロータリークラブでした。ロータリーの必要性は相互扶助と親睦でした。

 1933年のボストンの世界大会で,ポール・ハリスは「ロータリアンは何故,ロータリーの集まりをこんなに楽しく過ごしておれるのか」という質問に対して,「ロータリーでは会員が形式主義を脱ぎ捨てて,自然な態度に戻って,楽しい集まりを持てるからだ」と答えたそうです。

 これは,肩書を脱ぎ捨てて,本来の人間として,ニックネームで呼んだり,ファーストネームで呼び合ったりする楽しさがロータリーの本質なのだと思うところです。

 ロータリアンであることのメリットについて考えてみたいと思います。

 先程お話しした1人100ドルの寄付を達成している国は,アメリカ,カナダ,韓国,そして日本の4カ国だけです。寄付という行為にこだわり過ぎているかもしれません。
 2005-06年度の第2700地区ガバナー廣畑富雄氏は「ロータリーの本質はESSで表現できる。Enjoy,Study,Serviceである」と述べておられます。

 職場を代表する会員同士が集まっているのだから,お互いの信頼感を取り戻して楽しくやろうというのが,Enjoyの考え方です。

 Studyは,互いに意見を交換して,職業倫理を学び自己研鑽につなげようという思いです。Serviceは,思いやりの心であるとか,人の役に立ちたい心,自利・利他や,「多く奉仕するものは多く報われる」という言葉に通じるものだと思います。

 私は,これからのRCは若い人に目を向ける必要があると思っています。
 産業心理学でよく使われるマズローの欲求5段階説は欲求を次のように分けています。
(1)食欲や睡眠欲などの生理的欲求
(2)住む,着るための安全を求める欲求
(3)親和の欲求,グループ所属の欲求
(4)自尊の欲求,認知欲求
(5)自己実現の欲求,創造的欲求

 1〜2は,人間らしい生き方をする欲望の充足だと思います。3〜4は,互いの自己研鑽の目標に対する動きです。これは「自分らしい生き方」と言えると思います。

 先般,RIがロータリーの中核的価値を示しました。最初に「奉仕」,2番目には「親睦」,三番目は「高潔性」です。そして,続いて,寛容の精神を持った「多様性」を言い,最後に「ロータリーはリーダーシップを持って行動しよう」と言っています。そのうえに何が目標かというと,結局は組織には互いの信頼関係が必要だと言っています。
 それらがマズローとどういう関係があるかというと,私は,ロータリーの目的はやはり「人的ネットワーク」を作ることだと思います。奉仕も親睦も結構ですが,若い人たちや先輩方が一緒になって同じテーブルを囲んで語り合えるというのは,そこに教育的な結び付きができると思います。

 ロータリーは「人的ネットワーク」を必要とするのか,しないのか。これでロータリーの価値がまず一つ決まると思います。

 人的ネットワークを作るには,自分と二人三脚で生きられる,自分のことを心配してくれるような生涯付き合える友達を見つけることが必要ですが,簡単ではありません。
 ロータリーで一緒にテーブルを囲む人たちは,高いレベルの人間性を備えている人たちです。生涯の友となる人に出会う確率は相当に高いと思います。そういう意味でも,若い人たちを誘ってみたいと思っております。

 本田宗一郎氏は『夢を力に(私の履歴書)』の中で,「自分は本を読むのがあまり好きではない。何故なら500ページの本を読んでも,為になるのは1ページしかない」と書いておられます。松下幸之助さんも似たようなことを話しておられました。「私は学歴もないから人の話を聞いて耳から学問をしている」と言っておられるのは有名な話です。いずれにしても,お互いが交流をすることは非常にすばらしいことだと思います。

 2011-12年のRI会長カルヤン・バネルジー氏は,ガバナーエレクトの研修会で「トーマス・エジソンが『天才は1%の閃きと99%の努力だ』と言った」という話をなさいました。それも真実だと思いますが,アインシュタインは「成功者をAとすると,A=X+Y+Zという方程式が成り立つ。Xは仕事だ。Yは遊びだ。そして,Zは口を閉ざすことだ」と言っています。

 私は,エジソンの言葉よりアインシュタインの言葉に共感を覚えます。
 ロータリーの例会は,社会的にも認められた人格者が集まって会話をする場ですから,何げない会話の中ではっとするような言葉を頂戴したり,いろいろなアイディアの源泉になることもあると思います。

 今年度から「新世代奉仕」というテーマが奉仕の柱に加わりました。その中の青少年交換プログラムでは,高校生を対象に150名くらいを日本に受け入れる計画です。併せて日本からは20カ国ぐらいに派遣します。

 全く言葉が分からない国に行って,高校生らしい順応性と情熱で,不便を乗り越えて立派に成長して帰ってくるプログラムです。これもロータリーの偉業と言う以外にないと思います。

 米山奨学事業も大きな功績を残しています。しかし,RI常設プログラムであるインターアクト,ローターアクトについては決して好調とは言えません。
 ローターアクトは32クラブが提唱し,25クラブが解散し,インターアクトも26クラブが提唱し,15クラブが解散しています。

 日本の次代を担う若い人たちに目を向けて,国際競争力のなかで国際人として,よその国に負けない強い日本人を作るためにも,お力を貸していただく必要があるのではないかと考えているところです。

 東京RCが今後もリーダーシップを発揮して,楽しいクラブ運営を進め,かつ,ますます発展することを祈念しております。