卓話


イニシエイションスピーチ

2006年12月13日(水)の例会の卓話です。

津野正則君、小倉一春君 

資産運用あれこれ

GPMパートナーズ
代表取締役 津野正則君


 日本国民の一人ひとりが自らのCFO(最高財務責任者)にならなければならないと言われています。理由の一つに年金問題があります。自らのCFOとして、少子高齢社会を生き抜くために、年金も含めて自らの資産の運営・管理を行う必要があります。個人のB/S(バランス・シート)の管理が重要となります。

 欧米では、人生のリスク管理の為には、三人のアドバイザーが必要と言われることがあります。第一に、健康アドバイザーとして心理カウンセラーを含めたお医者様です。次に法律アドバイザーとしての弁護士の先生方です。三番目のアドバイザーはお金のアドバイザーです。お金のアドバイザーとしては、税金の専門家である税理士や会計士の先生方がおられますが、資産運用の専門家である投資アドバイザーもおります。日本では、社会インフラとしての投資アドバイザーの機能が欠落しています。

 投資の世界では、予測が重要になりますが、予測は当たりません。毎年、年初に、著名なエコノミストやストラテジストの年末の相場予測が新聞等に掲載されますが、ほとんど外れています。予測困難さは、ファンド・マネジャーにも当てはまります。相場予測が3年ぐらい的確であると神様のように扱われますが、10年以上神様だったファンド・マネジャーを見たことがありません。神様のように見えるファンド・マネジャーでも、その勝率は10戦して6勝4敗か、せいぜい7勝3敗です。

 資産運用には心理ゲームの要素があります。人生の目標、人生設計がある程度明確でないと、直近の出来事に引きずられた意思決定をしてしまいます。証券価格が上昇している時には、さらに上昇するのではないかと思い、証券価格が下落している時には、さらに下落するのではないかと思ってしまいます。同じことは、プロの機関投資家や専門家にも当てはまります。80年代後半のバブル経済の頃、実際の日経平均が3万円を超えるようになると、日経平均5−6万円という予測がなされ、最後には、10万円という予測も出現しました。逆に、日経平均が8000円を割った2003年には、2000円になると予測した専門家もいました。

 長期的な価値のあるものへ、安いときに投資することで、長期的にリターンを上げることを目指す投資家がおり、その代表選手がバフェットさんです。バフェットさんと同じ長期投資のアプローチを取ったとしても、バフェットさんと同じ強運を持たない投資家には、リスク管理の為に分散投資が必要になります。例えば、数年間で100万円を100億円にすることは、分散投資では無理ですが、超長期投資であれば、分散投資で可能です。100万円を仮に毎年10%の利回りで100年間運用できたとすると100万円は100年後に約138億円になります。

 資産運用は長期投資と分散投資が基本です。最近は、90歳、100歳とご長命の方も多くなり、中高年といえども、かなり長い投資期間を考える必要があります。

 これからの日本人には、投資家、資本家としての資産運用が必要になってきます。資産運用には感謝される運用と感謝されない運用があります。感謝されない運用は、どちらかというと短期投資であり、短期間に大きな運用収益を狙うものです。一方で、感謝される運用はどちらかというと長期投資です。他の人々が投資したがらない時から、長期的に投資すると、投資対象のプロジェクトや企業およびその恩恵を受ける人々から大いに感謝されます。しかも長期的に大きな運用収益を狙えます。日本人が目指す資産運用は長期投資でWIN-WINの関係を構築できることに焦点を当てるべきです。日本人のビジネスは長期ビジネスです。日本人が長期ビジネスと長期資産運用の両方で成功することは、美しい国つくりの基本です。

苦悩する出版界 それでも文化の磨き手だ

螢瓮促ルフレンド社
代表取締役会長 小倉一春君
        
 私が出版業界に身をおいたのは昭和35年(1960年)ですから、46年になります。それまでは、国家公務員として短い期間ではありましたが、経済官庁のスタッフとしての修行をしておりました。丁度、そんな折、郷里の先輩が創業した出版社が倒産し、再建のため引っ張り出されたというのが関わりの初めであります。私が、出版に携わるにあたり、脳裏をはなれなかったことはこの創業者の志を引き継ぐことでありました。

 本日は、出版界全体のことについて述べさせていただきたいと思います。関連して申し上げますと、出版業界は書店業界と、それ等のパイプ役である取次業界と大いに関係がありますので、これ等三業界のことを出版関連業界といっていますが、その辺のことについても触れさせていただきます。

―佝粘慙業界の事業所(会社数)
・出版社 約4,400社
 一部大手の総合出版社を除き中小企業ともいえない零細企業ばかりであります。
・取次会社 大手8社、その他約40社
・書店 約6,700社(この数年で半減)

⊇佝粘慙業界の規模とその苦悩
 各種の統計がありますが、三業界の純売上は、定価で2兆2千億円(平成17年度)といわれておりますから出版界だけで約1兆5千億円位ということになります。つまり7千億円が流通と販売を担っている取次業界と小売業界の粗利益ということです。

 この他、返品分が直接のコストとして、約5千億円分ありますが、それは出版業界が負担しております。

 出版物や新聞は、全国どこでも統一した定価によって販売し再販ができる再販維持制度によって発展してきた歴史があります。従って返品については、メーカーである出版社の責任として出版業界が処理してまいりました。再販が利くからいいじゃないかと思われるでしょうが、一部の学術書はともかく、一般書・実務書は、時間の経過や流通過程における商品の損傷等があって、商品価値は極めて零に近い不良在庫であります。このように考えますと、出版業界の純売上は1兆円そこそこの零細産業であって、明治以来苦悩してきたのです。

0貶、小売書店側の苦悩としてあげられるのは活字ばなれ、万引き、加えて氾濫する新刊書籍(年間7万3千点)を捌ききれない現状があります。

せ斡罰Δ蓮△茲れあしかれ取次会社を中心にして動いているのも事実です。単なる流通のみならず出版物の量的調整・金融の役割をもっているからです。戦後、出版産業の中核的な担い手として、わが国文化の向上に尽力されていることは強調しておきたいと思います。

 私は先に申しましたように、倒産した出版社にまいり、しかも出版人として素人でしたが、業界の伝統は守りつつも慣習に捕らわれないというのが経営の方針でした。予算統制制度の導入、人事管理、マーケットの的確把握に重点をおいてまいりました。三番目のマーケットの把握とは、つまり編集企画です。出版の生命であり原動力です。ところがマーケットの現状は、情報通信の発達により、出版、新聞、テレビはその影響を受けています。パソコン、インターネット、最近に至っては携帯電話からも一方通行とはいえ情報が得られます。マーケットに相手にされなくなった出版・新聞といっても過言ではありません。
 
 著作権の侵害をどうするかという問題の他、新たな教育上の諸問題がおきてまいりました。廉くて便利だというだけでは時局主義に振り廻される安上がりの人間が増えていくばかりです。成熟した社会を創っていくため歴史の先人たちが幾世紀に旦って作り上げた文化を更に磨いていくことに出版人は誇りをもっているのです。

 人間生活をしていく上で、基本となるものは、健康であること、教養を高めること、感性を豊かにすることが、幸せにつながるものだと思っています。

 私が関わっている出版は、健康の分野、専門職業人に対する啓発、情報提供の仕事であります。

 昭和35年にスタートした世界に冠たる医療保険制度も今や崩壊したも同然です。今日の医療現場は医療人犠牲の上になりたっていると言っても過言ではありません。

 限られた資源で、サービスの質をおとさないため、医療人が中心になって、行政を巻き込んだ国民運動をしていくことが社会的使命だと信じています。