卓話


人生100年時代を迎えて、Enjoy Aging

2020年12月9日(水)

螢ぅ哀▲
エグゼクティブアドバイザー 石黒和義君


 「人生100年時代を迎えて、Enjoy Aging」というテーマで、この5年間にわたり「生涯現役株式会社」で活動したことについて話します。「Enjoy Aging」、そのためには、このコロナ禍の環境のなかで、お互いに無事に過ごすことが前提になることは言うまでもありません。

 東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)が主催するジェロントロジーの高齢社会検定試験があります。ジェロントロジーは、政治・経済・社会・テクノロジー・街づくりまで、あらゆる領域の知を結集する学際的な学問です。例えば、「老化の原因と進行は、DNAの端であるテロメアが分裂のたびに短くなって寿命を迎え、DNA修復酵素による修復のスピードが追いつかないといった体内の変化のこと」とあります。脱毛・老眼は年とともにおこる生理的老化、脱水・認知症などは病的老化です。では、白内障・前立腺肥大はどうでしょうか。白内障は病的老化で、前立腺肥大は生理的老化です。このような検定試験を受け、高齢社会エキスパートになりました。

 加齢に伴う自立度の変化をあらわした、IOGの秋山教授のレポートがあります。全国の住民台帳から無作為に抽出した6000人を対象に20年以上にわたって追跡調査したレポートで、縦軸に日常生活の自立度、横軸に年齢をとると、男性は3つのパターンにわけられる。2割ぐらいの方が70歳になる前に、健康をそこねて若死にか重度の介護状態、1割の方が85歳をすぎても自立度を維持し、大往生を迎える。いわゆるPPKです。7割の大多数は、70歳を過ぎてから徐々に自立度をおとす。女性は、2つのパターンで、若死にする方が1割で、9割の方が70代に入ると、骨や筋肉の衰えから、ゆっくりと自立度が低下する。このチャートには、色々なメッセージが含まれています。一つは、メタボ対応によって若死にを減らすこと、もう一つは、加齢に伴う心身機能の低下・虚弱のことをフレイルといいますが、フレイル予防につとめて、自立度の低下のスピードを緩めることです。これらを踏まえて、生涯現役株式会社は、フレイル予防による健康寿命の延伸に焦点をあてて活動しました。

 未来社会創造コンソーシアムを設けて、60社あまりの企業の参加を得て、20回にわたってセミナー・ワークショップを開催しました。個人向けには、働き・学び・遊びなどの観点から、フレイル予防、とりわけソシアルフレイル予防に焦点をあてた各種プログラムを提供しました。ソシアルディスタンスが求められる昨今では、こうした活動も見直しが必要ですが、記憶力の強化、書道教室、グルメから、OSKの観劇まで。社会との繋がりが、心身の活性化をもたらし、運動と食事が進むといったプラスのスパイラルを廻そうというわけです。

 活動成果の一つは、ジェロントロジーの小冊子の上梓とDVD化をおこない、企業向けの教育コースを作ったこと。もう一つは、「Enjoy Aging Award」を設けて、生涯現役のロールモデルになる方を顕彰したことです。第1回は美容研究家の小林照子さん、第2回はベンチャーの母と呼ばれる今野由梨さんで、お二人には、元気が出る講演をおこなっていただきました。

 こうした活動を通して、学んだことは、人生100年時代を迎えて、高齢社会の諸課題は、自分ごととして取り組むことが求められているということです。現役世代が減り、2.06人で高齢者を支えているのが現実です。国や社会の革新的な取組みも必須ですが、それだけでこの難局を乗り切ることは難しい。一人ひとりが健康リテラシーを高め健康寿命を延ばし、支えられる側から支える側に廻ることです。それには「Enjoy Aging」、ソシアルフレイル予防に努めながら、ロータリー活動もその一つだと思いますが、企業や国を超えた若い人たちとの交流などに積極的に参加することではないでしょうか。


無意識バイアスの外に存在する、イノベーションの素

2020年12月9日(水)

蠅錣燭靴里教室
代表取締役社長 中屋昌太君


 日本国内だけでなく、世界中で政治や経済、市場のあり方、規制緩和による異業種からの参入、消費者ニーズの変容など複雑な要因が絡み合うことで、経済環境は劇的に変化しております。このように変化し続ける経済環境において、企業が生き抜いていくためには、不断のイノベーション創出が不可欠であるということは、産業界の共通認識にもなっております。

 さて、いくつかあるイノベーションモデルの中でも有名なのが、破壊的イノベーションです。破壊的イノベーションとは、既存事業のルールを破壊して、業界構造を劇的に変化させるイノベーションモデルのことであります。この破壊的イノベーションは同じ業界内で起こるだけでなく、今まで関わりが少なかった業界から突然発生し、既存市場の秩序を混乱させ、既存顧客を奪い取る特徴もあります。

 一方、対極にあるイノベーションが、持続的イノベーションです。この持続的イノベーションは、クリステンセン教授の論文「イノベーションのジレンマ」にて、破壊的イノベーションを説明する上での、対義語として登場しました。大企業や優良企業が得意とするイノベーションであり、高い付加価値をつけることで他社製品・サービスと差別化を可能とします。日本の製造業やメーカーが得意とする分野で、戦後の日本の高度経済成長を支えたイノベーションでもあります。しかしこの論文では、持続的イノベーションが得意な企業には、規模が大きいほど陥りやすいジレンマが存在しており、かつ、破壊的イノベーションを実現したベンチャー企業にシェアを丸ごと明け渡すことになりかねない脅威に常に晒されている、と指摘しています。

 それではどうすれば日本の企業でも破壊的イノベーションを起こせるのか、ということですが、私がイノベーション研究の大学院である慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科でそのやり方を研究してわかった一つの解決策があります。それは自分が持っているバイアスや先入観をまず壊し、そしてそのバイアスの外側を考えるということです。誰もが無意識にこのバイアスや先入観を持っておりますが、特に専門家はその傾向が強くなります。

 こういった認知のバイアスの外側を考えることを「Thinking outside the box」という言い方で表現します。日本語に訳しますと、既存の考えに囚われずに考える、もしくはもう少し抽象度をあげて表現しますと、イノベーティブに考えるということになります。 それではどうするとイノベーティブにThinking outside the boxできるかということなのですが、私は論理思考と非論理思考の組み合わせが非常に重要であると考えます。

 まず論理思考とは、日本人が大好きな、分解とか分析とか論理的に突き詰めていく思考のことで、「ロジックツリー」などは典型的な要素分解型思考です。日本の企業はマネージャーから現場の人含め、みんなそういう思考が大好きで、結果として品質や効率をどんどん改善していった訳です。しかし、この要素分解型の掘り下げ型思考というのは、機能的な完成度レベルを向上するにはすごく有効なのですが、破壊的イノベーションを生むための新しいコンセプトとか、大きなストーリーを構想するには、残念ながらまったく向きません。

 一方、非論理思考とはどういうものかというと、直感や主観を大切にする思考のことです。デザイン思考やアート思考、クリエイティブ・シンキングなどがあります。他の人と違ったアイディアやコンセプトを導くためには、他の人と同じ結果になりやすい論理性や客観性ではなく、直感や主観を活用しようというこの考え方は、世界的なブームにもなりました。

 破壊的イノベーションを実現するためには、自分たちのバイアスを壊してバイアスの外側で考えること、そのためには論理でガチガチなものもダメですが、完全に直感でもダメで、論理思考と非論理思考をうまく組み合わせることが大事ということが今回の結論でございます。