卓話


教育識字月間例会
次世代を担うこども達に我々は何ができるか

2018年9月5日(水)

KCJ GROUP(株)
代表取締役社長 住谷栄之資氏


 私は前職のWDIという会社で、35年ほどホテルやレストランなどホスピタリティ事業をメインに、外食事業を主にアメリカからの輸入や国内で開発して展開する仕事を行い、60歳まで勤め上げました。Tony Roma、カプリチョーザ、Hard Rock café、Wolfgang's Steakhouseなどがあります。

 まず、激動化する社会ということで、世界の世相を紹介します。キーワードは、人口増加による資源不足、テロの脅威、米朝首脳会談、ESG投資・SDGs、GAFAの独占、サイバーテロの脅威。特に最近、ESG投資、SDGsについて、資本主義の世界にこうした考え方が必要ではないかと言われています。それから、GAFA、4つのグループの台頭が際だっています。

 日本国内に目を向けると、生産年齢人口、働き方改革、仮想通貨の行方、キャッシュレス社会、格差社会・貧困問題、景気低迷。中でも特に気になっているのが働き方改革です。人生に対してはいろいろな向き合い方がありますし、最近の論調で生涯現役で働くことを前提にすることに少し違和感を持っています。

 日本を取り巻く環境について、公開されているデータやグラフとともに紹介します。まず、出生数の推移。私が生まれたのは1943年で、同年におよそ230万人が生まれました。その5年後は270万人。そこから第二次ベビーブーム以降は減少傾向で、昨年は過去最少の94万6000人に落ちています。前年に比べて3万人も減っていますが、この話があまり世の中に出ないことが気がかりです。15歳から64歳の生産年齢人口の推移でも、ピークが1995年あたりで、それからずっと下がってきています。生涯未婚率の推移と将来推計では、やはり未婚率が男女ともに増えています。

 世界ランキングから見た日本について。30年前の平成元年、バブルがはじける少し前の企業の時価総額ランキングで世界上位20社のうち14社が日本企業でした。平成30年は残念ながら日本企業は1社も入っていません。現在、アップル社の時価総額は100兆円を超え、上位20社はアメリカ企業が中心です。30年前には上位20位に入っていなかった中国が、今年は入っています。

 次に大学ランキングです。イギリスの「タイムズ・ハイアー・エデュケーション」の世界大学ランキングでは、日本の大学は100位の中に入っているのは2校のみです。

 それから、人工知能関連では、東京大学が29位で、アメリカ、中国が先頭に立っています。コンピュータ科学部門の上位100位以内の国別大学数では、アメリカが30校、日本は3校です。

 海外に留学する人数の国別比較ではトップが中国。続いて、アメリカ、インド、韓国で、日本は残念ながら減っています。以前は8万2000人いましたが、2011年は5万7000人です。

 日本人の英語レベルは、経産省の資料によると、アジアの中でも低い英語力で、TOEFLのスコアで世界135位、アジア30カ国中27位とちょっと目を疑うようなレベルです。

 国連に対しては、日本はアメリカに次いで第2位の資金拠出国ですが、残念ながら職員数は790人です。応募者が少ないうえ、なかなか試験に合格しないと聞いています。もう少し増えたらいいなと思っています。

 ボーイスカウトの会員数については、20年前に比べ半減して8万人台に落ち込み、大学生と高校生を除くと6万2000人にまで減っています。私どもの会社ではキッザニアとシナジーがあると思っており、2017年より江東6団という団をサポートしています。

 日本の子供の運動能力の推移については、一例をあげるとソフトボール投げ、握力が低下し、50メートル走、反復横跳びは伸びています。以前は野球の人気があり、今サッカーが人気という、そんな影響もあるのかなと見ています。

 過去から未来へ、高度経済成長から現在、未来予測について。
 73年前に第二次世界大戦の終戦を迎えてから、日本は発展し、高度経済成長やバブル景気など1990年頃まで右肩あがりの傾向が続きました。ここ30年程は経済的に低迷しています。来年は新しい天皇陛下の即位、2020年の東京オリンピック開催、2027年にリニア開通の予定です。2045年にはAIが人間の能力を超えるシンギュラリティという時代が来るとされています。そんな時代にあって、日本の若者がおかれた環境はどうなるのか考えてみました。

 進化する科学技術はよいのですが、それに身を任せていると本来持っている人間力が退化するおそれがあるのではと思います。それから、今の世の中には閉塞感が漂っているように感じます。年功序列、永年勤続があり、ここ15年ほどコンプライアンス、ガバナンスが言われ、なんとなく身体が縛られている感じがし、縦割り社会もなくならない。その他、これまでは「持つこと」が夢でしたが、今は現実的なシェアリングエコノミーという世の中になっています。

 職業・社会体験施設「キッザニア」についてお話しします。
 私は外食産業をリタイアした後、たまたまキッザニアに出会いました。メキシコが本部のため、孫を連れて見に行き、日本にぜひ導入したいと思いました。

 基本的なコンセプトは「エデュテインメント」。教育とエンターテインメントを組み合わせたものです。なかなか面白く、それが子供達の生きる力に繋がればさらにいいと思いました。社会の仕組み、働くことの意味、あるいは将来の職業観といったものを子供達がリアルに体験するものです。約100種類の職業を体験できます。働くと「キッゾ」という報酬を得られますし、買い物をしたり、ちょっと遊んだりする場所もあり、キッゾが流通する仕組みです。ただ、日本の子供達は実社会と同じで、働いて得た報酬をやはり銀行に預金する、あるいは家に持って帰って貯め、なかなか使おうとしません。日本人の習性かと思いますが、これを変えていかなければ日本の景気もなかなか良くならないと思います。

 キッザニアは東京と甲子園の2ヶ所にあり、両方とも「ららぽーと」という商業施設に入っています。子供達はここで真剣に仕事に向き合い、集中力、ホスピタリティ、チャレンジ精神、創造力、チームワーク、自己管理、社会性、技術革新への対応、コミュニケーション、エコ精神などを身に付けます。東西あわせてスポンサーは85社ほどで、両方にスポンサードしていただいているのは37社です。

 2017年度の来場者は両施設合せて約154万5000人。学校からも課外授業でクラスや学年単位など、たくさんの児童・生徒さんたちに来ていただいています。キッザニアは世界19ヶ国24ヶ所に展開中です。

 パッション、クリティカルシンキング、クリエイティビティ、コミュニケーションの4つは、経団連や経済同友会に在籍する企業や団体、経営者が新卒の学生に求める能力だそうです。いずれもとても重要ですが、この4つの能力を学生時代にどのような形で学ぶことができるのか、気になっています。学問は重要ですが企業が求める能力とはちょっとギャップがあるかもしれません。新卒入社の3年後に、残念ながら3割の学生が辞めてしまうという統計があります。いかに大きなロスか。大きな課題だと思っています。

 私達の会社はキッザニアの運営の他に、ハイスクールインターンシップというプロジェクトを行っています。この夏、シンガポールにあるキッザニアに日本の高校生達が行き、1週間ほど、スタッフとして働きました。異文化の中で英語も使わなくてはならない。少しでも先程の4つの能力を付けるきっかけになってくれればと考えています。

 コスモポリタンキャンパスという中学生対象のプロジェクトでは、環境、人口、格差の問題などを学んでもらいます。

 地方創生事業として、地方にある産業、仕事を地元の子供達にキッザニアスタイルで体験してもらうお手伝いもしています。これまでに三重県、新潟県三条市、長崎県平戸市などで行いました。

 まとめとしてお伝えしたいこととしては、「次世代を担う子供達に道をあけよう。」 先程も言いましたように閉塞感があります。今、会社のトップは頑張っていますが、若い人からすると何となく頭がつかえているように見える。ちょっと天井を開けてあげ、「頑張れば自分たちの時代をつくっていけるんだ」という気持ち、ムードをつくっていけたらいいなと思います。そんなことを考えながらキッザニアの運営をしています。


    ※2018年9月5日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。