卓話


宇宙旅行時代の到来

2017年4月5日(水)

(株)SPACE TRAVEL
代表取締役社長 眈勝〜鏤


 

 私は1969年アポロ11号の月面着陸を見て人類ってすごいな、科学ってすごいなと子供心に感銘し、宇宙飛行士になりたいと大学4年生まで考えていました。しかし、日本で最初の宇宙飛行士の選考があった時、願書に裸眼視力1.0以上という条件があり、私の夢はそこで破れました。

 電通に入り15年位経ち、「宇宙でCMを撮れば夢が半分かなうんじゃないか」と思いつき、大塚製薬のポカリスエットのCMで実現することができました。その後、日清食品のカップヌードルのN0 BORDER「世界の平和を希望する」というテーマで再度、宇宙でCMを作りました。

 2年前に広告の世界を引退し、自分自身が宇宙に行こうと考え、宇宙旅行代理店を創業しました。

 NASAが宇宙から撮った地球の映像をご覧になることがあると思います。昼間もきれいですが、夜の地球は、いかに人類がこの星で繁栄しているかを見ていただけます。国際宇宙ステーション(ISS)は90分で地球を一周し、1日に15回の日の出と1日に15回のサンセットを見ることができます。宇宙から地球を見ることは素晴らしい体験です。

 宇宙は、高度100Km以上と定義されています。通常の飛行機は高度10卍度まで行き、空は青く見えます。100劼泙嚢圓と真っ暗になり、闇の中に青い地球が浮かんでいる景色が見えます。宇宙旅行の定義は、民間人を乗せて高度100勸幣紊1分でも到達して帰ってくるというものです。

 現在、3タイプあります。地球から高度100劼鬟リギリ超えて戻ってくるものをサブオービタル・フライトと呼びます。本格的な民間人宇宙飛行士になってISSに滞在して帰ってくるもの。そして、月旅行です。

 実は民間人で初めて宇宙に行ったのは日本人で、1990年TBSの秋山豊寛さんが「宇宙特派員」として、ロシアのソユーズロケットに乗って、ミール宇宙ステーションに派遣されました。TBSはスポンサーを集め20億円程を払いました。

 これにインスピレーションを受けたアメリカのスペースアドベンチャーズ社は、資産的にゆとりのある方が数十億円を払ってISSに行くことを発想しました。そして、ついに2001年、アメリカのデニス・チトーさんが初の宇宙旅行を実現しました。

 その後、宇宙旅行に行っている方が7人います。女性初のアニューシャ・アンサリさん、イラン出身でアメリカで大変成功された方す。他にもシルク・ド・ソレイユの創業者ガイ・ラリベルテさん等がいます。そして、一昨年、イギリスの歌手のサラ・ブライトマンさんが宇宙で初めてのコンサートをすると発表し訓練に入りました。実は、私はこのサラ・ブライトマンさんのバックアップクルーとして一緒にロシアの「星の街」で約9ヶ月間、訓練をしました。残念ながら彼女はお母様の具合が悪くなり断念されましたが、現在、私は8人目ないし9人目としてISSに行くことを狙ってプロジェクトを推進しているところです。しかし、この形の宇宙旅行は、時間も訓練も労力も健康状態も含めて大変です。

 今年あるいは来年は、宇宙旅行元年になると考えられています。日帰りのツアーが1500万円から3500万円と高級車並みの金額で宇宙に行けようになり、一気に一般化すると見られています。

 上空103劼泙嚢圓、無重力を5分間味わい、その後、2時間ぐらい地球を見ながら帰るのがサブオービタル宇宙旅行です。この実現には面白い歴史があります。きっかけになったのは、先程のアンサリさんが1996年に設けたThe Ansari X Prizeです。「民間企業が2週間の間に2回、100Km以上の高度に宇宙船を到達させることができたならば、最初の民間企業に約10億円をあげる」という賞です。しかも、アンサリさんが10億円払う訳ではありません。当時、民間宇宙旅行の実現など無理だと思われていました。保険会社に相談したところ、「実現される可能性は極めて低い」と算定され、ほとんど起きないであろう幸福なことがあった場合に支払われるリバース保険が成立。おそあく1億円程度の保険金で成功したら10億円を保険会社が支払う画期的なものでした。

 さらに米国のすごいところは、2年後の1998年にCommercial Space Launch Actという民間宇宙旅行事業の根拠法を制定したことです。米航空局がベンチャー企業に飛行機と同様の安全性を求めていたらいつになっても実現しないため、連邦政府は責任を負わないとし、宇宙旅行主催者と旅行者がリスクについて合意契約すれば宇宙旅行を実施してよい、商業用宇宙港も設置してよいという法律を制定したのです。

 そして、マイクロソフトの共同創業者のポール・アレンが出資し、伝説的ロケットデザイナーのバート・ルータンがスペースシップ1を作り、2004年にX Prizeが達成されました。英国のリチャード・ブランソンが買収しヴァージン・ギャラクティック社になり、そして2012年にスペースポート・アメリカができました。

 販売されている宇宙旅行は、まず、ヴァージン・ギャラクティックです。6人乗りのロケットによるツアーです。1人3500万円で、親機である程度の高度まで行き、子機が分離されて宇宙に行って帰ってくるスペースシャトルと似た仕組みです。

 2社目Xcorは1500万円です。こちらは2人乗りです。お客様1人にパイロット1人と、ジェット戦闘機と同様の構造です。離陸してマッハ1まで達するのに59秒、マッハ3まで3分、宇宙に到達するまでが8分です。副操縦士席に座るためパノラマで宇宙を見ることができ、景色ははるかにこちらのほうが良いでしょう。

 そして、ブルーオリジン社。こちらはアマゾンのジェフ・ベソスが私費を投じて開発中のロケットです。昔のロケットと違うのは、戻る時に垂直に着陸することです。海に落として使い捨てではなく、これを再利用することで安くなります。こちらのチケット、私はamazon.comでプライム会員だけに売るという可能性もあると思っています。

 ISSまで行くロケットは現在、ロシアのソユーズしかありません。アメリカ政府がスペースシャトルをあきらめて10年近く。NASAの宇宙飛行士を宇宙に送る手段がアメリカには一切ないため、アメリカの民間企業2社にロケット制作を発注しました。一社がイーロン・マスク率いるスペースXです。テスラの大成功を収めた後、わずかな期間で次世代宇宙船の受注に至りました。早ければ年末にも飛ぼうかとしています。

 もう一社はボーイングです。ちなみにソユーズで宇宙に行くと1人当たり約60億円をロシアから請求されます。JAXAもNASAもこの金額を払っていますが、スペースXとボーイングはその半額の30億円位になると言われています。ソユーズには3席しかありませんが、スペースXやボーイングには席がたくさんあり、つまり、この2社で宇宙旅行に行ける時代があと2年程でやって来るということです。

 実は気球で宇宙に行こうというプロジェクトも進んでいます。気球ですから、空気がないところまでは行けず、高度60劼泙任任后しかし、そこからの景色は実質的に宇宙ビューです。2時間かけて上り、2時間滞在し、地球の向こう側から上る日の出を見て帰る魅力的なもので、6人乗り、トイレもあり、おそらくワインも飲めます。値段が800万円とさらにお安く、リラックスした状態でご家族と行くことができるため、ポピュラーになると思っています。

 日本でもPDエアロスペースというサブオービタル宇宙旅行を目指すベンチャーがあり、先頃、HISとANAが出資を発表しました。

 そして、月旅行です。着陸こそしませんが、月を周回して戻る片道3日間のツアーです。ロシアがソユーズをベースにやろうとしているものと、スペースXの2つがあり、約100億円です。

 私は宇宙へ行くことは地球を見ることだと思っています。宇宙に行くと満天の星空も見えますが、圧倒的に美しいのは私達の青い星、地球です。宇宙へ行った方とたくさん話をしました。皆さん、「宇宙へ行って地球を見ると、この小さな青い星の中にみんな住んでいる。なぜ私達はこの地球の中で争いごとをしているんだろうという気持ちに自然になる」と言います。あるいは地球環境を守りたいという強い気持ちが芽生えてくるとも。政治家も含め、できるだけ多くの方が宇宙へ行くことは地球の環境を保つこと、平和を実現することに大きく寄与すると思っています。

 なぜ、そこまでして宇宙に行くのか。これも持論ですが、人間を含めて生物には生存困難なフロンティアに挑戦していくDNAがあるのではないかと思います。安定した環境の海から陸に上がった変わり者の生き物がその昔いました。そして今、陸上は生命で繁栄しています。空気もない宇宙に出て行くのは、やはり生き物の中に今まで住んでいなかった所に進出していきたいという強い本能があるのではないか。この本能で宇宙開発はますます進み、火星へ、さらに遠くの星へ進んでいくと思います。

 宇宙旅行はエンターテイメントとして、エクスペリエンスとして非常にエキサイティングで楽しいと思いますが、観光以上に大きな意味があると思いますので、より安全に手軽になることを祈っています。ぜひ一緒に宇宙に行きましょう。


    ※2017年4月5日(水)の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。