卓話


健康寿命の延伸に向けた取り組み

2018年5月16日(水)

(株)野村事務所
代表取締役社長 野村生次君


 最近「健康寿命」という言葉をよく耳にするので、ご存じの方も多いと思いますが、「健康で日常生活を支障なく送ることのできる期間」という意味で、平均寿命と比較して使われます。高齢化が進み、社会保障費の削減が急務となっている日本においては、国や自治体にとって、健康寿命の延伸は重要な課題です。企業にとっても、健康で元気に働く従業員が増えることで、生産性の向上などが期待できます。そして何より個人にとって、健康な状態を維持し、歳をとっても生活を楽しめるという事は、とても有意義なことだと思います。

 では、現在健康寿命の延伸に向けてどのような取り組みが行われているか、現状と課題についてお話しいたします。まず国としては、「健康寿命延伸」を重要な戦略課題として捉え、生活習慣病や老化問題の増加に対し、早期発見・予防を基本とするサービスが必要であるとしています。これを受け、製薬メーカー・医療機器メーカーにおいても、従来の治療目的の医薬品や医療機器の販売に加え、予防・モニタリングを含めたヘルスケアソリューションを提供する新しいビジネスモデルを構築する動きが出てきています。また、医療分野以外からも家電メーカー、ハウスメーカー、IT企業、そしてデバイスやアプリを作成するベンチャー企業など様々な分野からの参入が増えています。

 最近ではセンサー・AI・IoTの先端技術を駆使して身体データを計測するウェアラブル機器が、多く開発されています。Point of Care Testingというコンセプトで、糖尿病や脂質異常の危険レベルを簡易的に迅速に測定できるようなポータブル機器も開発されています。このように従来とは医療・健康を取り巻く環境が大きく変わってきています。病気を治療して健康を取り戻す医療行為に加え、身体能力の低下や病気を防ぐためにどのように健康管理を行うか、またそれぞれ個人別の健康状態に合わせてどのような指導、支援を行っていくかという目的で、様々な取り組みが行われるようになってきています。

 近年様々なヘルスケア機器やサービスが開発されてきていますが、実は最も重要なポイントは、自分自身が健康とどう向き合うかです。生活習慣病を予防するために、新しい技術を上手く利用し、強い覚悟を持って健康管理に取り組んでいただきたいと思います。

 このような動きの一方、課題も多く存在しています。ヘルスケア用新製品や新サービスが売り出されても、実際は他の先進諸国に比べ、日本では普及が思ったより進んでいないのが現状です。日本では質の高い医療が普及しており、また保険制度も充実しているため、予防に対して努力したり、対価を支払う意識が低い傾向があります。国やヘルスケア事業を行っている企業にとっても、どうやってこの行動変容を実現できるか、頭を悩ませています。また国ではヘルスケア機器やサービスに関わる基準作りや法制度を整備すべく検討を進めていますし、民間においても業界団体やコンソーシアムを設立し、ヘルスケアのインフラを構築する動きが加速しています。

 弊社では身体データを計測する各種センサーを、主に海外から輸入して国内及びアジアで販売しています。しかし、センサー単品で健康寿命を延ばせるわけではありません。せっかく優れたセンサーが開発されても、そのセンサーを適切にデバイス化する企業がいて、またその先にセンサーデバイスを適切に利用するサービスを設計する企業がいて、やっと実用化となります。つまり、健康寿命延伸に役立つ製品・サービスは、単一の企業だけでなく、複数の分野の組織が連携してやっと有効的なシステムとなりますので、弊社も様々な分野の方々とパートナーシップを組み、人のため社会のために役に立つ仕事を作ることで、職業奉仕を進めていきたいと考えております。