卓話


ロータリー創立101周年記念例会兼家族会(夜間)
スポーツから学んだこと

2006年2月22日(水)の例会の卓話をクラブ会報委員が纏めたものです。

日本サッカー協会 最高顧問 長沼健氏

第4090回例会

 スポーツをやる人で,自分が今日あるのは周りの人のお陰だと思わない人はいません。
そして,ある程度の領域に達した人は,今度は自分が恩返しをする番だと思います。

 トリノの500mスケーティングで,アメリカのチーク選手が見事に金メダルをとった時のコメントは「アメリカのオリンピック委員会がくれる1万ドルの賞金は全額アフリカの難民の為に捧げる。私個人についてくれているスポンサーにも同じ協力を要請する。そして,このオリンピックで私は引退する。」というものでした。凄いことを言いますね。

世界的に第一級のスポーツマンは,ドーネィションということを必ず考えます。日本も段々そういうふうになればいいなと思います。いわゆる、感謝の気持ちです。これが持てなくなったら終わりだと思います。

どんなスポーツをやっていても,そのスポーツを自分が心の底から愛しているかということが問われます。心の底から愛していたなら,スポーツはその人を絶対に裏切らない。しかし,いい加減な気持ちで取り組んでいるとスポーツにしっぺ返しを食らうぞということの例はたくさんあります。
 
スポーツを愛する気持ちをもつことを子どもたちや選手たちに話してやることが指導者のだいじな仕事です。日本のサッカーは基本的にはドイツのお世話になって育ってまいりました。私が今日あるのは,デットマール・クラマーという極めつけの優れた指導者に出会ったお陰です。

最初クラマーさんにお会いした時に、この人は哲学者じゃないかと思いました。日本に来て最初に「サッカーは少年を大人にする。サッカーはその大人に磨きをかけて第一級の紳士にしてくれるスポーツだ」と言い,「だから私はサッカーを愛している」と宣言したのには驚きました。

指導は本当に理にかなったもので,悪い意味での旧体育会系という香りは全くありませんでした。頭で理解させて,自分からやって見せて,選手にやらせて,少しよくなったら褒めて,少し怠慢をすると怒って…。トレーニングと試合は,とことん集中してやれ。選手たちは「コンセントレーション」という言葉を何百回聞いたかわかりません。

 「徹底的に集中した仕事の後のフリータイムは本当にリラックスする時間だ。サッカーのサの字も思い出さないという時間のもち方をするのが最高級である」という哲学です。1968年のメキシコオリンピックの日本はよく頑張りました。選手は試合が終わった時には脱水症状になってベッドに倒れて身震いしている状態でした。医者の手当を受けて落ち着いたところへクラマーさんがやってきました。事情を知ったクラマーさんは、居合わせた取材陣に向かって言いました。

「私は日本に来た当初,ヤマトダマシイに出会いたい、と申し上げたら皆さんはびっくりした顔をしたが,そのヤマトダマシイが今まさに皆さんの目の前にある。この選手たちがそうだ。」
私は、感動のあまり大声で泣き出しそうになりました。慌てて自分の部屋に戻ったのを今でも覚えています。

我々の学生時代の頃は,サッカーはマイナースポーツの代表だといわれました。1965年にやっと日本サッカーリーグがスタートしました。思い切ってワールドカップを日本で開こうと言い出す仲間がいましたが,スタジアムもないのに,そう簡単には運ぶわけがありません。

 当時,国際サッカー連盟のブラジル人の会長さんが、2002年はアジア地区でやりたいと言ってくれました。それなら日本でもやれると,その気になったのですが,1930年にウルグァイの第一回以来,プロサッカーのない国でワールドカップをやった記録はないということも分かりました。なんとかしてプロサッカーを作ろうと川口さんとも相談したり,スタジアムを建設してくれる自治体探しをしたりすることから始めました。国際サッカー連盟に聞くと,全席が個席であること、ベンチシートは認めない。観客席の60%以上を屋根が覆っていること。予選用のスタジアムは収容人数4万以上、決勝のスタジアムは収容人数6万以上のキヤパといわれて,そんなスタジアムができるかと心配しましたが,横浜7万、さいたま6万のものを造っていただいて,あとはそれぞれ4万以上のスタジアムを造っていただきました。

 2002年のワールドリーグでは,1試合あたりメディアに用意した席は2千席です。それもやりました。韓国にも感謝しなければいけませんが,本当にうまくいきました。マイナーからの脱却はできたかなと思います。

今年はドイツでワールドカップが開かれます。日本は6月12日オーストラリアとの第一戦です。ジーコ監督は精神的にも肉体的にも選手たちのコンディションを整えて試合に望んでくれると思いますので,第一戦を乗り越えて,よい結果を見たいものです。